307
資材は集まった。
石材だけでも予定してた数の十万倍くらいは用意出来た。
しかも、資材の中でも最高レア度を誇る≪究極≫シリーズで、品質も高い。
これは文句のつけようもないくらい完璧だ。
木材と鉄材も、同じく究極で揃えてある。
まさかこんなに上手く行くとは思わなかった。
資材は用意出来たし、お金もある。
後は正式に依頼さえすれば、建築工事が始まる。
だけど、問題はここからだ。
まだ大事なことが決まっていない。
それを今から、話し合って決める必要がある。
「というわけで、学校の大体の間取りを決めたいと思う」
「はい!」
「はいタマ!」
タマが元気良く、真っ直ぐに手を上に伸ばして立ち上がった。
俺も負けじと、元気いっぱいに指名した。
特に意味は無い。
「名前はモジャモジャ大学校がいい!」
「保留!」
「残念!」
タマは、立ち上がった時と同じように元気いっぱいに着席した。
まるで逆再生でもしてるかのような同じ動きだ。
っていうか、今は名前の案を募集してるわけじゃないからな。
隙があればすぐにモジャを捻じ込もうとしてくるのは何故なんだ。
「最初に一つ聞いても良いですか?」
「うん、分からないことがあればなんでも聞いて」
「間取りを決めるということですが、どんな部屋を作るとかって決まってるんですか?」
「全然考えてなかった」
「なるほど」
言われてみるとそうだ。
皆のレベルを上げて強くする→学校を創ろう! ってなっただけで、深く考えての行動ではない。
だから校舎を建てようとは思ってたけど、どんな部屋を用意するかまでは全く気が付かなかった。
「そこに気付くなんて、流石ミルキー」
「割と普通のことだと思うんですけど……」
「すっかり抜けてた俺からしたら充分すごいよ。というわけで、まずはどんな部屋が必要か、ってところから話し合おうか」
校舎はただの箱じゃない。
皆を強くするための施設であり、学び舎だ。
当然目的にあった部屋を用意しないといけない。
そうなった時、校舎を建てるなんて初めてだからよく分からないけど、とりあえず適当に部屋をいくつか作って用途を割り当てるのは、多分良くない。
後から当てはめるとチグハグになりそうだからな。
そうなると、必要なものを考えてから、それに見合った部屋や校舎の間取りを考える。
ってわけだな。
流石ミルキー、賢い。
「給食室が欲しい!」
「給食室か。三階は寮にするなら、ご飯を作る場所は必要だな」
「やったー!」
「それなら、食べる場所も合わせて食堂にするというのはどうですか?」
「いいね、そうしよう」
ミルキーのフォローにより、食堂という形でタマの提案が採用となった。
まず食べ物に関連した場所が出るのが、タマの食欲をよく表してる。
どんどん食べてどんどん育って欲しい。
「私は訓練場……!」
『わらわは結晶が生やし放題の地下洞窟が欲しいのう』
葵と金剛の提案だ。
訓練場は、土地の三分の二を使って屋外に造る予定だ。
それだけじゃ足りないってことか?
「ダンジョンとかの狭い所での室内戦の訓練がしたいの……!」
「あー、なるほど」
「いつも思うのですが、葵ちゃんは努力家ですわね」
「本当にね」
室内訓練場も決定。
まだ雨は降ってないが天候も実装されたらしいし、あった方が良いだろう。
「金剛、地下洞窟って何に使うの?」
『わらわの別荘かのう』
「別荘かぁ」
今のお城以外にも住む場所が欲しいということなんだろうか。
それとも、以前住んでいた洞窟に近い環境が恋しくなったのかもしれない。
地下なんて考えてなかったし、作っても良いような気がする。
『わらわの眷属達も運動不足だからのう。特訓相手くらいにはなれると思うのじゃよ』
「ダンジョン風訓練場に出来そうですね」
『そうそう、そんな感じじゃ』
「うん、良さそうだね」
校舎の地下には洞窟があって、そこでは宝石の騎士達がうようよいる訳か。
それは楽しそうだ。
狩りの練習にもなるし。
「私からもよろしいですか?」
「思い付いたらどんどん言って大丈夫だよ」
「ありがとうございます。救護室と、書庫が必要だと思います」
「保健室と図書室ですね。確かにあった方が良さそうです」
救護室はポーションを保管したり、怪我人を手当てする場所だ。
何かあったらストレージから取り出してぶっかけるだろうけど、保管庫として使うのはありだ。
ベッドを置いて、少し休んだりも出来るようにしとけば便利そうだし。
図書室も……うん、作っちゃおう。
この世界にも本はあるし、買って置いておけば色々役に立つだろう。
やっぱり提案にも人柄が出るな。
救護室と書庫というのがなんともミゼルらしい。
優しさと好奇心の表れかな。
こんな感じで色々意見を出し合って、時には泣く泣く断念しながら、話を勧めて行った。
作りたかったなぁ、モフモフランド。
タマが対抗してモジャモジャランドと言い出して、二つまとめてミルキーに却下された。
仕方ないから、モフモフ系モンスターをテイムして放牧スペースに放し飼いにしよう。
最終的に決まったのは、こうだ。
一階には事務所、食堂、室内訓練場、倉庫、救護室、実験室。
二階に教室を六つと、娯楽室、工作室、作戦司令室。
三階は宿泊用の部屋。これは二人ずつの相部屋になっている。
更に、地下には出張版輝きの洞窟を作る予定だ。
これは地下への入り口と、倉庫くらいのスペースを掘っておけば、後は金剛の方で掘り進んでくれるらしい。
これは完成が楽しみだ。




