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239 食後のデザート


「おいしい!」


 がつがつと料理を食べるタマが大きな声で感想を言った。

 そしてまた食べ始める。


「これも美味しい!」


 タマはどんどん料理を食べる。

 ご機嫌だ。

 他の皆も、美味しいと呟いている。

 葵なんかはタマに負けないくらいの勢いで食べ始めた。


 ミゼルはお皿に料理を取り分けながら、そんな様子を眺めている。

 とても嬉しそうな笑顔だ。


「ありがとー!」

「ふふ、まだまだ沢山ありますから、慌てずともよろしいですわ」


 差し出したお皿をタマが受け取った。

 あれ、タマのお代わり分だったのか。

 王女様によそってもらうなんて、大丈夫なんだろうか。


 ハラハラしてしまう。

 ふと、ミゼルと目が合った。

 

「ナガマサ様も、どうぞ召し上がってください」

「あ、はい」


 タマの食べっぷりとミゼルの笑顔で、つい手が止まってしまっていた。

 俺もお腹は空いている。

 いただくとしよう。


 シチューのようなものをスプーンで掬う。

 じゃがいもがごろっとしていて美味しそうだ。


「おいしい」

「それは良かったですわ」


 ミゼルがニコニコとほほ笑んでいる。

 なんだか照れくさい。


「うん、うまいっす。初めてでこれだけのものが作れるなんてすげーっすね」

「はい、完璧ですよミゼル様」

「これもお二人が教えてくれたお陰です」


 出汁巻とノーチェもミゼルを褒める。

 ミゼルはこの二人に料理を教わったようだ。


 ……出汁巻も料理が出来るのか。

 すごいな。

 俺もしっかりミルキーに習わないと。


「お肉!」

「それは私の……!」

「二人とも、大人しく食べなさい!」

「「はーい」」

「しょげないでよベイベェェェェ……」


 タマと葵がお肉争奪戦を開始した。

 と思ったらミルキーに収められていた。


 一瞬だけ≪クレイジーフラワー≫の音量が上がった。

 すぐに0にされていた。

 好みのワンフレーズじゃなかったんだろうか。

 哀れクレイジー。





 空になった皿をノーチェが運んでいく。

 綺麗に片づけられて、テーブルの上も空っぽになった。


 ミゼル達の作った料理はどれも美味しかった。

 どれも、心がこもっていた。

 ミルキーの料理もそうだ。

 俺達の為に作ってくれた料理は、食べてると楽しくなったり、嬉しくなったりする。


 現実にいたころの食事はつまらなかった。

 むしろ苦痛だった。

 それがこんなに楽しく思えるのは、みんなのお陰だろう。


「デザートっすよー。ナガマサさんとこの畑で採れたフルーツ盛り合わせっす」

「前回食べてもらったのは島で採れたものですけど、それを畑で栽培したので持ってきました。少し小ぶりになっていますが、味は負けないくらい美味しいですよ」


 出汁巻が大きな皿を運んできた。

 タマが丸まって乗れそうなくらい大きい。

 その上には食べやすくカットされた果物が山盛りに盛ってある。

 流石トッププレイヤー、包丁捌きも華麗なようだ。


 テーブルの中央に置かれた。

 でかい。

 まさしく果物の山だ。

 それを見て、ミゼルの笑顔がより一層輝いている。


「まあ! あのフルーツ、とても美味しかったのでまた食べたいと思ってたんですの。ありがとうございます、ナガマサ様」

「美味しいですからね。ウチの皆も大好きですよ」

「うふふ、そのようですわね」


 フルーツの山に目を輝かせているのはミゼルだけじゃなかった。

 タマも葵も、石華もおろし金も視線が釘付けだ。

 ミルキーも例外じゃない。


 様子が変わらないのはムッキーとクレイジーくらいか。

 この二人(?)は食事出来るのか謎だけど。


 このフルーツは≪モジャ畑≫で採れたものだ。

 フルーツアイランドに生息するモンスターのドロップ品である筋肉フルーツを、少しほっそりさせた感じ。


 これは樹に成る細マッチョを倒すことで手に入る。

 その名も細マッチョフルーツ。

 ≪細マッチョイチゴ≫のように命名されていて、オレンジやリンゴ等いくつかの種類がある。


 見た目は腹筋が割れたフルーツ。

 意味が分からない。

 でもそうとしか説明できない。


 カットされているから腹筋は全く気にならない。

 ただの美味しいフルーツ盛りだ。

 ミルキーが素直に喰いついているのも、そのお陰だろう。


 皆は空気を読んでいるのか、誰もフルーツ盛りに手を伸ばさない。

 ミゼルへの手土産だし、出汁巻に依頼されて持参したものだ。

 ミゼルよりも先に食べるのは失礼になるだろうからな。


 タマも必死に堪えている。

 というかミルキーとおろし金に抑えられている。

 おろし金、なんて賢いんだ。

 タマも見習った方がいいかもしれない。

 素直なところも可愛いけど。


「どうぞ、食べてみて下さい」

「はい、それではいただきますね」


 いつまでもこのままにしておくのも酷だ。

 ミゼルに食べるよう促す。


 ミゼルは≪細マッチョリンゴ≫の欠片を手に取り、口へ入れた。

 何故かいたずらっぽい笑顔になった。


「ふふ、とても美味しいです」

「それは良かった」

「どうぞ皆様も召し上がって下さい。美味しいですよ」


 ミゼルに促され、皆も手を伸ばし始めた。

 俺も一つ口へ放り込む。

 うん、美味しい。

 ある程度貯まったら商店にでも売りにいってみようかな。

 

「おろし金にもあげる!」

「キュル!」


 タマがおろし金に向かって欠片を放る。

 おろし金は上半身をもたげて、上手く口でキャッチした。

 楽しそうに、且つ美味しそうに食べている。


『わらわにはないのかのう』

「じゃあ次は石華!」

『とうっ!』

「えらい!」

「石華、上手だね」

『ふふふ、仮にも女王であるわらわを舐めるでない』


 そこに何故か石華まで参加していた。

 口でキャッチした果物を咀嚼しながらドヤ顔をしている。

 女王ってそんなことするっけ?


「もう、人の家で暴れたらダメですよ」

「「はーい」」

「石華さんが一番アクロバティックでしたからね。女王だから関係ない、みたいな顔してもダメです」

『仕方ないのう』


 ミルキーが石華達に注意していた。

 流石に、空中に跳び上がって捻りを加えた三回転をしながらの口でキャッチは駄目だったようだ。

 シラを切ろうとしていた石華が更に突っ込まれて、観念した。


 そんな様子を見て、ミゼルは楽しそうに笑っていた。



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