36 進化する剣
「タマ、ちょっとお願いがあるんだけどいい?」
「どうしたモジャモジャー」
「今度武者クワガタと足軽クワガタが出てきたら俺だけで戦ってみてもいいか? 他は任せるから」
「おっけーモジャー」
タマにお願いをしてみた。
快くオッケーしてくれたけど正直不安だ。
この森に初めて来た時も見境なくぶっ倒してたからな。
でもまぁ最近は大人しいし多分大丈夫だろう。
「いた。他のが来たらさくっと倒しちゃってくれ」
「りょーかい!」
タマとおろし金を残して一人で前に出る。
どれだけモンスターが出てきてもタマとおろし金だけで足りるから気づいたら終わっちゃってるんだよな。
危険な目に遭わなくて済むにこしたことはないけど、どの程度戦えるかくらいは知っておきたい。
「ギチギチギチ」
こっちに気付いたようで武者クワガタが臨戦態勢に入る。
足軽クワガタ達は我先にと俺の方へ向かってくる。
「がんばれモジャマサー!」
「おらぁ!」
近寄ってくる足軽クワガタに剣を叩きつけていく。
アホみたいに高いステータスと武器修練の攻撃力上乗せのおかげで一撃で倒せるようだ。
試しに一匹蹴ってみたけど木に叩きつけられてそのまま死んだ。
素手でも十分戦えそうだな。
足軽クワガタを半分倒したところで武者クワガタがその刀の届く範囲まで迫って来ていた。
とりあえず雑魚を先に片づけるか。
武者クワガタの攻撃を左腕に固定した小盾と右手の剣でまともに受けないように逸らす。
合間合間で足元の足軽クワガタを斬りつけたり蹴っ飛ばして倒していく。
「よし、残りはお前だけだ」
「ギギギィ!」
足軽クワガタを全部片づけて、改めて武者クワガタに相対する。
取り巻きに戦わせて様子を見ていたようだ。
振り下ろす攻撃に敢えて一歩踏み出す。
俺が足で踏みしめるのは武者クワガタの背後にあった木。
そこから振り向く勢いを利用して剣を叩きつける!
「ギギィッ!」
「かった!」
こいつの背中滅茶苦茶堅い!
剣の強度がそんなにないせいか、ダメージはあまり入っていなかった。
正直素手で殴った方がダメージ入るんじゃないだろうな。
「無刀両断」
「っ!?」
振り返ろうとしている武者クワガタにスキルを放ってみたら、あっさり真っ二つになって崩れ落ちてしまった。
若干ピクピク動いてるけどHPはしっかり0だ。
相変わらず断面も綺麗だし切れないものはあるんだろうか。
「おつモジャー」
「おう、ありがとうな」
ドロップアイテムは武者クワガタの甲皮だった。
つやつやして、銀色に鈍く光っている。
これで鎧でも作ったら結構強そうだな。
この辺りの素材なら防具があっても誤差だろうし、しばらくは思い入れのあるこいつでいこうとも思うが。
そういえばタマに装備っているのかな。
強いから考えたこと無かったけど、人型だしあった方がいいのか?
「タマ、装備品とかっているか?」
「タマさいきょーだから別に無くてもいいけど、かっこかわいい服とかは着てみたい!」
「よし分かった。いい素材があったら頼んでみような」
「やったー!」
タマの今の服装はプレイヤーの初期装備とほぼ同じ格好だ。
かっこ良くて可愛いのがいいみたいだし、もっといい装備を着せてあげよう。
さて、今の感じからすると武者クワガタとは一人でも戦えるみたいだな。
途中寄って来てた他のモンスターはタマとおろし金が相手してくれていたから、そいつらも一緒だとまた変わるだろうけど。
それにしても、武器ももうちょっといいやつが欲しいな。
何かいい素材があるといいんだけど。
とりあえず一旦休憩しよう。
レベルも上がったことだしな。
「タマ、一旦休憩しよう」
「はーい。おろし金、見張りまかせた!」
「キュルッ」
腰を下ろすとタマも隣に座る。
おろし金は見張りをしてくれるみたいだ。
ありがたい。
っていうか強くなったなぁ。
タマのコインの効力が恐ろしい。
そうだ。
「タマ、コインを一枚出してもらってもいいか?」
「いいよー。んんー……はい!」
「ありがとう」
タマからコインを受け取る。
これを剣にセットすれば、しばらく使えるくらいには強くなるんじゃないか。
物は試しって言うしな。
コインを剣の根本の部分に押し当ててみる。
するりと押し込まれて、おろし金の時のように光に包まれた。
≪エボリュートソード☆≫
武器/片手剣 レア度:A 品質:E
Atk:203 Matk:182
コインの持つ魔力によって変質した剣。
際限なく強化と進化を遂げていくと恐れられる魔剣でもある。
産まれたばかりで品質が低いが、素材を合成していくほど品質が上がっていく。
スキル:≪捕食進化≫
なんかとんでもないものが出来上がった。
レア度Aとか初めて見たよ。
☆はコインがセットしてある印らしい。
見た目はショートソードより少し長くなったか。
若干ぼろく見えるけど、そういう仕様らしい。
予想外だったけど、良いものが手に入った。
これで武器は心配しなくても良さそうだ。
後はレベルアップの処理だな。
名前:ナガマサ
種族:人
Lv:13(1↑)
Str:20(+600)
Vit:18(+800)
Agi:30(+1100)
Dex:20(+502)
Int:24(+500)
Luc:16(14↑)(+200)
職業:挑戦者
職業Lv11(1↑)
スキル
サバイバルの心構え Lv6(1↑)
武器修練 Lv8(1↑)
武器適正・片手剣 Lv7(1↑)
リラックス Lv7
魔法適正 Lv3(2↑)
属性適正・無 Lv3(2↑)
フルスイング Lv1
目印 Lv1
応急手当 Lv7
武器修練・片手剣 Lv6(1↑)
無属性魔法・下級 Lv3(2↑)
スマッシュ Lv1
魔力の波動 Lv3(2↑)
敏捷強化 Lv8(1↑)
生命力強化 Lv7(1↑)
筋力強化 Lv4(2↑)
知力強化 Lv3(2↑)
器用強化 Lv3(2↑)
幸運強化 Lv1(New)
我が道を行く Lv10(MAX)
解放の左腕 Lv10(MAX)
解放の右腕 Lv8(1↑)
解放の左脚 Lv10(MAX)
解放の右脚 Lv1
成長促進 Lv1(MAX)
取得経験値増加 Lv10(MAX)
無刀両断 Lv6(1↑)
神脚疾駆 Lv3(1↑)
≪幸運強化≫を取得。
これで全ステータス揃った。
補正が最強すぎてやばい。
いやいや、いい気になって油断しないように気を付けよう。
ユニークスキルはポイントが2必要だから今回の取得は無し。
次回に期待だ。
≪速度増加≫を逐一かけていたお蔭か≪無属性魔法・下級≫のレベルも上がっている。
新しい魔法も追加されてるみたいだから後で試しておこう。
探索してるとレベルもがんがん上がるし楽しいな。
「やれー!」
「キュルル!」
足軽クワガタが食いちぎられたり、武者クワガタが串刺しになってたりするのをタマが応援してるのはなかなかあれな絵面だけど。
物騒すぎない?
大丈夫?