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本日二回目の更新です!
このタイミングに合わせて来てもらった人がいる。
皆も知ってる人だけど、改めて紹介する為だ。
「紹介、ですか?」
「一体何が始まるのか、楽しみですわね」
「わくわく!」
「新しい奥さん……?」
『ほほう、流石ご主人様は甲斐性が違うのう』
葵がとんでもないことを言いだした。
それは絶対に違う。
金剛も悪乗りしないで欲しい。
あの悪戯っぽい笑顔は、絶対違うと分かってて言ってる。
「そういうのじゃないからね」
「分かってますよ」
「私は別に構わないのですが」
「ミゼル……!?」
ミゼルの言葉に、ミルキーが驚いている。
俺も同じような顔になってる気がする。
「ふふ、冗談ですわ」
「もう、びっくりしましたよ」
ホッと胸を撫で下ろすミルキー。
ミルキーは元々、色々な打算があって俺との付き合いや結婚を決めている筈だ。
俺の奥さんが増えれば、恩恵も減ってしまう。
多分そこが不安だったんだろう。
でも流石に、三人目は無理だと思う。
俺の精神が持たない。
って、人を待たせてるんだった。
「どうぞ!」
俺達が座っていたのは、食堂の奥側の席だ。
食堂には長方形のテーブルが八つあり、それぞれに椅子が四つずつ設置してある。
六人で休憩するだけだから、隣の椅子を二つ持って来て座っている。
更に奥に設置してあるカウンターの奥は、調理場となっている。
運営が始まれば、ここで料理を作って提供する予定だ。
そこから、一人の人物が姿を現した。
「こんにちは。ナガマサさん、この度はお声頂き、ありがとうございます」
皆に一礼した後、紅葉は俺にも頭を下げた。
そう。
まず皆の前に来てもらったのは、PK達から助けられた女性、紅葉だ。
「紅葉さんにはここで料理を担当してもらいます」
「どうぞよろしくお願いします」
紅葉が深々と頭を下げた。
いつも思うけど、紅葉は礼儀正しい。
こんなに綺麗にお辞儀なんて出来ないぞ。
「紹介って、そういうことですか。よろしくお願いします」
ミルキーを皮きりに、皆が挨拶を返す。
この学校で働いてもらうことに特に異論は無いようだ。
良かった。ちょっと不安だったからな。
勿論、事前にしっかり話をするべきかとも思った。
でも以前に、ミゼルとミルキーにやりたいようにやっても良いと言われた。
それは俺の事を信頼していると、そういうことだ。
なのに逐一相談するのは、彼女達の信頼に応えていないことになる……気がする。
だからよっぽどのことじゃなければ、決めてしまおうと思った。
でも割と緊張してしまうから、やっぱり今度からは実行する前には意見を聞こう。
あくまでもある程度決めた上で、ね。
そもそも、学校を作った理由の一つに、行き場のない人の為というのもある。
昭二さんに預かってもらってはいるけど、頼りっぱなしは良くない。
ここが新しい、紅葉の居場所になるといいんだけど。
「それで、ミゼルにも手伝って欲しいんだけど」
「わたくし、ですか?」
「うん。料理も上手だし、楽しんでたみたいだから。勿論、お給料は出すよ」
「――その役目、謹んでお受けします」
「ありがとう」
少し間があった気がしたけど、ミゼルは快諾してくれた。
働いてもらうんだから、お小遣いとは別に給料を渡す。
正直、言ってくれればなんでも買うんだけど、ミゼルはあまり物をねだらない。
欲しいものが無いだけなのかもしれないが、ミルキーや葵とお買い物に行ったりはしてるし、お小遣いも使っているようだ。
多分、遠慮というか、特別言うようなことじゃないと思ってるんだろう。
というわけで、これはお金を渡すチャンスでもあった。
必要なければそのまま貯めておけるし、あって困るものじゃない筈だ。
「ナガマサさん」
「うん?」
「私には何か、無いんですか?」
「何か、って?」
「その、仕事みたいなもの、です」
次の人を呼ぼうとして、ミルキーに呼び止められた。
ミゼルに食堂の料理を任せたのが羨ましかったんだろうか。
でも大丈夫だ。
ミルキーにも、お願いしようと思っていたことがある。
「ああ、ごめんごめん。また後でお願いしようと思ってたんだ」
「それならいいんですけど、どんな仕事ですか?」
「課外授業の引率、かな」
授業の一環として、ダンジョンへ行くことも考えている。
その時に、防御主体の職業を持つミルキーがついててくれると、すごく心強い。
俺も付いて行くつもりではあるけど、一人よりも二人の方が間違いなく安全だ。
ちなみに、タマには重要な仕事を頼むつもりだから、引率側の数には含まない。
「分かりました、任せてください」
その後も、紹介は続く。
学校といえば、講師だ。
マナーや知識担当に、モグラ。
対モンスター戦闘担当は出汁巻玉子。
対人戦闘技術担当として、葵に依頼した。
即答でオーケーしてくれて、とても有難い。
地下訓練用ダンジョンの管理人に金剛。
家の裏の放牧スペースから、こっちに登録を移した。
後は用務員として、マッスル☆タケダ。
アイテムの作成や修理を担当してくれる。
皆、事情を説明してお願いしたら快く協力してくれることになった。
お礼はきちんとする。
一日500K、つまり五十万cを支払う約束だ。
担当時間外は授業に参加してもらってもいいし、学校の設備も自由に使って良いことにしている。
金額に関してはもらい過ぎだと言われたが、押し切った。
これくらい俺が払いたいんだから、それでいいんだ。
それくらい、手伝ってもらえるのは有難い。
生徒が何人集まるかは分からないが、このメンバーなら運営していけるだろう。
そんなに日数も無いし、後は生徒を連れて来るだけだ。
顔合わせが終わった後は、各自勧誘することになった。
そんなに希望者がいるとは思えないが、人数には限りがある。
なるべく弱くて、プレイヤーに襲われたら危なそうな人を優先することで話は決まった。




