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178 ぼったくりとフルーツアイランド


 購入したポーション五本をライリーに渡した。


「おお、早速持ってきてくれたんだね、ありがとう。これできっと島へ運んでもらえるよ。おじいさんに渡してくるから、また後でね」


 ライリーは上機嫌でそう言って、特に動かなかった。

 渡しに行かないのか?


「あの、ライリーさん?」

「おお、冒険者さん。待ってたよ。ポーションでお孫さんの状態が良くなったんだけど、まだ心配らしくて来てくれないんだ」


 話しかけてみると、嬉しそうな表情を浮かべた。

 しかし、すぐに曇ってしまう。

 まるでしばらく経ったかのような反応だ。

 俺達はさっきからずっとここにいるし、ライリーも特に移動してなかった筈なのに。


 よく考えてみると、伊達はこのクエストを終わらせて≪フルーツアイランド≫に行っている筈。

 それなのにライリーはまだ行ったことは無さそうな感じだ。

 これはもしかして、各プレイヤーがクエストを終わらせないといけないパターンか。


 いや、MMOで一度きりのクエストの方が珍しいのか。

 だからライリーやここにいる他のNPCは、クエストを達成したプレイヤーとそうでないプレイヤーで対応が変わるし、移動もしないんだろう。

 

 他のNPCが余りにも人間らしくてつい忘れてたけど、ここはゲームの世界だ。

 そういう仕様のNPCもいるだろう。

 だとしても、もうちょっとなんとかならなかったのかとは思う。

 VRでNPCが特に移動せずに状況が進んでると、手抜きにも感じる。

 違和感が凄いからな。


 まぁ、そこまで深く気にしても仕方がない。

 島に行ければなんでもいいんだ。


「一体どうしたらいいんでしょう?」

「ポーションで体調が回復してるなら、後はご飯だ。栄養満天の料理を食べれば、きっとすぐに元気になる筈さ! 料理は私が作るから、材料を集めてきてくれないかい?」

「分かりました」


 お使いクエストは続く。

 次に要求されたのは、≪薬草≫、≪元気で草≫、≪スタミナスネークの肉≫、≪爆発唐辛子≫の四つだった。

 会話が終わったらすぐに露店へ向かう。

 さっきポーションを買ったのと同じ場所だ。


 やっぱりあったよちくしょう。

 薬草は手持ちがあったから、他の三つを購入する。

 なんて上手い商売だ。


 ま、どうせ伊達にもらった金だ。

 少しくらい多めに払ったって何も痛まない。


「おお、ありがとう。それじゃあこれで最高のスタミナ料理を作ってお孫さんに差し入れてくるよ! また、しばらくしたら来ておくれ」


 会話が終わる。

 ライリーはやはり移動しない。

 テンションの切り替えが早すぎてちょっと怖い。

 この辺りはやっぱりNPCだな。


「すみません」

「おお、冒険者さん! お陰で最高の料理が出来て、お孫さんもばっちり元気になったよ!」

「それは良かったです」

「こっちの準備は出来てるけど、早速島へ行くかい? 往復で一人300cだってさ」


 お使いクエストは終わったようだ。

 もういつでも島へ行けるんだな。

 場所だけ聞いておろし金に乗って飛んでいこうと思ってたのに、結局最後まで終わらせてしまった。


 一応場所を聞き出そうとしてみたが、島は移動する上に姿を隠すから、船乗りのおじいさんしか行く方法が分からないと言われた。

 これは多分、聞き出せないんだろう。


 そもそも勝手に行くのは良くない感じかな。

 おろし金に乗って空から探しても、辿り着けずに時間だけ無駄にしそうだ。

 大人しく送ってもらおう。


「お願いします」

「よし。でもその前に、依頼の話をしてもいいかな?」

「はい」

「私からの依頼は、美味しそうな果物を一種類につき十個頼むよ。何が採れるか分からないからね、種類はどれだけ多くても構わないよ」

「分かりました」

「よし、それじゃあ乗って乗って」


 すぐ近くに泊めてあった船に乗るように促される。

 小型の漁船くらいの大きさで、俺達は甲板に乗る。


「出発じゃー!」

「うおお」

「船乗りのおじいさんみたいですね」

「元気なおじいさんモジャ」

「だな」


 今まで聞いたことの無い老人の声に、ちょっとだけ驚いた。

 船がどんどん沖へ進む。

 エンジンっぽいけど、魔力で動いてるんだろうか。

 少し進むと深い霧へ突入した。


「この辺りはこの霧のせいで、他の島への行き来がしづらいんじゃ。しかし、儂に任せておけば間違いなく≪フルーツアイランド≫へ送ってやるぞい!」


 船は深い霧の中を爆走する。

 しばらく進むと、霧を抜けた。

 そこは島の目の前だった。


 色とりどりの果物を付けた木々が島を覆っているのが見える。

 言葉の通り、フルーツアイランドへ到着したようだ。


 一本の太い木が、根を張ったまま横倒しになっていた。

 まるで桟橋のようだ。

 船は大木の隣へぴたりと付けた。


「丁度良い、ここに船を泊めておくから行ってくると良い。イズハントへ戻りたければ話しかけるんじゃ」

「分かりました。ありがとうございます」

「ありがとう!」

「ありがとうございます」

「キュルル」


 お礼を言って木を渡って島へ上陸する。

 さて、伊達が恐ろしいことを言ってた気がするけど、一体どんなとこなんだろう。

 美味しい果物の苗木とか、種が手に入ると嬉しいな。

 


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