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283 コインとコイン

 

「あんた、あたしのコイン持ってるわよね!?」

「コイン? ゼノさん、この喋るコインはゼノさんの相棒ですか?」


 ≪ルイン≫という名前のコインの質問は、よく分からなかった。

 一旦置いておいて、ゼノに聞いてみる。

 頷いて肯定してくれた。

 さっき一緒に戦っていた相棒で間違いないようだ。


「お名前は?」

「ルインよ!」

「ルイン、ルイン……ルイン?」


 改めて名前を聞いてみた。

 ルインで間違いないようだ。

 この名前もどこかで聞いたことがある。


「ちょっと、まさか忘れたなんて言わないわよね!」

「ルイン……え、まさか。ごめんゼノさん、ちょっと相棒をお借りしてもいいですか?」

「いいですよ」

「すみません」


 思い出した。

 ゼノに許可を得て、ルインと二人で空き家の裏に移動した。

 ここなら人目につかないだろう。

 隠れているような何かもいない。


「ルインって、パシオンを襲ってきた魔の者の?」

「うぐ……そうよ!」


 そこで確認してみると、やぱりそうだった。

 なんと、城でおろし金にパックリと咥えられた、あのルインだった。


 でもルインは、記憶を失ってはいたけど生きて存在している。

 今は昭二のところで預かってもらっている筈だ。


 そこも聞いてみたが、なんとこのルインは、魔の者としてのルインで、普通の女の子のルインとは別扱いらしい。

 なんだそれ。

 詳しくはルイン自身も分からないが、気付けば相棒候補になっていたらしい。

 そんなことあるのか。

 よく分からないが、これ以上は本人も分からないらしいから質問責めにはしないでおく。


 それで、コインを返してほしいと言われた。

 それは元々は城で封印されていた、ルインを倒した時のドロップアイテムとしてパシオンに押し付けられた、≪神滅魔竜ゴルヴィーク≫のコインだ。


「コインかぁ……」

「お願い! あれはあたしにはどうしても必要な物なの! もうNPCを襲ったり≪魔の者≫として活動したりしないから!」


 ルインの必死さが伝わってくる。

 表情とかの無いコインなのに、感情がここまで出るなんてすごいな。

 とてもただのNPCとは思えない。

 ゼノがあんなことを言ってたのは、どうやらルインの影響が大きいようだ。


 さて、コインをどうするか。

 パシオンの城で保管されてた物だけど、封印も解けたしということで、体良く報酬に紛れて押し付けられた。

 つまりもう俺の所有物だから、どう扱おうとパシオンは何も言わないだろう。


「分かった。ゼノさんには感謝してるし、あげるよ」

「ほんと!? やったー! ありがとう!」


 今はもう悪さをするつもりも無いらしいから、返すことにした。

 あっても無くても、俺にはあまり変わらないからな。


「あ、あたし持てないからゼノに渡しといてくれる?」

「分かりました」

「ここで吸収してもいいけど、どうせならしっかり自慢してからにしたいのよね」


 ストレージからコインを取り出そうとしたところで、ゼノに渡すようお願いされた。

 確かに持てそうにない。


 話も済んだし、ゼノとシュシュの元に戻った。

 そんなに長くは話してないし、不審がられることもないだろう。

 離れて会話してる時点で怪しいかもしれないが、それは仕方ない。


 そのことを素直に謝っていると、後頭部に衝撃。

 何かがしがみついたような感覚と同時に、髪の毛がすごいわさわさされ始める。


「モジャモジャ注意報はつれー! モジャー!」

「うわー、大変だー」


 タマだった。

 とりあえずいつものノリで返してから、人前だったことを思い出した。

 家族以外に見られるのは、まだちょっと恥ずかしい。


 肩車のような状態のままタマを紹介した。

 みんな物怖じしない性格のようで、元気に挨拶を交わしている。

 勿論、ウチのタマが一番元気が良い。


 ゼノが少し呆然としていたが、声を掛けるとすぐに元に戻った。

 ある程度離れたところから瞬間移動で出てきたみたいだからな。

 女の子が突然現れたら、驚くのは仕方がない。


 とりあえず、忘れない内に渡しておかないと。

 

 二枚のコインをストレージから取り出す。

 一枚は金色で、表面に竜が描かれている。裏には≪MVP≫の文字。


 もう一枚は、白く輝いている。これが白金という奴だろうか。

 表には可愛くデフォルメされたタマが描かれていて、裏には大きく×が描かれている。


 金色の方が≪神滅魔竜ゴルヴィーク≫で、白金の方がタマのものだ。

 前は金色だった筈だけど、いつの間に変化したんだろうか。

 まぁ、コインはコインだ。


 それを、ゼノに差し出す。


「この二枚は、ルインさんと約束したお礼です。受け取ってください」

「え、でもお礼はさっき」

「それはそれです。俺は、ゼノさんにお礼がしたいので」


 遠慮しようとしたところを、畳みかける。

 俺は無理矢理にでもこれを渡すつもりだ。

 一枚はルインにお願いされてだけど、タマのコインは、俺の感謝の気持ちだ。

 嫌と言われても押し付ける。


「……そうですか、分かりました」


 ゼノも分かってくれたのか、すぐに了承してくれた。

 良かった良かった。

 と思うと同時に、俺の手の中のコインが消えた。

 どうやらゼノのストレージに直接放り込んだらしい。


 おお、もしかしてNPC的な扱いの影響だろうか?

 パシオンやシエルも報酬を直接ストレージに入れてくれてたし、そういう機能がNPCには付いてるんだろうけど、それを使えるようになったようだ。

 以外なところで新しい発見があった。


 お礼も言ったし、お礼も渡した。

 これで用事は終わった。

 俺達は別れの挨拶をして、静かになった我が家へと帰ることにした。


 出来れば彼には、また会いたい。

 色々制限があるから難しいかもしれないけど、もっと交流を持ちたい。


 また、昔のように。



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