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※建物の効果を少し追加しました


 次の日。

 日課の畑仕事を終えた後は、ミゼルの作った朝ごはんを食べる。

 ここ最近はずっと、ミルキーと二人で作っていた。


 久しぶりに一人での作業になるが、かなり上達しているのがはっきりと分かる。

 以前に比べて間違いなくおいしい。


「美味しい。料理、上手になったね」

「あら本当ですか?」

「ほんとほんと。なあ、タマ」

「モグモグモグモグ、おいしい!」

「まあ、そう言っていただけると嬉しいですわ」


 俺の呼び掛けにタマが応える。

 口の中の料理を必死に呑み込んでからの元気一杯の宣言は、説得力しかない。

 葵や金剛も、同意するように頷いている。


「ふふ、皆様、ありがとうございます」


 それを見たミゼルは照れたような笑顔を浮かべる。

 はにかんでる姿は間違いなく可愛い。

 それを見てる俺も皆も、ますます笑顔になる。


 なんて良い循環なんだ。

 言うなれば、幸せスパイラル……! 


『そういえばご主人様、この後時間はあるかのう?』

「うん? どうした?」


 幸せを噛み締めていると、金剛が問いかけてきた。

 金剛からのお誘いなんて珍しいな。


『任されておった地下ダンジョンなんじゃが、ある程度形になったから確認して欲しくてのう』

「えっ、もう出来たの?」

『わらわの忠実な部下達が一晩でやってくれたのじゃ』


 ≪モジャモジャ大学校≫の地下には、室内戦闘の訓練用に地下ダンジョンを作ることにしていた。

 そこの担当者が、金剛だ。


 壁が地面むき出しの地下室だけ作っておいたのを、後は任せていた。

 それがほぼ完成したらしい。

 まだ一日も経ってないのに、すごい早さだ。

 

「分かった。皆の集合時間までまだ二時間くらいあるから、この後見に行こう」

『うむ、わらわが張り切って案内しようぞ』


 金剛は、ツルツルしてそうな胸を逸らして張り切っている。

 一体どんな風になっているんだろう。

 ちょっと楽しみだな。

 微妙に時間があったから装備品でも作ろうと思ってたが、丁度良かったかもしれない。


「タマも行くー!」

「私も行きたい……!」


 タマは予想してたけど、葵もか。

 自信満々な金剛を見てたら興味が沸いても仕方ないかな。

 ……そういえば、葵ってダンジョンとか行ったことあるんだろうか。


『ふむ、どうするかの?』


 金剛が俺の方を見た。

 これは、確認だな。

 とりあえず頷いて、俺は葵に質問してみることにした。


「葵って、ダンジョンは行ったことある?」 

「ない」

「そっか。それじゃあ一緒に行こう」

「やった……!」

「わーい! 一緒に行こー!」

『ふっふっふ、楽しみにしておれよ。わらわ達も気合いを入れて作ったからのう』


 そういえば葵は、ウチに来てからはずっと畑で修行してたっけ。

 樹に成った細マッチョ達と戦うだけで、ダンジョンには行ったことがなかったんだな。


 それなら、一緒に連れて行きたくなるのは当たり前のことだろう。

 ここで連れて行かないなんて、少なくとも俺には言えない。


「それじゃあバテないようにしっかり食べておくんだぞ」

「はーい!」

「うん……!」

「おかわり!」

「私も……!」

「はい、今用意いたしますね」


 そんなこんなで、和やかな朝食を終えた後は、学校へと向かうことになった。

 メンバーは俺、タマ、葵、金剛だ。

 少し珍しい構成だな。


 特に金剛は、大体村を周ってるか城に籠もってるかで、一緒に行動することはあまりなかった。

 そう考えると、今回の訓練用地下ダンジョンを任せたのは良かったのかもしれない。

 金剛自身の楽しそうな様子が近くで確認出来るからな。


 やって来たのは、学校の地下エリア。

 一階の事務所の隣にある小部屋に設置された梯子を下りた場所にある、地下室だ。

 四メートル四方くらいの部屋で、壁も地面も、固められた土で出来ている。


 掘ってそのまま固めた感じかな。

 梯子に背を向けた状態で立った時に、向かって正面の壁にだけぽっかりと穴が空いている。

 これがダンジョンの入り口か。

 

『さあ、ここが入口じゃ。ここから先は、そなたらが好きに歩くが良いぞ。後ろから解説してやるからのう』

「わーい!」

「楽しみ……!」


 金剛が前を歩くのはここまでのようだ。

 ダンジョン探索でガイドさんがいたら面白くなさそうだもんな。


 タマも葵も、やる気十分だ。

 俺は勿論、少し距離を空けて金剛と一緒に最後尾を歩くつもりだ。

 正直先頭に立って走り出したいが、ここは葵達に譲ろう。


 どんな仕掛けがあるか分からないから、咄嗟に対応出来るようにしておきたいし。

 金剛の作ったダンジョンなんだし危険は無いとは思うんだけど、一応ね。


『ああ、ちなみにこのダンジョンでは死ぬことはないから安心するが良い。体力が尽きれば、自動的に入口に弾き出されるようになっておる』

「そうなのか?」

『うむ。だから安心して楽しむが良いのじゃ』


 もしかして、俺が遠慮しようと思ったのがバレたんだろうか。

 そうだとしたらすごいな。他人の考えが読めるなんて。


「ありがとう」

『礼などいらぬよ。わらわの方こそ、返し切れないくらいの恩があるんじゃからな』

「そんな大層なことしてあげた覚えは無いけど……」

『わらわが勝手に感じておるだけじゃなから、気にせんで良いぞ』


 そうまで言われたらどうしようもない。

 これ以上言っても、それは相手を否定するだけの言葉でしかないからな。

 話題を変えるのに丁度いいし、気になったことでも聞いてみるか。


「死なないって、どうしてそんなこと分かったんだ?」

『領地をこちらへ移した際に、この地から直接聞いたのじゃよ』

「なるほど……」


 金剛は、所属を元々≪モジャの家≫の放牧エリアに設定していた。

 だけどダンジョンの作成を任せるにあたって、この地下エリアに設定し直した。

 その時にシステムから説明があったんだろう。


 ダンジョンエリアとして設定するとそんな効果が出るんだな。

 そういえば、ウチの畑もそれに近い仕様だったっけ。

 あそこはHPが0にはならず1までしか減らない。

 そうなると、細マッチョに叩きだされる。


 知らない間に同じような設定になってたのかもしれないな。

 畑というよりは、魔境って感じだし。


「モジャマサ、まだモジャー?」

「ああ、ごめんごめん。それじゃあ行こう!」

「おー!」

「おー……!」



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