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235 畑の宝石


 商店へやって来た。

 珍しく一人だ。

 タマと葵はミルキーと一緒に、先にお隣へお邪魔しに行った。

 ミゼルの準備を手伝うそうだ。


 ここは村にある数少ないNPCのショップ。

 雑貨や日用品、消耗品に武器防具等幅広く取り揃えている。

 他には八百屋と肉屋くらいしかないから、この店がカバーする範囲は広い。

 

 いつも愛想の良い、笑顔のおじさんが店番をしている。

 

「こんにちは」

「いらっしゃい、今日は何をお求めかな?」

「ハーブの苗が欲しいんですが、ありますか? そろそろブルーハーブとホワイトハーブにも手を出してみたくて」

「おっ、レッドハーブの育成は順調かい?」

「はい、お蔭様で」

「そうかそうか」


 おじさんは嬉しそうに頷いている。

 俺が畑に興味を持った時にもここで苗を購入した。

 初心者に向いている、いないを教えてもらった。

 レッドハーブとグリーンハーブは――宝石化したけど――順調に育った。


 だから、そろそろ次のステップに進むことにした。

 おじさんもそのことを喜んでくれているようだ。


「白と青はこの村で育ててる人は少なくてね、少し値が張るがいいかい?」

「大丈夫です」

「よしっ、とりあえず十株ずつはあるよ。もっと数が必要なら取り寄せるけど、どうする?」

「追加で十株ずつお願いします。後赤と緑も十株ずつ追加で欲しいです」

「あいよ。それじゃあ四種類十株ずつだね」


 取引ウインドウが現れる。

 物と数を確認する。

 うん、間違いない。

 表示された金額はそこそこだが、問題なく払える。


 苗の追加購入はミルキーに相談済みだ。

 許可ももらってある。

 さくっと完了させた。


「毎度あり。どうだい、この村には慣れたかい?」

「はい、お蔭様で。みんな良い人たちばかりで、過ごしやすいです」

「そいつは良かった。困ったことがあったら何でも言ってくれな」

「ありがとうございます。そういえば、ハーブの買い取りもされてるんでしたっけ」

「ああ、してるよ。赤と緑を売ってくれるのかな?」


 せっかくだし売ってみるか。

 宝石化したハーブにどんな反応を示すのか見てみたい。

 ≪ルビーハーブ≫はポーションの材料にしてしまったから、取り出すのは≪エメラルドハーブ≫だ。


 出した瞬間、おじさんの顔が困惑したものになった。


「実はちょっと変わった感じになっちゃって。これなんですけど」

「これ? これは宝石じゃ……え、これが緑?」

「畑に植えてたらいつの間にかこうなってました。レッドハーブも同じようになってましたけど、そっちはポーションにしちゃいました」

「そ、そのポーションはまだあるかい!?」

「うわっ」


 おじさんが突然勢いよく喰いついてきた。

 声も大きい。

 思わずのけぞってしまった。

 ああびっくりした。


「おっと、すまない、つい興奮してしまって」

「こちらこそすみません。ありますよ」


 ストレージから≪ルビーポーション≫を取り出した。

 渡すと、慎重な手つきで受け取った。

 じっくりと眺めている。


「ナガマサさんの畑って、あのイカの?」

「はい、そのイカのです」

「なるほど、あそこかぁ。前チラッと見たことあるけど、石柱みたいなものが生えてたね。ハーブがこうなったのはイカの影響なのかな?」

「なんかそうらしいですね」


 ウチの≪モジャ畑≫にはMVPモンスターが生えている。

 名前は≪ピンポン玉≫。

 見た目は巨大なイカだ。

 少し前には頭の部分から樹まで生えてきた。


 ピンポン玉の影響で周囲からは雑草のように結晶が生えるし、作物の一部が宝石化した。

 そのMVPモンスターと因縁のある≪金剛石華≫が解説してくれたから間違いはない筈だ。

 元々住んでいた洞窟も結晶生え放題だったからな。


「このルビーポーションは素晴らしいよ! 回復量が≪ホワイトポーション≫の2倍近くもある! この≪エメラルドハーブ≫を使ったポーションはないのかい?」

「作ってないですね。今作りましょうか?」

「お願いしてもいいかい?」

「分かりました」


 ポーション瓶は、まだあるな。

 露店を覗くついでに消耗品は補充している。


 ≪クリエイトポーション≫を発動する。

 材料を指定。

 頭上で成功を示すエフェクトが現れた。


 効果は後で確認したらいいか。

 待ちきれない様子のおじさんに差し出す。


「どうぞ」

「ありがとう。ううん、これも美しい輝きだね」


 普通のポーションも透き通ってはいる。

 透明な色のついた液体だ。


 しかし、ルビーポーションもエメラルドポーションも見た目が違う。

 まるで宝石のように、多角的に光を反射して輝いている。

 液体なのに不思議な光景だ。

 さすがファンタジーの産物。


「すごいよこれ! 解毒作用が強力になってて、しかも体力の自動回復効果がついてるんだ!」

「そうなんですか」


 もう一個作ってみる。

 効果は……なるほど。

 色々ついている。

 

 普通に出回っている≪グリーンポーション≫の効果は、解毒。

 毒、麻痺、沈黙、石化の状態異常を解除する。


 ≪エメラルドポーション≫は、全ての状態異常を解除する。

 呪いや気絶、特殊な毒なんかもいけるらしい。

 しかも、使用してから五分間、十秒ごとにHPの5%を自動で回復してくれる。


 一分で30%、瀕死でも三分もあればほぼ全回復する。

 これを飲んで狩りをしたら回復の手間やコストが減らせそうだ。

 俺達は必要ないけど。


「このハーブとポーションを売って貰えないかい?」

「いいですよ。ハーブは元々そのつもりでしたし、ポーションはまぁおまけということで」

「ありがとう。このハーブを加工上手く出来れば、もっと沢山買い取らせてほしいね。ポーションにしてからでも買い取るけど、値段がかなり高くなるだろうから、しばらくはまとまった数は無理かな」

「分かりました」


 とりあえずルビーポーションとエメラルドポーションを一つずつ。

 エメラルドハーブを20枚売った。

 結構な金額になった。

 さっきの分を合わせても余裕でプラスだ。

 すごい。

 うちの畑には宝石が生えてるぞ。



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