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 押し寄せてきた一般プレイヤー達を、二つの軍団が迎え討った。

 ピンポン玉率いる宝石フルーツ細マッチョ達と、ダイヤモンドクイーンである石華率いる宝石の騎士達だ。


 一般プレイヤー達はかなり多い。

 モニター越しでは数えるのを諦めるレベルだ。

 とにかく多い。

 ゼノからの情報では、参加希望者は早い段階で千人を越えていたらしい。

 もしかしたら二千までいってるかもしれないな。


 しかし、こっちも負けてはいない。

 フルーツ達も騎士達も、増えるペースは衰えていない。

 一対一だと一般プレイヤーのほとんどよりも強いようで、戦力的にも勝っている。


 しかも、こっちは倒されてもすぐに代わりが投入されている形だが、一般プレイヤー側はそうはいかない。


「うわぁ!! 嫌だ、やめてくれー!」

「……何をしてるんですか?」

「え、いや、今引きずって行かれた人に声を充ててみたんだけどおかしかった?」


 ミルキーの呆れたような問いかけに、素直に答える。

 もしかして、映像と台詞が合ってなかっただろうか。


 モニターには、一人の一般プレイヤーが細マッチョに抱えられて連れ去られる様子が映っていた。

 あれはHPを1にされた上で、状態異常までかけられて身動きをとれなくされている。

 そんな様子が、校庭のあちこちで繰り広げられていた。


「いえ、台詞はピッタリだったと思いますよ。そんな感じの顔でした」

「でしょ?」

「はい。こうして見ると、酷い光景ですね」

「まぁ、仕方ないよ」

「この世は弱肉強食……!」

「焼肉定食ー!」


 戦場で倒れたプレイヤーは、宝石の騎士やフルーツ細マッチョの手によって、校舎内へと運ばれる。

 そこでどうなるかと言うと、待機しているβNPC達の餌となる。

 ノルマの消化にもなるし、経験値にもなる。

 学校の敷地内だからレベルはモリモリ上がるし、俺のスキルポイントもモリモリ増える。

 良い事尽くしだ。


「そうそう。戦わないと生き残れないからね」

「一般プレイヤーに皆さんは戦っても生き残れそうにないですけどね」

「ピンポン玉と石華は強いなぁ」


 二人の活躍に、ついつい笑顔が浮かんでしまう。

 一般プレイヤーには悪いけど、あっちは死ぬわけじゃないし構わないだろう。


「それにしても、すごいですね」

「ん? 石華たちの強さ?」

「それもすごいとは思いますよ。でもそうじゃなくって、手加減術です」

「ああ、本当にね。俺もまさかここまで役に立つと思ってなかったよ」


 モニターの向こうで、宝石の騎士の一閃が一人のプレイヤーを捉える。

 まともに入ったその鋭い斬撃は、明らかに致命的なダメージを叩きだす。

 しかし、プレイヤーは死んではいない。

 HPが1だけ残されている。


 すかさず現れた黒い宝石の騎士が剣を突き刺すと、麻痺のエフェクトが全身を包む。

 そのままプレイヤーは、校舎へと運び込まれていった。


 普通は、こんなに上手く瀕死でとどめることは出来ない。

 確実にHPを1で止める手段があるからこそ、親鳥の如くβNPC達に(一般プレイヤー)を運ぶことが可能になる。


「それもこれも、タマのお陰だな」

「えっへん!」

「よーしよしよし、えらいぞー!」

「ふひゃほほほー!」


 俺はイベント開始後に、いくつものスキルを取得した。

 この学校と≪学校長≫のスキルの組み合わせでスキルポイントが大量に入ったから、少しでも便利そうだと思ったものは片っ端から取得した結果だ。


 その中の一つに、≪ナガマサ流師範≫というものがあった。

 効果は、≪ナガマサ流≫と付いたスキルを他人に伝授出来る、というものだった。


 正直俺は、このスキルをそこまで重要視していなかった。

 理由は単純で、俺が持っているスキルで≪ナガマサ流≫とついているのは≪ナガマサ流手加減術≫と≪ナガマサ流防御術≫の二つしかないから。

 どちらも便利ではあるが、それは≪五体解放≫や≪我らが道を行く≫があってこそだ。

 単体ではそこまで強くはない。


 しかも、ユニークスキルだからタマやミルキーとは既に共有されている。

 防御力が上がって損は無いから、防御術の方を皆に取得してもらったくらいで役目は終わりだと思っていた。


 しかし、いつの間にかタマが、≪ナガマサ流手加減術≫を石華やピンポン玉に伝授していた。

 しかもそれは取り巻き、つまり召喚した配下も同時に習得したらしく、このえげつない地獄絵図みたいな狩りの光景が出来上がった。


 俺達としてはとても助かるが、彼らからしたらトラウマものだと思う。

 特に、フルーツ達に連れ去られるのは恐怖しかない。

 何故か宝石化したお陰で、まるで油を塗りたくったみたいな光沢が加わって更に強化されたからな。

 細マッチョからマッチョに寄ったのは、進化の影響なんだろうか……。

 

 ちなみに、俺達も含めて皆NPC判定を受けているらしく、拉致される時に力づくで振りほどくことは出来ない。

 抵抗するなら、明確に攻撃を加えて怯ませるしかない。

 俺がパシオンやシエルに手を引っぱられても引き剥がせなかったのと同じだな。


 じゃあなんで態々状態異常にしているかというと、万が一にもβNPC達が襲われないようにする為だ。

 一応そこにはタマの分身が何人も控えているから大丈夫だとは思うが、念の為だ。


 いやー、それにしても、中々いい激戦っぷりだ。

 分身タマ達やおろし金の参戦を止めたのは、なるべくいい勝負を演出する為だったりする。

 一方的に蹂躙するのも一瞬は楽しいかもしれないけど、俺達だけだし、すぐに飽きてしまう。


 彼らはゲームをしているんだから、少しくらいは合わせてあげてもいい筈だ。

 フルーツや宝石の騎士を倒せばドロップも手に入るし、ある程度拮抗した方が楽しいのは間違いない。


 ゲーム感覚で襲いに来られるのは少しは腹が立つ気もするが、彼らも運営にいいように使われているだけだ。

 敵を増やす必要も無い。

 この趣味の悪いイベントが終われば、彼らもまた同じ世界に生きる隣人になるんだから。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 魔境の本領発揮 [一言] あー、これヤバい。 一般プレイヤー視点で言えば、みんなのトラウマ案件入り確定じゃないですか。
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