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 ついに、イベント実装の当日がやって来た。

 前日である昨日には公式からも俺達に案内があったし、ゼノからも改めて詳細を聞いた。


 その内容はモグラから聞いたものと同じだった。

 あんなに速くから知ってたなんて、モグラは情報通だ。


 そのダンジョンへは港町イズハントから行けるようになるらしく、皆でやって来た。

 タマは海を見てテンションが急上昇している。


「海だー! ざばー!」

「ここに来るのも久しぶりですね」

「そういえばそうだなぁ。帰りに海鮮でも一杯買って帰ろうか」

「いいですね」


 全身ずぶ濡れになったタマが飛び出してきた。

 海に突っ込んできたらしい。


「ペッ! ペッ! しょっぱいモジャ!」

「海はしょっぱいものですよ」

「ちゅーん……」

「ほらほら、ジッとしててね」

 

 タマが謎の落ち込み方をしている。

 ミルキーはタオルを取り出してタマを拭いてやっていて、その光景は微笑ましい。


「けど、すごい人だね」

「そうですね。ここにいるの皆、イベントの為に集まったんでしょうか」


 今俺達がいるのは、イズハントの奥の方。海側に設置された船着き場だ。

 そこには既に大勢の人が詰めかけている。

 更には、俺達の後ろからも人が来ていて、どんどん増えそうだ。


「やっほー。来てくれて嬉しいよ」

「モグラさん。こんにちは」

「やっほーモグラ!」

「こんにちは」


 いつの間にかモグラが現れた。

 人ごみを割って来たらしい。方向的には前の方だったけど、何時から待ってたんだろう。


「すごい人ですね」

「一応早い者勝ちの要素もあるから、皆気合いが入ってるんだろうね」

「なるほど」


 塔の頂上へ行けば豪華な報酬が手に入る。

 しかしその中でも、特にレアないくつかのアイテムは先着順らしい。

 だから実装前のこの時間にも、こんなに沢山の人が待機してるというわけだ。


「ゴロウちゃんや紅くんも来てるよ。あと、他にも学校の生徒達が何人かいたかな」

「そうなんですね」

「生徒達にとって、普通のモンスターはもう楽勝だろうからね。こういう普通なら死んでもおかしくないダンジョンでも余裕でクリア出来るだろうね」


 ≪無限の塔≫は、百階もあるダンジョンだ。

 一階層ごとに大量のモンスターが設置してあって、全滅させれば次の階へ上ることが出来る。


 モンスターは上に行くほど強くなる。

 更に、五階毎にMVPボスモンスターが設置されているらしい。

 会うのが面倒なボスが固定で湧くのは強いプレイヤーからすればボーナスみたいなものだ。


 しかし、倒せる実力がないと確実に死ぬ。

 一般プレイヤーならセーブ位置に死に戻りして、少しのデスペナルティを食らうだけで済む。

 だけど俺達βNPCは違う。


 死んだら、本当に死んでしまう。

 そんな状態では、≪無限の塔≫には挑めないだろう。


 そもそも、このダンジョンの造りからして死ぬ前提だ。

 チートみたいな強さがない限りは、行けるところまで進んで、行き詰ったところで全滅して帰る。

 そういうダンジョンだとモグラが教えてくれた。


 だけど生徒達は違う。

 俺のスキルと学校の合わせ技で、かなり強くなった。

 今更MVPボスくらいなら、怖くはない筈だ。


「それで、モグラさんが欲しい報酬っていうのは」

「勿論、一番手でもらえるやつだよ」

「そんな気はしてました」


 報酬は、早い者順で十パーティーまでは何がもらえるか決まっている。

 それ以下は、リストの中からランダムとなっている。


 確か一位の報酬は、≪英知の腕輪≫。

 装備している間、本来覚えることの出来ないスキルを一つ習得するアイテムだ。

 一つしか選べない上に変更は出来ないが、それでも便利なことには変わらない。

 納得の報酬だ。


「というわけで期待してるよ。皆に負けないように一番に頂上に上るんだ」

「分かりました。楽しもうと思ってましたけど、そういうことなら全力で行きます」

「全力、ですか?」


 他でもないモグラの頼みだ。

 今までの恩を全部返すつもりで、全速前進で挑みたい。


 そんな気持ちを込めて返すと、それまで聞いていたミルキーが聞き返してきた。

 何か心配なことでもあるんだろうか。


「うん、全力で行くよ。モグラさんのお願いだからね」

「ちょっと不安ですけど……分かりました。確かに、モグラさんにはいつもお世話になってますからね。頑張りましょう」


 やっぱり何か不安があったらしい。

 でも、両手を握りしめて同意してくれた。

 ミルキーもやる気十分だ。


「うん、頑張ろう。タマも、頼んだぞ」

「まかせとけー!」

「はは、本当にありがとうね」


 タマが拳を突き上げて返事をしてくれる。

 そんな様子を見て、モグラは笑う。


 楽しみにしてた部分もあったけど、確実に一番手を取る為には仕方がない。

 本気の本気で頂上を目指す。

 そうでもしないと、†紅の牙†やゴロウ達生徒組に負ける可能性があるからな。


 そうして待つこと十五分。

 ついに実装の時間になった。


 どうやら別MAPに移動するらしく、先頭の方からどんどん人が消えていく。

 パーティーリーダーさえ専用のNPCに話しかければいいそうだから、モグラに任せてある。

 少し待っていると、風景が歪み出した。

 

 次の瞬間には目の前が真っ暗になり、そしてまたぼやけた光が目に映る。

 数秒もしない内に、段々とはっきりしてきた。

 目の前には、高い塔が建っていた。


 さっきまでいた大勢のプレイヤー達の姿はない。

 ここからもうインスタントマップ、俺達専用のマップになっているようだ。


「これが無限の塔か」

「それじゃあ皆、この看板を調べて。そしたら中へ入れるから」


 塔の入り口の前には、看板がある。

 モグラの言う通りに意識を集中させると、また視界が切り替わる。

 さあ、塔の駆けあがり競争のスタートだ。



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