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279 モジャと一般プレイヤー


 一般プレイヤー達がうろうろして、家の様子を窺っている。

 家の側面でもこれなら、玄関の方はどうなのか。


 玄関へ向かって、正面に面した窓から外を覗いてみる。

 そこにも、一般プレイヤー達の姿がある。

 少なくとも三十人はいそうだな。

 

 しかし、訪ねてくる訳でもなく、プレイヤー達は何をしてるんだろうか。


 様子を見てみると、何やら揉めているようだ。

 俺の方が先にとか、言い争っている声が聞こえてくる。


 人の家の前で揉めないで欲しい。

 さて、どうしようかな。


 誰も彼も、この家を寄越せと言ってきた時の≪ムラマサ≫と同じ顔をしている。

 あの顔は危ない顔だ。

 何を目的にここへ来たか分からないけど、出来れば関わりたくない。


 一旦ミルキー達と相談するか。

 そっと窓から離れて、リビングへと戻る。


「どうでした?」

「人が沢山いたね。一体どうしたんだろう」

「そうですね、こんなところまで何しに……あれ、モグラさんからメッセージが来ました」

「モグラさんから? 何か書いてある?」


 妙にタイミングが良い。

 もしかして、あのプレイヤー達と何か関係があるんだろうか。


「えっと、今朝ナガマサさんがタケダさん達に売った装備がプレイヤー達の間で話題になったみたいです。それですぐに品薄になったけどどうしても欲しい人達が、それに入ってるモジャの銘を見て、≪モジャ≫の家に押しかけてるそうです」

「なるほど……」


 ミルキーがモグラからのメッセージの内容を要約してくれて、納得した。

 まさか今朝のあれがそんなに話題になるなんて。

 武器はノービス用が七百と初心者用も七百。

 合わせて千四百もある。


 だけど武器種で量が違うし、剣を使いたい人が大勢いたら足りなくもなるかもしれない。

 それに、多分どんどん値段も吊り上ってるんだろうな。

 それなら製作者を探す流れになるのも、なんとなく分かる。


 しかし、側で聞いていた葵は首を傾げている。

 

「つまりどういうこと?」

『ご主人様が凄いってことじゃな』

「モジャマサはすごいモジャだからね!」

「なるほど……!」


 そんな葵に金剛が雑な説明で返し、タマがそれに乗っかった。

 納得したように頷いているが、それでいいのか葵。


「そういうことなら、装備を用意したら帰ってくれるかな」

「かもしれませんわね」

『どうかのう』


 思いついた解決策を口にしてみた。

 ミゼルが笑顔で同意してくれたが、そこに金剛が待ったを掛けた。


「何か引っかかる?」

『うむ。詳しい事情は分からぬが、人の欲というのは果てが無い。わらわを追いかけ回した者達もそうじゃが、そう簡単に引き下がるとは思えんのじゃ』

「確かに、一理あるかも」


 金剛は、モンスターで女王だ。

 人間に対しての警戒心は、普通のNPCよりも高く設定されていてもおかしくない。

 さっきも一般プレイヤーにつけ回されたみたいだし、その言葉には説得力がある。


「それじゃあもうしばらく様子を見てみようかな」

「私も行きます」

「では私も」

『わらわも行こう』

「タマはー?」

「タマは葵ちゃんと一緒にお留守番しててくれ。ミゼルも、タマと葵ちゃんを任せたい」

「えー……」

「はーい!」

「分かりましたわ」


 ミルキー、金剛と一緒に、再度玄関の方へ。

 不満そうな葵はタマに任せておく。

 ミゼルもタマの側にいてもらえば安心だ。

 一応、何かあった時の為に備えて皆に守属性魔法を掛けておいた。


 外を覗いてみる。

 そこでは、何やら決闘にまで発展していた。

 あれで順番を決めてるんだろうか。


 丁度佳境に入っていたらしく、すぐに決着がついた。

 まだサービス開始されてから一日しか経ってないのに、どちらも装備がそれなりに良さそうに見える。


 勝ったのは、戦士のような見た目の大柄な男だ。

 名前は≪ギガガガ≫。


「俺の勝ちだ! 他に挑戦者はいるか!? いなければ、先に交渉する権利は俺の物だ!」


 勝利を宣言し、周囲のプレイヤー達に向かって声を張り上げている。


「いないようだな! 俺が格安の専属作成契約を捥ぎ取っても、後から文句言うんじゃねえぞ!」 

「隠れましょう」

「おっと」

 

 ギガガガは、倒した相手を引き起こして、こっちへと向かってきた。

 寸前でミルキーが教えてくれたから、見られる前に窓から離れられたと思う。

 焦って瞬間移動しかけたのは内緒だ。


 ドンドンドン!!


「おい! 誰かいないのか! おい!」


 玄関のドアがノックされる。

 いや、ノックというよりは拳を叩きつけている音だ。

 乱暴な奴のようだ。


 金剛が顔を近づけてきた。

 外に声が洩れないように、こっそりと囁いてくる。


『どうするのじゃ?』

「直接対応して帰ってもらおうかな。さっきの台詞を聞く感じ、まともに取引が出来るとは思えないし。聞き訳が悪かったら力づくでも――」


 俺の考えを金剛に話す。

 そして、扉に向かおうとしたところをミルキーに止められた。

 

「一旦止めておきましょう。下手に騒ぎを起こして、プレイヤーに目の敵にされると面倒なことになるかもしれません」

「うーん……」

「ナガマサさんも言ってたじゃないですか、何が起こるか分からないって。慎重に判断した方が、良いと思います」


 言われて、ハッとした。

 ミルキーの言い分は最もだ。

 蹴散らすのは簡単だとしても、それが原因で家族に何が起こるか分からない。

 俺達に対して雑な対応をされたことで、少し気が立っていたのかもしれないな。


 力づくは、最終手段。

 最終手段は最後に選ぶから最終手段なわけで。

 今はまだまだそんな段階じゃない。


「ミルキーの言う通りだね。そうしよう」

「ありがとうございます」

「家族なんだから、意見を聞くのは普通のことだよ」


 俺達は居留守を決め込むことにした。

 別に、外に出られない訳でもない。

 しばらくは様子を見ても良いだろう。



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