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 気が付くと、室内に立っていた。

 石のような素材で出来ていて、周囲は薄暗い。

 幅は十メートルはありそうだ。

 真っすぐ続いていて、すぐに右に曲がっている。

 十メートルの四角を二つ並べた感じだろうか。


「さ、行こうか。曲がったところからモンスターが配置されてる筈だから、まずは様子見を――」

「タマ、GO!!」

「らじゃー!」


 俺の合図と共にタマが突っ込んで行く。

 一歩で奥の壁の手前に。二歩目で曲がって行ったらしく、視界から消えた。

 そして鳴り響く爆発音。

 すぐさまタマが帰って来た。


「終わった!」

「――様子見は必要なかったね」

「さあ、飛ばしていきましょう!」

「かっとべモジャマサ!」

「モジャー!」


 この調子でどんどん行こう。

 目指すは最速で頂上到達だ。

 瞬間移動を駆使する為に意識して、一歩を踏み出す――。


「ああっ、ちょっと待って!」

「瞬間移動するとモグラさんが追いつけないですよ!」

「そういえばそうだった。タマ、頼む」

「あいあい!」


 現れたタマBがモグラと手を繋ぐ。

 これで、瞬間移動での移動が可能だ。

 タマの強さが半分になると思ったが、問題は無かった。


 ≪滅魔双竜法≫は、スキルレベルが上がると使用時にステータスへのボーナスがある。

 二人になる場合はそのボーナスの倍率の方が1000倍される。

 つまり、タマは二人に分裂した方が強い。

 相変わらず理不尽過ぎる。


「ちょ、まっ、動き、が、急過ぎる――!」

「いやっほー!」

「飛ばすモジャー!」

「タマちゃん聞いてる!?」

「どんどん行くぞー!」

「ナガマサさんも、聞いてる!? ちょっと!?」

「三人共聞こえてないですね」


 どんどん進んでみて分かったことがいくつかある。

 まず、各階層の形は同じ。

 マップとの形は、十メートル四方の四角を四つ、L字に繋げた形をしている。

 この短い棒の部分が俺達の出現位置で、曲がった場所からモンスターが配置されている。


 モンスターを全滅させると、一番奥にゲートが出現する。

 そこへ入ったら次の階へと飛ばされる。

 一方通行で、前の階に戻る手段は無いようだ。

 もし休憩するなら、全滅させた後で移動する前なら安全に休むことが出来る。


 ちなみに俺達は、ノンストップだ。

 モンスターは数十は平気で越えるくらい敷き詰まっている。

 作戦は簡単だ。

 そこにタマが先行して全て倒す。

 以上。


 それでしかない。

 MVPボスだろうと関係なく、全てが瞬殺されていく。

 お陰でどんなモンスターがいるかとか、全く把握していない。

 角を曲がった時には既に全滅しているからだ。


 初期配置のまま散らばったであろうドロップ品を≪強欲≫でまとめて拾うくらいしか、狩りっぽいことをしてない。

 後はひたすら走ってるだけだ。

 仕事があるだけ俺はまだマシかもしれない。

モグラなんかはタマBに振り回されてるだけだし、ミルキーなんて並走しながら苦笑いを浮かべているだけだ。

 

 だけどそれも仕方がない。

 モグラに最速攻略の栄光をプレゼントしないといけないからな。


「待ってちょっと待って!」


 何回、階層を移動しただろう。

 突然モグラが大きな声を挙げて、俺達を制止した。


「どうしたんですか?」

「お願いがあるんだけど、いいかな? ここはミルキーさんに先頭を行って欲しいんだ」

「俺はいいですけど……ミルキー、どう?」

「大丈夫ですよ。それじゃあ行きますね」


 モグラの意図は分からないが、お願いということなら俺はよっぽどのことでない限りは断るつもりはない。

 まだ四十も行ってないみたいだし、ミルキーの実力なら先頭くらい危険じゃない筈だ。

 ミルキーで危険なら俺達も危ないからな。


 ミルキーは相棒の大きな鏡をストレージから取り出して、宙に浮かべた。

 まるで巨大な丸ノコのようなギザギザしたそれは、ゆっくりと回転しながらミルキーの傍を漂っている。


 あれは、タマとガチンコしても勝てる可能性を持つ数少ない相棒だ。

 ダメージ反射は俺達の天敵だからな。

 味方で良かった。


 一応範囲攻撃等で味方を巻き込まないよう、ミルキーが先行する。

 俺達は角のすぐ手前で待機して、ミルキーだけがその先へ飛び出していく。


「キャアアアア!?」


 即座に聞こえてきたのは、ミルキーの悲鳴。

 思わず飛び出していた。


「ミルキー!?」

「ヌルヌルが、ヌルヌルが――!」

「……へ?」


 ミルキーは、無事だった。

 奥のエリアには凶悪なイソギンチャクみたいなモンスターがいっぱいいる。

 ミルキーの全身にはヌルヌルテカテカした触手が巻き付いていて、なんというか、とても目のやり場に困ることになっていた。


 ミルキーの装備は、薄手の≪星空のローブ≫。

 触手が巻き付くことでのダメージは無さそうだが、身体のラインがばっちりと出てしまっている。

 ミルキーもパニックになってしまっているらしく、振りほどけずにもがくだけだ。

 その動きが余計に触手を食い込ませてしまい、思わず目を逸らしてしまった。


「これは……思った以上にいいね」

「まさかモグラさん、こうなることを知ってて?」

「いやー、何のことだかさっぱりだよ。ははは」

「俺の眼を見て言ってもらえます?」

「はっはっは」


 どうやらこれはモグラの作戦通りだったらしい。

 確かにダメージは入ってないから危険もないかもしれないけど、ある意味危険だ。

 危険過ぎる。

 しかし、今はモグラを問い詰めている場合でもなさそうだ。


「これ、とれな……!」

「ミルキー、落ち着いて!」

「落ち着いてなんて、いられませんよ――!!」


 こうなったら仕方がない。


「タマ!」

「いえっさー!」


 ミルキー諸共タマの魔法で吹き飛ばした。

 魔法への耐性も100%で持っているから、ダメージは入らない。

 この階層の触手モンスター達はその一撃で全て消し飛んだ。

 残ったのは、モグラへ対する怒りだけだ。


「モグラさん、ちょっとこっちへ来てもらえますか?」

「あはははは、えーっと、ナガマサさん、助けてもらえない?」

「断固拒否します」

「ですよねー」


 モグラはこの後、滅茶苦茶怒られた。



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