176 新たな行先と港町
「皆さんは今日は何か予定があるんですか?」
「オレはお昼から約束があるね。ゴロウちゃんも何処か行くって言ってなかった?」
「友達と遊ぶ約束してる」
「俺も溜まってる注文を片づけないといけないな」
「そうなんですか」
今日はみんな予定があるようだった。
せっかくだからどこかへ狩りにでも誘ってみようと思ったけど、残念だ。
みんな忙しい中、お祝いに参加してくれたんだろう。
そこは感謝だ。
「ごめんね、また誘ってよ。しばらくは忙しいかもしれないけど」
「何かあったんですか?」
「何かって程じゃないんだけど、今初心者さんの面倒見ててね。独り立ちするまではあまり放っておけないから」
「なるほど」
モグラは時々、この世界に来たばかりのプレイヤーを手助けしている。
この世界は死んだら終わり。
モンスターは勿論、プレイヤーを殺そうとするPKも存在する。
初心者なんかは特に格好の獲物だ。
来たばかりのプレイヤーがすぐに死んでしまうのを防ぐために、モグラのような活動をしているプレイヤーはそれなりにいると聞いた。
すごい立派なことだと思う。
「そういえばナガマサさんもオレが助けたんだっけ。手が掛から無すぎて、もう忘れかけてたよ」
「ありがとうございました。とても助かりました」
「すっごーく助かった! ありがとうモグラ!」
「どういたしまして。タマちゃんも、まだ人型じゃなかったのにちゃんと覚えてるんだね」
「うん!」
俺も、PKに襲われていたところをモグラに助けられた。
しかもそのまま、転職するまで見守っててもらった。
今も助けてもらってばかりだ。
その分はまた別の初心者に返してあげてと以前言われたが、あれからミルキーしか関わっていない。
俺ももっと積極的に初心者さんを手伝うべきだな。
島に行った後は、他のプレイヤーのお手伝いをしてみたい。
しばらく駄弁った後、三人は帰って行った。
今日も神父さん経由で帰るそうだ。
「ミルキー、今日は港町の方に行ってみようと思うんだけど、どう?」
「昨日≪三日月≫のマスターに教えてもらった島ですか?」
「そうそう。果物が欲しいなって。畑に植えてみたくて」
「いいと思います。果物全然食べられてないので、是非植えましょう!」
「フルーツ! タマ、ミックスジュースがいい!」
「よし、ミックスジュースでも果樹園でも、沢山作れるくらい採って来よう!」
行先が決まった。
目指すは港町、そして果物の島!
そうと決まれば準備だ。
とは言っても特にない。
食料もある程度ストレージに仕舞ってあるし。
「頼むぞおろし金」
「キュルル!」
おろし金の背中に乗って飛び立つ。
今日はタマもおろし金の背中に一緒に乗っている。
ミルキーの背中にくっついて、ご満悦だ。
海はストーレの街から見て東の方だったはず。
まずはストーレの方へ飛んでもらう。
そして、ストーレの街をそのまま通り過ぎて東へ向かう。
周囲の草原が少なくなって荒地になっていく。
「あっ、海! 海だよモジャモジャ!」
「ほんとだ、海だ」
「お魚いっぱい採れるといいですね」
更に進むと、海が見えてきた。
タマも大興奮だ。
港町らしきものも、その手前にある。
直接下りるといつかのように騒ぎになるから、手前に下りよう。
俺だっていい加減学習するんだ。
「おろし金、あの辺りで適当に下ろしてくれ」
「キュルル」
港町の1km程手前で地上に下り立った。
おろし金がカナヘビモードへ変化する。
よしよし、ありがとうなおろし金。
「それじゃあ行こう」
「おー!」
「はい」
「キュル!」
三人と一匹で意気揚々と港町へ向かう。
魚介、海鮮、色々言い方はあるが、魚が食べられる!
あんまり食べたことないから色々食べてみたい。
伊達が教えてくれた果物の島も楽しみだけど、とりあえずはお魚料理を楽しみたい。
刺身なんかはあるんだろうか。
港町へ到着した。
≪港町イズハント≫という名前らしい。
見張りはいるが、特に問題なく通過出来た。
中に入ると、白いレンガで道が舗装されている。
建物も白い何かで出来ていてお洒落な雰囲気だ。
プレイヤーもNPCも沢山いて賑わっている。
ストーレに負けず劣らずの露店の数だ。
どうやらこのイズハントは商売が盛んなようだ。
「少し早いけどお昼にしない? お魚料理食べたい」
「いいですね!」
「お魚! タマも食べる!」
「食べようぜ!」
了承ももらって、目的地に海鮮料理が食べられるお店を設定。
お店を探しながら歩く。
道にはたくさんの露店が並んでいるから、ついつい目が行ってしまう。
中には魚を売ってるお店もある。
見たこと無い魚がいっぱいだ。
紫色の魚とかあるけど、これはモンスターなんだろうか。
もしかしたら現実にもいる魚なのかな。
焼いた何かや、スープのようなものを売ってる屋台もある。
いい匂いがする。
ああ、すぐにでも食べたい。
「タマ、ミルキー」
「モジャ」
「はい」
二人は俺の呼びかけに頷く。
意思はきちんと伝わったようだ。
俺も更に頷きを返す。
俺達は一つだ。
「おじさん、この焼き魚四つ!」
「おっちゃん! このスープ五つ!」
「おじさん、この貝の串焼き四つください!」
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