200 月 朝と出発
本編200部分突破!
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「モジャモジャー、朝だよ!」
「ん……おお、おはよう、タマ」
タマの頭を撫でる。
朝だ。
葵は、お客さん用の部屋に泊まってもらった。
時間は朝6時。
普段なら畑仕事に出掛けるところだ。
だけど、今日はミルキーに任せてくれと言われている。
その代わりに朝一で葵の転職だ。
この村には支部が無いから、ストーレの街へ行かないといけない。
転職は、大きな街の冒険者ギルドで行える。
何か所かあるらしいが、俺はストーレしか知らない。
その内他の大きな街へ遊びに行くのもいいな。
大きな街にはプレイヤーもNPCも関係なく、人が集まる。
露店も多いだろうし、品揃えもストーレとはガラリと変わる可能性が高い。
お金に余裕もあるし、変わった見た目重視の装備を漁りたい。
「タマ、朝ごはん食べたら準備してお出かけだぞ」
「わーい! お出かけ! 朝ごはん食べるぞー!」
一階に下りると、ミルキーが朝食の準備をしてくれていた。
これから畑仕事だから、いつもより早いんだな。
ちょっと申し訳ない。
「おはよう」
「おはよー!」
「おはようございます。今支度出来ますからね」
「今日は畑仕事をしてもらうのに、朝ごはんまでありがとね」
「いえいえ、私が言いだしたことですから。気にしないでください」
ミルキーがパンとスープをテーブルに並べてくれた。
「葵ちゃん起こしてきますね」
「うん」
ミルキーがお客様用の部屋へと向かった。
数分後、まだ意識がはっきりしていない様子の葵の手を引いて戻ってきた。
「おはよう、葵ちゃん」
「おはよー!」
「……はよ……」
「ふふ、朝が弱いみたいですね。あ、先に食べてても良かったんですよ」
「せっかくだから一緒に食べたいなと思って」
「タマも!」
「ありがとうございます。今私達の分も用意しますから!」
「慌てなくていいよ」
葵ちゃんを椅子に座らせたミルキーは、慌てた様子で追加で二人分の用意をする。
急かしてしまったようだ。
重ね重ね申し訳ない……。
でも、どうせなら一緒に食べたい。
その為なら少しくらい待つのは何でもない。
タマも自発的に待ってくれていた。
良い子に育ってくれている。
「キュルル」
「お待たせしました」
「それじゃあ、いただきます」
「いっただっきまーす!!」
「……ます……」
ノソノソと足元に這い出てきたおろし金に筋肉フルーツを与えてる間に、支度が整った。
うん、美味しい。
食事を終えた。
ミルキーはおろし金と金剛石華と一緒に畑仕事へと出掛けていった。
俺達も出掛けないとな。
おろし金はミルキーのお手伝いだから、今日は初めて教会を利用する。
小さいながらも立派な教会があるのはシステム的な理由なんだろうか。
神官の人にお願いして、行先を伝える。
料金を払うだけで転移してくれるのは有難い。
ただ、飛ばされる側が行ったことのある場所しか選べない仕様なのは、何故だろう。
プレイヤーのスキルだと、関係ないらしいのに。
「おわー! すごい!」
「ここ、ストーレ……?」
一瞬の内に景色が変わった。
ここは、教会の前だ。
村のものよりも一段と立派だ。
既にチラホラと露店が出ている大通りを通って、冒険者ギルドへ向かう。
まだ朝早いのに、結構活気がある。
ついつい露店を覗いてしまいたくなるな。
「お兄さんお兄さん、いい笑顔入荷してますよ」
「おはようございます。いつもと同じじゃないですか」
「おはよー!」
声を掛けてきたのは、怪しい笑顔の仮面を被ったプレイヤー。
露出の多い服装に、白く長い髪。
三本の線で描かれたシンプルな笑顔の仮面。
そして紫色のとんがり帽子。
この怪しいプレイヤーは≪純白猫≫。
日々怪しい笑顔の仮面を売り歩く、怪しいプレイヤーだ。
露店に並んでいるのも≪笑顔の仮面≫のみ。
前回は他の物も売ってたのに、また一種類になっている。
「ある程度稼げたので、みんなに許してもらえたんですよ。お蔭で布教活動が捗ります」
「布教出来てるんですか?」
「全く」
「ダメじゃないですか」
奇抜な装備をしてるプレイヤーはちらほら見かけるが、この仮面はあまり見ない。
それこそ、純白猫以外だとタマや俺が偶に装備してる程度だ。
「それじゃあ一つください」
「毎度ありです」
せっかくだし、一つ購入しておく。
それを葵へ差し出す。
「はい、プレゼント」
「いらない」
拒否された。
気に入らなかったらしい。
「タマとお揃いだよ!」
「うぅん……?」
が、タマの貼りついたような笑顔を見て、渋々受け取ってくれた。
いつの間に装備したんだ、タマ。
でも、グッジョブだ。
「そうだ、私も装備を作る練習を始めたので、その内販売開始すると思います。良かったら買ってみて下さい」
「へー、そうなんですね。また覗いてみます」
「お願いしますね。それではまた。スマイルー」
「スマイルー!」
タマと純白猫は謎の別れの挨拶を交わしていた。
その笑顔の仮面を被ったままだと、宗教か秘密結社みたいだ。
俺達は改めて、冒険者ギルドへと向かう。
到着するまでに、簡単に説明しておかないといけない。
それは≪挑戦者≫に転職できる可能性についてだ。
あと、有用性も。
葵のユニークスキルとは相性が良さそうだからな。
知らないまま他に決めるのは勿体無い。
勿論、無理に薦めるつもりはない。
あくまでも説明をするだけで、決めるのは葵自身だ。
説明を聞いた上で剣士系を望むなら、そうした方が絶対に良い。
歩きながら、時には露店で串焼きを買い食いしながら、話をした。
なんとか理解はしてくれたらしい。
後は、まず現時点で転職可能な職業の一覧を見てから決めるらしい。
気に入ったのが無ければ一度中断。
職業スキルを全て≪使用不能状態≫にしてから、再度転職するそうだ。
「冒険者ギルドストーレ支部へようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「この子の転職をしたいのですが」
「転職ですね。それでは、係の者がご案内致します」
ギルドのお姉さんの案内で転職部屋へ向かう。
俺とタマは付き添いということで、同行を許可された。
さて、どんな職業が出てるかな。
 




