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223 闇転移とスキルリスト


「タマ、こっちに向かってるのは何人いる?」

「んー、10人くらい! もうすぐ着くと思うよ!」

「分かった。タマは皆を起こしておいてくれるか?」

「あいあい!」


 十人か。

 多い? 何かあったなら少ない方か?


 タマに皆を起こすようにお願いして、俺は一階へと降りる。

 誰が訪ねてきているか分からないなら、確かめればいい。

 でもその前に、何があってもいいように備えておきたい。


「起こしてきたよ!」

「ふわ……ナガマサさん、どうしたんですか……?」

「んんぅ……」


 いつも元気なタマを先頭に、ミルキーと葵も降りてきた。

 こんな時間に起こしてしまったせいか眠そうだ。

 葵はもはや寝てる。

 朝苦手だもんな。


「こんな時間に何人かがここに向かって来てるらしいんだ。何かが起きたのかもしれない」

「そうなんですか?」

「うん。俺が確かめてくるから、二人はここにいて。もし何かあったら、すぐに逃げてね」

「分かりました」

「……すぅ」


 何が起こっても良いように、二人にスキルをかけておく。

 そうだ、全く使ってなかったあのスキルも使っておこう。

 何かの役に立つかもしれない。


 玄関に向かう。

 扉を開ける。

 この時間の外は真っ暗だ。

 ≪モジャの家≫から零れる灯りしか周囲を照らすものは無い。

 この村に街灯なんて無いし、どの家も既に寝ている時間だからそれが普通だ。


 しかし、謎の発光物が見える。

 光っている筈なのに、その光は何かを照らすことはない。

 不思議な光景だ。


 これはあれだな、隠れてるものを発見している状態だ。

 その発光体は人型に見える。

 ストーレで見たあいつと同じようにPK連中っぽい。


 光る人型は四つ。

 俺が気付いていることに気付いていないのか、迷いの無い足取りで玄関を囲うように配置についている。


 それよりも気になる存在がいる。

 開けっ放しの玄関からの光で、薄らその姿を確認できる。

 数は六人。

 全員がプレイヤー。

 顔も名前も見覚えはない。

 俺が出てくるのを待っていたようだ。


 先頭に立つ男、≪コッカー≫が不敵に笑う。


「やあ、はじめまして」

「初めまして。こんな夜中に何か御用ですか?」

「あの子の持ってる武器が欲しくてね」


 あの子……多分葵のことだろう。

 武器を狙うにしても、何故話しかけてきたのか。

 不意打ちで襲ってくる方がPKらしいのに。


「あの剣は大事なものなので、渡すことは出来ません」

「そっか。でも、あの子にあれは相応しくない。僕なら使いこなせる」

「そういう問題じゃないので。それに、葵ちゃんだって使いこなせるようになりました」

「それを決めるのは貴方じゃないんじゃ?」


 話が噛み合いそうにない。

 他人が大事にしてるものを欲しがる連中にはろくなのが居ないな。

 何と言われたって、葵があの剣を手放したがるとは思えない。


「今は俺が葵の保護者なので。変な訪問販売は断る義務があるんですよ」

「貴方のことは情報が入ってるからね。正面からやり合いたくはないんだ」

「それじゃあ帰ってもらえませんか?」

「しょうがないなぁ。それじゃあ、またね」


 コッカーが笑った。

 次の瞬間、俺の目の前からあいつらの姿は消えていた。

 周囲の景色すら違って見える。


 ……うん?

 違和感が凄い。

 振り返ってみた。

 そこにある筈の、我が家が無い。

 それどころか、真っ暗だ。

 

 ……どこかに転移させられたようだ。

 移動スキルか?

 一瞬見えた光は、ミゼル親衛隊の≪ノーチェ≫が使っていた≪ワープゲート≫の光に似ていた。


 とにかく戻らないといけない。

 何をされたのかは分からないが、ミルキーやタマに同じ手段が通じる可能性が高い。

 ああ、落ち着かないと。

 とりあえずミルキーにメッセージを送ろう。

 間に合うといいんだが。


「――あれ?」

「おー……」


 俺の目の前にミルキーが現れた。

 一歩遅かったらしい。

 あの家にいるのは葵とタマ。

 裏の城には金剛がいるが、おそらく寝ているだろう。


「こ、ここはどこですか!?」

「お、落ち着いてミルキー。タマが向こうにいる内は簡単に手出し出来ない筈だ」

「でも、急がないと葵ちゃんが……!」

「分かってる。すぐに戻ろう」

「はい!」


 まずはワールドマップを開く。

 行ったことのない場所は黒く塗られている。

 ここは村からはかなり離れているようだ。

 

 その点は問題ない。

 俺達は高速で空を走ることが出来る。

 全力で行けば数分で帰れる筈だ。


 その数分の間、葵が無事でいてくれるかどうかが重要だが、タマならそれくらい余裕だろう。


 ミルキーと共に空を全力疾走した。

 マップに従っていくつものエリアを越え、村へと到着した。


 我が家まで戻ってきたが、コッカー達の姿は無い。

 タマが一人立っていた。

 近くまで瞬間移動すると同時に、飛びついてきた。


「モジャマサ! うわーん!」

「タマ! 葵ちゃんは無事か? あいつらは?」

「葵ちゃんが急にいなくなって、二人やっつけたけどあいつらもすぐに消えちゃった! どうしよう!?」

「一先ず落ち着いて。何があった?」


 少し遅かったようだ。

 話を聞くと、俺とミルキーが消えて、あいつらは家の中に入ってきた。

 しかし、タマと葵の姿を見て逃げ出した。


 すかさずタマが追いかけて外へ飛び出し、葵も様子を見る為に外へ出た。

 葵は、俺達のことを心配していたそうだ。


 葵が表へ出た瞬間、どこかへ消えたらしい。

 葵の居た場所に≪ワープゲート≫のようなものが発生していたがすぐに解除され、追う事は出来なかった。

 更に、連中も転移スキルか何かで消えたんだそうだ。


 その状況で二人倒したことは凄いが、葵を助けに行かないといけない。

 タマが倒した奴らは手早く縛って、家の前に転がしておく。

 

「どうしましょう。このままじゃ葵ちゃんが――!」

「大丈夫。俺に任せといて。急いで助けに行こう」


 念の為の保険をかけておいて良かった。

 スキルリストを開く。

 もはや懐かしい、≪挑戦者チャレンジャー≫のスキルリストだ。

 転職してしまうと、それまでの職業スキルの取得に職業レベルアップでもらえるポイントは使用出来ない。

 だが、基本レベル分のポイントは使用出来る。


 スキルツリーに現れていたスキルを取得する。

 よし。葵を助けに行かないと。

 無事でいてくれ――!



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