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祝☆本編300話&80万字突破!
翌日、俺達は予定通りにタケダから頼んでおいたプレゼントを受け取り、昭二へと贈った。
贈った農具は無骨なデザインだが、却ってそれが良かったかもしれない。
渋くて良い、とすごく気に入ってくれた。
機能的にもかなり高性能で、使いやすく手に馴染むらしい。
伝説の農具なんて言葉、初めて聞いたよ。
それと一緒に、作物の苗も贈った。
これはウチの畑で育ててるものの中で、珍しくて、且つ昭二の畑で育てることが出来るもの、というのが条件だった。
ミゼルとミルキーが選んでくれたのは、≪筋肉花≫という花だ。
フルーツアイランドで採取したもので、上腕二頭筋のような花を咲かせる。
花と根っこが薬の素材になるらしく、そこそこの値段で取引されているんだとか。
他の作物はウチの畑でしか育てられないようなのや、ありふれた素材しか無かったらしい。
だけど、これも昭二は喜んでくれた。
沢山育てて、畑一面を立派な上腕二頭筋で埋め尽くすと宣言していた。
それはちょっと怖い。
そしてそれから更に、四日が過ぎた。
狩りに行ったり、畑を拡張したり、装備を造ったり。
のんびりしつつも充実した日々だった。
密かにある準備も進めている。
こっちも順調だ。
偶にタマが口を滑らしそうになるのを阻止するくらいで、上手くやれている。
今日でサービス開始から丁度一週間か。
現実だと、三日と半分くらいかな?
一般プレイヤーは相変わらず襲い掛かってくるけど、まだまだ俺達の敵じゃない。
ユニークスキルの類も実装されていないらしく、簡単に逃げられる。
思っていたよりも脅威じゃなかった。
これからものんびり過ごせそうだ。
けど、油断はしないようにしておく。
死んだら終わりだっていうのを忘れたらいけない。
今は……朝6時か。
よし、今日も一日楽しむぞ。
「あっ、モジャが落ちてる!」
「おはようタマ」
「がしっ!」
「ひえっ」
前髪を鷲掴みにされて、素で短い悲鳴が出てしまった。
いつもの冗談だったらしく、すぐに離して挨拶を返してくれた。
あーびっくりした。
畑へ向かって、紅葉から収穫物を受け取る。
紅葉は相変わらず手伝ってくれる。
細マッチョ達にも慣れたようで、全然物怖じしていない。
タマも葵も懐いているし、昨日くらいからルインも一緒に顔を出すようになった。
子供達がわちゃわちゃしていると、なんだか温かい気持ちが沸いてくる。
とても素晴らしい光景だ。
午前中は、装備やアイテムを作成して過ごす。
装備品はただの趣味だけど、ポーションは違う。
効果が凄まじいとかでかなり高値で売れるから、実益を兼ねている。
素材である宝石ハーブの状態でも高く売れるし、やっぱり趣味の部分はあるけども。
ヨモギモチや、シュシュも良く買い取ってくれる。
二人とも、元気に過ごしているようで何よりだ。
昼食後、午後からの狩りに備えてリビングで寛いでいると、来客があった。
ドアを開けると、そこにいたのはゼノガルドだった。
肩の辺りには、相棒であるコインが浮いている。
「どうも」
「こんにちは!」
「いらっしゃい。ハーブの買い付けかな?」
ゼノガルド……ゼノがここへ来るのは、そう珍しくはない。
街を出られないシュシュに代わって、偶に買い付けに来るようになっていた。
お互いに敬語は使わない。
何度か話す内に仲良くなったからだ。
昔の付き合いがある分、馴染むのは早かった。
「いや、今日は別件だ。少し、伝えておきたいことが出来た」
「伝えておきたいこと?」
ゼノは、話しながら何かを探すようにソワソワしている。
理由は分かっている。タマだ。
何故かタマに興味があるようで、タマが近くにいると嬉しそうだし、いないと今みたいに落ち着きが無くなる。
今日は、狩りの前の準備運動と言って畑の方へ行っている。
食後のデザートと腹ごなしをどうじにするって何か凄い。
「上手く伝わるかは分からないが……一週間後に開催されるイベントの告知があった」
「うん」
「詳細はまだ不明だ。が、主な内容はナガマサさん達βNPCをターゲットに行われる、という情報が書かれていたんだ」
「なるほど」
ゲームとしてのイベントが、正式リリースから現実世界での丁度一週間後から開催される。
それはつまり、この世界で言えば今日から丁度七日後だ。
内容は、俺達を狙う何か。
つまりゼノは、それを俺達に教える為に来てくれたらしい。
「どうか、気を付けて欲しい」
「ありがとう」
「……いや、たったこれだけの情報しかなくてすまない。もっと詳しく言えたらいいんだが、これ以上は当日まで秘密らしい」
「充分充分。まだ一週間もあるし、お陰でしっかり備えられるよ」
「役に立てたなら良かった」
ゼノは、安心したような表情をして帰って行った。
情報のお礼として、さっき収穫したばかりのフルーツを持たせた。
彼は俺達βNPCのことを気遣ってくれる、珍しい存在だ。
とてもありがたい。
以前も家の周りから一般プレイヤー達を退かしてくれたし、今だって、彼がいなければイベントの情報は手に入らなかっただろう。
今度改めて、しっかりとお礼をしないといけないな。
それにしても、イベントか。
βNPCをターゲットっていうのはどういう意味なんだろう。
今の時点で、一般プレイヤーからすればβNPCはターゲットだ。
倒せば大量の経験値やアイテムが手に入る、ボーナスキャラだ。
モグラやゼノからの情報によると、βNPCに比べて一般プレイヤーは強いらしい。
詳しく説明すると、レベルが上がりやすく、レベルアップの時にもらえるポイントが多く設定してあるらしい。
だから、一週間経った今ですらβNPCの大半が、強さで追い抜かれてしまっていてもおかしくないらしい。
タケダみたいな生産職だけじゃなく、戦闘職でもだ。
それに加えてイベントまで……。
これは、出来る限りの備えをしておいた方がいいのかもしれない。
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