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234 ミュートと変態


「この調子でうるさ――声が大きいのでちょっと……」

「ここまで個性的になるとは思わなかった……! ちょっと元気すぎるね」

「ぴーひゃらりいいいぃぃぃぃぃいぃ!」


 ミルキーが微妙な顔をしている。

 今一瞬、うるさいって言おうとしたな。

 気持ちは分かる。

 うるさいし。


 葵も、≪クレイジーフラワー≫がここまでクレイジーになるとは思わなかったようだ。

 まだ例を二つしか知らないが、本来喋らない相棒が≪自我≫と≪会話≫を得るとおかしな性格にでもなるんだろうか。

 ミルキー程参った顔をしてないのは、何故だろう。

 騒音への耐性でもあるのかな。


「モージャジャ」

「モジャジャアアアアアアアアアアアアアア」

「モージャリ」

「モジャリイイイイイイイィィィイィィイイィィィイィ」


 タマの呼びかけにクレイジーが応える。

 無駄に順応性高いなこいつ。

 というか、謎言語でのやり取りはやめてくれ。

 ただ単に歌ってるだけかもしれないが。


「今のはモジャの言葉で『そろそろ晩御飯だけど今日はイカ焼きが食べたいな』っていう意味!」

「タコが赤くなるのはなんでさあああああぁぁぁぁああぁぁぁあぁ!!」


 初耳だよ。

 クレイジーもまた、微妙に外れたことを叫んでいる。

 俺も段々うるさく思ってきた。


「あのいい笑顔固定でうねうねしてるの見てると、段々イライラしてきました」


 ミルキーの笑顔が怖い。

 なんとかならないだろうか。


「静かにするか黙ってもらう事って出来ないの?」

「言うこと聞いてくれない……!」

「俺ぇぇぇええぇえぇは音がだいすっきいいいぃぃぃぃぃいいぃぃぃぃいぃぃ!」

「タマはモジャが大好きー!」

「いぇぇぇえあああぁあぁぁぁぁあ」

「いえー!」


 葵とクレイジーの両方に聞いてみるが、返事はよろしくない。

 タマは何故か仲良くなっている。

 あのノリが楽しいんだろうか。

 あと恥ずかしいからそういうこと言わない。


「すんませーん」

「あ、はーい」


 どうしようかと思っていると、お客さんだ。

 ミルキーが向かってくれた。

 すぐに戻ってきたが、出汁巻玉子と一緒だった。


「お邪魔します。これ、手土産っす……どうしたんすか?」

「ご丁寧にどうも。葵の相棒が喋るようになったんだけど、思った以上にうるさくてですね」

「思った以上にクレイジーだった」

「ぷりんあらもおおおおおどぁぁぁぁあああぁぁぁぁぁ」

「なるほど。特徴スキルで≪音量調節≫ってないっすか? それを取れば十段階プラスミュートが設定出来るようになるっすよ」


 まさかの情報だ。

 流石先駆者、有難い。

 葵の方を見ると、そのスキルはあったようだ。

 ポイントも余らせていたらしく、クレイジーの声がピタッと止んだ。


「ミュートにしたよ」


 楽しくはあったけど、ちょっとやかましい。

 音量を調整出来るようになったからもうちょっとマシかもしれないが、ミルキーがうんざりしてたし今はミュートでいいだろう。


「良かったぁ。ありがとう、葵ちゃん。ナガマサさんも、ご迷惑おかけしました」

「謝らなくて大丈夫だよ。謝るようなこと特になかったでしょ」

「ちょっと空気を悪くしてしまったかなと……ありがとうございます」

「大丈夫大丈夫。葵ちゃん、人がいる時は音量抑え目にね」

「うん」


 何故かミルキーが申し訳なさそうだった。

 イライラしてたらしいから、そのことだろう。

 誰が悪いわけでもない。


「出汁巻さん、助かりました」

「オレも玉子焼がしゃべるようになって、パシオン様に怒られたっすからね」

「でしょうね」


 出汁巻の相棒の玉子焼は黄色いトランクスだ。

 強くなるためのパンツを求めて、パンツパンツと連呼する。


 ≪自我≫と≪会話≫のスキルを取得した直後は、クレイジーと同じようにところ構わず叫びまくったらしい。

 出汁巻の主な仕事はパシオンとミゼルの護衛。

 王子と王女の護衛の股間からパンツを求める声がすれば、不審者以外の何者でもない。


 しかもよりによって、男物より女性物のパンツの方が強化具合が上なんだとか。

 当然、玉子焼はミゼルに対して、より強く求パンツの声を上げる。

 妹ラブなパシオンがその暴挙を許すはずがない。


 一日の投獄を課せられて、その間になんとかしないと国外追放だと脅されたらしい。

 あいつも出汁巻も、何やってるんだ。

 なんとか出来ないかと模索した結果、≪音量調節≫のスキルを発見して難を逃れたとのことだった。


「あの時は本気で焦ったっすね」

「国外追放はやり過ぎな気もするけど、王女にパンツを要求するのはまずいですよね」

「ただの変態ですね」

「変態だー!」

「オレは変態じゃないっすよ」


 ミルキーの発言にタマが乗っかる。

 葵は無言で出汁巻から距離を取る。

 出汁巻が否定するが、擁護出来ない。

 女性に対して股間から「パンツ! パンツ寄越せ! だしー!」なんて卑猥な台詞を吐いてる訳だからなぁ。


 それに、本気を出す程に全裸に近づいていく男が何を言ってるんだか。

 最終的に全裸+光る股間だからな。

 あの悍ましい最終形態を忘れたか。


「出汁巻玉子さんは、今日はどうされたんですか?」

「ミゼル様から、今日の夕食はウチでご一緒しませんか、とお誘いを言付かって来たっす」


 ミルキーが出汁巻に用件を聞いた。

 ああ、出汁巻の変態っぷりに意識が飛んでいて、気にしてなかった。

 よく気付いたなぁ。


「なるほど。それってお隣の家で?」

「そうなるっすね」

「大所帯だけど大丈夫かな?」

「是非皆さんで、と言われてたっすよ」


 葵は勿論、モンスターである金剛石華やおろし金、ムッキーマッスルも是非に、ということだった。

 ムッキーのことまで知ってるとは思わなかった。

 どうやら俺の知らないところでミルキーと仲良くやっているらしい。

 良いことだ。


 ミルキーの方に視線を向ける。

 意図を理解したようで、頷いてくれた。


「ではお誘いを有難くお受けします、とお伝えください」

「了解っす。んじゃ19時頃に来てください」

「分かりました」

「あ、出来れば前に出してもらったフルーツを持って来てもらえると嬉しいっす。あれミゼル様が滅茶苦茶気に入ってたんすけど、直接お願いするのも気恥ずかしいらしくてっすね。きちんとお金は払うんで」


 出汁巻が申し訳なさそうにお願いしてきた。

 美味しそうに食べてたもんな。

 この後畑に用事があるし、沢山収穫しておこう。


「それじゃあ採れたてを沢山持っていきますね。いつもお世話になってるので、お金はいりませんよ」

「マジっすか、ありがとうございます」


 それからもうしばらく雑談を交わして、出汁巻は帰って行った。

 さて、俺は村のお店と畑に行くか。



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