248 人工物と四肢
どんどん奥へ進む。
いつか出会った≪銀幽霊≫とその下位互換っぽい≪銅幽霊≫。
他にも、空飛ぶ結晶体≪オブシディアン≫、毒ガスに目を付けたような≪ポイズンガス≫等に遭遇した。
どれも簡単に倒せる。
ポイズンガスなんかは物理攻撃無効とかを警戒したが、そんなことは無かった。
盾で叩いても普通にダメージが通った。
鉱山っぽいモンスターで固めてるんだろうか?
鉱山について詳しくないから、正直分からない。
多分雰囲気はこんな感じだろう。
「野球だー!!」
タマが銀幽霊を鷲掴みにした。
そして投げた。
凄まじい勢いで銀幽霊が飛ぶ。
オブシディアンやポイズンガスが文字通り蹴散らされ、銀幽霊自体も砕け散った。
恐ろしい。
一方的な虐殺が気に入ったらしい。
銀幽霊や銅幽霊を見つける度に確保しては、次に遭遇したモンスターにぶつけている。
持ってる間も攻撃されてるみたいなんだけど、全然効いていない。
タマの防御力を貫通出来るモンスターなんているんだろうか。
次のエリアへの入り口を見つけた。
勿論奥へ進む。
ゴーレム来いゴーレム来い。
そこは、さっきまでと様子が違っていた。
≪ストーレ鉱山02≫までは自然の洞窟みたいな感じだった。
床こそ平らに均してあったが、周りはごつごつした岩肌そのものだった。
「わー! すごーい! 硬いよモジャマサ!」
ここは、全然違う。
広々とした通路が左右に伸びている。
ここは通路の途中のようだ。
それにしても、狭くない。
幅が5m程、高さも同じくらいになっている。
床も壁も、天井まで金属のようなもので覆われている。
タマが叩く音がゴインゴイン響く。
明らかに鉱山じゃない。
マップを開いてみると、エリア名は≪忘却の実験場≫となっている。
鉱山どこ行った。
とりあえず探索してみるか。
少し歩いたところで、何かが床を這っているのに気付いた。
こっちに近づいているようだ。
と、思ったら突然崩れ落ちた。
何かに切られたように、二つに分かれたように見えた
「必殺・タマスラッシュ、モジャ」
隣にはポーズを決めたタマ。
珍しく落ち着いた感じのキメだが、最後のモジャはなんなんだろう。
既に通常攻撃が必殺技になってるタマだが、時々こんな感じで必殺技を決めては遊んでいる。
「タマ、どんなモンスターが出てくるか確認させてくれ」
「あいあい!」
タマは行動が早い。
先手必勝を具現化したかのように、出会い頭に倒してしまう。
俺がよく見ようと思ってると特にだ。
新しい狩場だと特に多いから、新鮮で興奮してしまうんだろうか。
さっきの奴らしきものとは、すぐに遭遇出来た。
それは機械で出来た右腕だった。
大きさは、丁度俺くらい?
まるで虫のように指を器用に動かして、ずりずりと這ってくる。
しかも意外と速い。
中々の迫力だ。
名前は≪破壊の嘆き・模倣≫。
模倣ってことは元になったものがあるのかな。
「モジャモジャ、まだー?」
「ああ、もういいモジャ」
「やったモジャー!」
名前も見たし、とりあえず今はもういい。
わざわざ攻撃を受けないでも、先に倒してしまえばいい。
他に誰か連れてくるなら、しっかり行動パターンや攻撃手段を把握しておきたいけど。
ドロップアイテムは≪歴史の破片≫だけだった。
2cmくらいの欠片を何かに使おうと思ったら結構な数がいりそうだな。
沸きはどうだろう。
敵の数はそれなりのようだ。
ただ、鉱山に比べると少ない。
一体一体が強めに設定されてるんだと思う。
俺達からすれば、誤差でしかないんだけど。
探索は進む。
右腕がいたから若干予想はしてたが、他のもいた。
通路の奥から迫ってくる。
左腕に右腕に右脚。
追加の右腕もいるし、数もまちまちだ。
何かのあてつけなんじゃないかと思ってしまった。
俺だって立派な手足があるんだぞ。
どっちの腕と脚が強いか勝負だ。
左腕、≪修復の喜び・模倣≫。
盾パンチで破壊。
右脚、≪疾駆の痛み・模倣≫。
ブーツキックで破壊。
左脚、≪守護の楽しみ・模倣≫。
踏みつけで破壊。
右腕も、きっちり右拳で粉砕してやった。
満足した。
後はタマに任せよう。
時々襲ってくる四肢を蹴散らしながら進むと、少し広い部屋へ出た。
10m四方くらいだろうか。
充分広いんだけど、通路が広すぎたせいで広く感じない。
俺達が来た通路とは別に、左側の壁に同じような通路が伸びている。
丁度垂直な感じだ。
そしてその間にも、少し幅が小さい通路がある。
角のところだからだろうか。
通路は真っ直ぐだった。
この部屋の構造を考えると、四角になっている気がする。
考えが合っていれば、この角の通路は中心に繋がっている。
合ってる保証もないし、とりあえずは左側の壁の通路へ行こう。
俺の予想が正解だったとしても、外周をぐるっと周った方が何か発見があるかもしれない。
中心部に何かイベントが用意されていたり、MVPボスが固定湧きしてると面倒だからな。
ボス戦は後回しにするに限る。
それにしても両腕両脚とは、あてつけかとも思ったけど親近感もちょっと沸く。
俺が元々持ってたユニークスキルも四肢だったし。
現実でも≪四肢≫や≪両手両足≫という言葉は常に付きまとっていた。
ま、今の俺には関係ないな。
さっと周って、ついでに中心部にも遊びに行ってみよう。
 




