表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

317/407

16


 レベルアップの処理を終えたルインは、高速で飛び回っていた。

 さっきまでは、飛んでるというよりも漂ってる、って感じだったからな。

 きっと自由に飛べるようになって、はしゃいでるんだろう。


「ゼノ、さっきまでとは比べものにならないくらい快適だわ!」

「へー、そんなに違うのか」

「違うわよ。さっきまでのはそうね、気球に乗ってる感じ? 今は飛行機ね!」

「なるほどねー」


 実際、はしゃいでいたようだ。

 俺の感じてたイメージもそんなに違わなかったらしい。

 よく気球で体当たりしようと思ったな、こいつは。

 

「早速他のスキルも試すわよ!」

「おう、そうだな」


 今のところスキルがちょっと変化したのと、快適に飛べるようになったことしか試していない。

 新しく取ったスキルは試してみないと効果が実感しにくいから、ルインは早く実験してみたいようだ。

 俺も、実際どんな風になるのか興味がある。


 手ごろな獲物を探して歩いていると、上空から弾丸鷹が急降下して来るのが見えた。

 まだそれなりに距離があるのに、あいつの索敵範囲は広いようだ。

 だけど、丁度いい。


「ルイン、さっきのリベンジが出来そうだぞ」

「あら、ほんとね。あたしの真の実力をあの鳥にも、あんたにも、バッチリ見せつけてやるわ!」


 指し示してやると、ルインは不敵に笑った、ような感じがした。


「俺もかよ」

「行くわよー!」


 俺のツッコミを軽く無視したルインが気合いを入れて、勢いよく飛び出していった。

 こちらへ突っ込んでくる弾丸鷹へと、真正面から突っ込んで行く。

 そしてルインの身体が、炎に包まれた。


「おりゃー!」

「ピィィィ!」


 お互いに速度が乗った状態での激突。

 雄叫びなんかも上げて、どちらも気合い充分だ。

 一体どっちが勝つのか。


「いった! やったわねー!」

「ピィー!」


 一度目の激突は、お互い弾かれた。

 ルインの方が大きく後退させられた気がする。

 しかし、HPは弾丸鷹の方が大きく削られている。

 

 ルインの方も少し減っているが、一割も減っていない。

 気力の方も、すぐさま反撃に突っ込んで行く様子を見るに充分だ。

 さっき一撃をもらっただけで墜落しそうになっていたとはとても思えない。


 戦闘力は拮抗しているようで、お互いに少し距離を取っては激突を繰り返している。

 っていうか、ここまで観戦してて思ったけど、スキル使うの忘れてないか?


「ルイン! 百貌変異は使わないのか!?」

「あっ、忘れてたわ!」


 ルインが俺の大声に反応した。

 やっぱり忘れていたようだ。

 ハッとして動きが止まったその隙に弾丸鷹が突っ込んで来たが、ルインは激突寸前でひらりと身を躱し、背後を取った。


「えーっと、念じるだけでいいのね……あたしの実力、見せてあげるわ!」


 ルインの姿が変化した。

 パッと変わった訳じゃなく、小さいコインがドロッと溶けて、どこからともなく溢れてくる。

 そうして容積を増したものが、鷹の形になった。


 これがルインが新しく習得したスキル、≪百貌変異≫の効果。

 今までにコインを吸収したり、身体を乗っ取ったモンスターの姿形を取ることが出来る。

 しかも、その間はステータスやスキルも使えるようだ。


 ≪吸収会得≫があるから、コインを吸収したり乗っ取ったりする度に強くなる。

 さっき吸収したコインは、まだスキルを習得していなかったから対象外だったが、今後はステータスがぐんぐん伸びて行く筈だ。


「あたしに勝とうなんて、百年経っても無理よ!」

「ピッ……!!」


 弾丸鷹の火を纏った体当たりが弾丸鷹を弾き飛ばした。

 どうやら、決着が付いたようだ。


 ただでさえほぼ互角どころか、耐久力の差でルインが勝ってたのに、そこに弾丸鷹のステータスまで加わったら勝ち目は無いだろう。


 今勝ち誇ってる方がルインだな。

 火の粉をまき散らしながら空中をはしゃぎまわってるから、なんとも分かりやすい。

 アイコンや名前を確認しなくても一目で分かる。


 負けた方の弾丸鷹は、地面に落下して力尽きた。

 ドロップアイテムを回収回収っと。


 ≪鷹の羽≫をストレージに仕舞ったところで、俺の前にあった岩の上に弾丸鷹の姿のままのルインが舞い降りた。

 姿は弾丸鷹そのものだ。

 ただ、瞳がまるでコインのように金色なのが気になった。

 

「どう、見てた? あたしの実力!」

「見てたよ。余裕そうだったな」

「これくらい、楽勝よ。あたしはいずれ、最強を目指すんだからね!」


 ルインは鷹の姿のまま、胸を張って見せた。

 おお、コインじゃないから今までよりも感情が分かりやすい。

 今までも充分分かりやすかったが、やっぱりジェスチャーがあると無いとじゃ全然違う。


「この調子ならあながち冗談じゃないかもな」

「最初から本気なんだけど?」


 素直な感想を言うと、ジトッとした目で見られた。

 鷹の姿だと、コインと違って表情があるのも大きいな。

 感情が思いっきり顔に出てる。


「へいへい、そうだな。さて、ドロップも拾ったしどんどん狩るか」

「そうね次に――あー!」

「うわっ、……なんだ?」


 次に行こうとしたところで、ルインが突然大声を上げた。

 ちょっとびっくりしてしまった。


「≪侵食融合≫、試すの忘れてた……」

「あー、次頑張ろう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めましたので、こちらもよろしくお願いします!
友人に騙されたお陰でラスボスを魅了しちゃいました!~友人に裏切られた後、ラスボス系褐色美少女のお嫁さんとして幸せな日々を過ごす私が【真のラスボス】と呼ばれるまで~
面白いと感じたら、以下のバナーをクリックして頂けるととても有難いです。 その一クリックが書籍化へと繋がります! ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ