335
本日二回目の更新です
触手階層でモグラがたっぷり怒られた後、俺達は再び走り出していた。
タマが飛び込んだらもうモンスターは瞬殺されている。
ほぼノンストップで同じ部屋を走り続けているだけだ。
「ナガマサさん、一旦休憩しよう!」
そんな時、またもやモグラが俺達を止めた。
そういえば、触手の階でしか止まってなかった。
そろそろ一度休憩を入れた方がいいかもしれない。
けど、今回は競争だ。
†紅の牙†やゴロウのパーティーに追い抜かれたりはしないだろうか。
「休んでて大丈夫なんですか?」
「メッセージを送って聞いてみたけど、一番早くて今三十を越えた辺りみたいだよ」
「なるほど、それなら安心ですね」
今俺達は七十二階に入ったばかりだ。
生徒達で三十を越えたところなら、一般プレイヤー達はまだまだ下の方に居る筈。
少しくらいはゆっくり出来そうだ。
「それじゃあちょっと安全の確保に行こうかな。ナガマサさん、一緒に行こう」
「はい、わかりました」
この階層には入ったばかりで、まだモンスターは倒していない。
初期配置は角の向こうだけど放っておけばこっちまで移動してくることもあるらしい。
タマに任せきりもあれだし、モグラに返事をして二人で角へ向かう。
そして曲がった先に見えたのは、肌色。
そして色とりどりの……女の人?
俺達に気付いた方からこっちへ押し寄せてくる。
「モグラさん、これは?」
「えーっと、ここは女性型モンスターのフロアだね。いやー、圧巻だなぁ」
サキュバス、ハーピィ、アラクネ、ドライアド、ラミア、フェアリー、マーメイド。
種類も沢山。
パッと見て百は越えてそうな数の女性型モンスターが迫ってくる様子は、はっきり言って怖い。
ステータスに自信が無ければ全速力で逃げてるところだ。
「どう? ナガマサさん的にどの子が一番いい?」
「襲い掛かって来ない人がいいです」
見た目は整った女性だとしても、皆モンスターだ。
今もすごい勢いでベシベシと攻撃してきてて、ダメージが無くてもなんか精神的なものが削れていく。
怖い。
「そっかー。受けると思ったんだけどな」
「好きな人はいると思いますよ」
残念そうなモグラ。
俺の好みではなかっただけで、こういうハーレムが好きな人もいるだろう。
ここまで登って来られるかは、愛が試されるな。
でもこれだけの数に群がられたら普通に死にそう。
モンスターを≪滅魔刃竜剣≫の一撃で全滅させて、安全確保完了。
ミルキー達のいる場所まで戻って、十分程休憩となった。
フルーツを齧りながら、のんびりと話す。
ボスも全く苦戦してないお陰で和やかな空気だ。
あと少しだし、頑張ろう。
「そろそろ十分ですね」
「ん、ありがとうミルキー。それじゃあ行きましょうか」
「おっけー。もうしばらくよろしくね、タマちゃん」
「おうー!」
「任せとけー!」
狩りの再開に向けて気合を入れ直す。
モグラはすっかり慣れたようで、余裕の表情でタマBに手を差し出している。
移動中にメッセージを送ったりしてたからな。
流石の順応性だ。
タマを先頭に、一足飛びで走り出す。
『ぐわああああああああああ!!』
大きなその身体が崩れ落ちた。
どこから出て来たのか、黒い炎に焼かれながら少しずつ消えていく。
休憩を終えてさくさくと登って来た俺達は、ついに百層目に突入した。
そしてボスを倒した。
やけにあっさりしてるが、出てきた瞬間タマが倒してしまったから仕方がない。
特殊なギミックがあったようだけど、それら纏めて全部一緒くたになぎ倒したようだ。
ウチのタマは最強だからな、仕方ない。
「ボスも瞬殺だったし、これは一着いけたんじゃないですか?」
「あれだけのスピードで駆け上がって来たんだからいけたと思うんだけど……お」
消えていくボスを横目で見ながら、期待を膨らませる。
モグラも同意してくれている。
これはいけたんじゃないか。
と思ったら、声が響いた。
『見事塔を制覇した勇者達よ、感謝します。報酬を受け取り、更なる高みを目指すのです』
ボスがいた場所の更に奥。
少し高くなっている位置に、宝箱が出現した。
大きく、豪華で、明らかに何かいいものが入ってそうだ。
同時に、メッセージウインドウも目の前に現れた。
そこには、≪無限の塔制覇者:一位≫という称号を得たと書かれている。
「モグラさん、やりましたね」
「うん、やったね。ナガマサさん達のお陰だよ」
「いつもお世話になってますから」
「そうですね。ナガマサさんもずっと恩返しがしたいって言ってましたから、お手伝いが出来て私も良かったです」
「やったー!」
「いっちばーん!」
モグラの要望通り、一番での制覇が成功した。
ふー。やっとはっきりとした形で恩が返せた気がする。
これまでは少し返したと思ったら、すぐにまた恩が増えてたりしたからな。
本当に良かった。
「それじゃあモグラさん、報酬を受け取ってください」
「うん、ありがとう」
モグラが宝箱へ向かう。
俺達も邪魔にならないよう付いて行く。
うん、近くで見ると余計に豪華に見える。
明らかにただの箱にはない迫力を感じる。
「それじゃあ開けるね」
宝箱の中には、綺麗なブレスレットが入っていた。
モグラはそれを摘まみ上げ――。
「ナガマサさん、これあげるよ」
「え?」
俺に差し出してきた。
何故?
「オレも詳しくは分からないんだけど、用があるのはこっちなんだ」
「こっちって……箱ですか?」
「そう。この箱だね」
モグラが抱えているのは、報酬が入っていた宝箱だ。
ブレスレットじゃなくて、入れ物の方に用がある?
どういうことだろうか。
「ふむふむ。……うっわー、なんか嫌な予感しかしないんだけど」
「モグラさん?」
「ああ、ごめんごめん。皆、これから何があっても驚かないでね」
「え、あー、はい」
よく分からないまま、とりあえず返事をした。
その言葉の意味を深く考えようとしたその時。
モグラのHPバーが砕け散った。




