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 午後からは、この学校での初めての授業が始まった。

 教科は対モンスター戦闘。担当は出汁巻玉子だ。


「あーっと、まずは改めて、簡単に挨拶からするっすね。モンスター戦闘担当の出汁巻玉子っす」


 出汁巻玉子がゆるい感じで挨拶をする。

 教員の紹介は一度してるんだけど、律儀だなぁ。


「この中で、モンスターと戦闘したことのない人はどのくらいいるんすか? 戦ったことない、って人は手を挙げてみて下さい」


 出汁巻の問いかけに対して、恐る恐るといった感じで手が上がる。

 結構多い。半分くらいか?

 モグラが連れて来たプレイヤーのほとんどが、危険の少ない街の中で細々と暮らしていたらしい。

 確か、シュシュもそんな感じだった筈だ。

 

 しかし、シュシュは手を上げていない。

 ゼノと一緒に狩りとかをしたんだろうか。

 あまり外には連れ出さないようにしてるって聞いてたから、ちょっと意外だった。


「ん、じゃあ手を下ろして大丈夫す。見た感じ、半分以上モンスターと戦ったことが無いようなんで、かなり初歩的なことからやってきます」


 出汁巻玉子の授業は分かりやすかった。

 まず最初に、アクティブとノンアクティブの説明から始まった。


 アクティブは、プレイヤーを見かけたら向こうから襲ってくるようなやつ。

 ノンアクティブは、こっちから攻撃しない限りは襲ってこないやつ。

 俺でも分かる、常識だ。


 弱いモンスターは大体ノンアクティブで、強くても特殊なモンスターはノンアクティブだったりする。

 オオカナヘビなんかもノンアクティブだったな。


 注意しないといけないのが、元がノンアクティブでも、アクティブ状態になっていると他のプレイヤーに襲い掛かることもあるということだ。


 大体、ちょっかいを出したはいいけど勝てなくて逃げた時。

 そういう時に他のプレイヤーがモンスターの進路上にいると、ターゲットが移ることがある。

 これは、擦り付けと言ってマナー違反とされている。

 これを利用したPKをMPKと呼んだりする。


「ちょっと話が逸れたんすけど、次はリンクとルートについて説明します」


 リンクとは、戦闘中に周囲にいる同種のモンスターが襲い掛かってくるタイプのことだ。

 ノンアクティブの一部がこれに当てはまる。

 オオカナヘビもリンクタイプで、大量のオオカナヘビに襲われて死にかけたことがある。

 今や懐かしい思い出だ。


 そういう性質を持つから、リンクタイプのモンスターには注意しないといけない。

 瞬殺出来るレベルのモンスターならいいけど、手こずる相手が群がって来たら多分死ぬ。

 

「ルートタイプは、落ちてるアイテムを拾って食っちまう奴らっす。食われたアイテムは、時間が経つと痛んで行くんで大事なものなら即座に取り戻すことっすね」


 滞りなく授業は進む。

 五十分が経過して、最初の授業が終わった。

 ちなみに、チャイムなんかは無い。

 教師が設定したアラームが鳴った時が区切りだ。


「それじゃあ、一旦休憩に入るんで、十分後に席についといてください」


 出汁巻玉子がそう告げると同時に、教室で一斉に女神と花火が打ち上がった。

 びっくりした、なんだこれ。

 生徒の皆もざわついている。

 ほぼ全員同時で、しかもいくつかまとめて上がっているらしい。


「座学でも経験値が入るように、クエストっていう形にしてたんだよね。だけど、こんなに一気に上がる程経験値もらえたかな……?」


 ざわめきに耳を傾けていると、モグラが教えてくれた。

 ああそうか。

 そういえば、そういう話だった。


 俺達はβNPCとして扱われ始めてから、増えた機能がある。

 それは、クエストの作成だ。

 

 クエストを作る為にはまず、アイテムやお金なんかを報酬に設定する。

 すると内容に合わせた経験値がどこからかプラスされて、完成だ。


 アイテムを設定しなくても、経験値だけは追加される。

 今回は、そのシステムを利用した。


 そのまんま、≪授業を受ける≫というクエストだ。

 五十分拘束されるだけのクエストだから、もらえる経験値自体は多くない。

 というかかなり少ない。無いよりはマシ、程度だ。


 だけど、俺のユニークスキルの効果で、一万倍されている。

 ここにいる大半が、戦闘すらしたことない低レベルプレイヤーだ。

 レベルも一気に上がるだろう。


 それにしても、昨日取得した≪学校長≫の効果を説明してなかったっけ。

 モグラもミルキーも、出汁巻も困惑している。


「すみません、ちょっと来てもらっていいですか?」


 というわけで、皆を集めて隅に集まる。

 生徒の皆は突然爆発的に上がったレベルと、不自然に増えたポイントに夢中でこっちを気にした様子はない。

 さくっと説明しておく。


「なるほど、そんなとんでもないことになってたんですね」

「いつものことだけど、規格外過ぎるよね。オレも1レベル上がったし、スキルポイントもステータスポイントもえぐいことになってるよ」

「いやー、ホントやばいっすね」

「ナガマサはすごい……!」


 皆の反応はこんな感じだった。

 若干呆れ気味というか、何かを諦めたような雰囲気が伝わってくる。

 モグラも出汁巻玉子も、笑ってる筈なんだけどね。


「でもほら、これならすぐにでも強くなれるし、一般プレイヤーにも負けないと思うんですよ」

「あはは、まあ、それは間違いないね」

「そうっすね」


 二人に向かって考えを伝えると、さらに笑われてしまった。

 なんでだ。

 


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