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174 本当の決着

本日一回目の更新です。


 キモい?

 気持ち悪いモンスターってなんだろう。

 虫系か?


 気になって聞いてみたけど、思い出すのも嫌だと拒否された。


「気になるなら自分の眼で確かめてくれ。ただし、自己責任だ」


 と、物凄く嫌そうに言われた。

 そんなに嫌なのに教えてくれたのか。

 申し訳なさと同時に、有難くも思う。


「分かりました。近いうちに行ってみようと思います」

「ああ」

「おい、なんだその態度は。謝りに来たんなら最後までちゃんとしろ」


 以前と変わらずぶっきらぼうな伊達を、†紅の牙†が嗜めた。

 俺は別に気にしないんだけど。

 決闘に勝って賭け金ももらった。

 謝って貰った上に果物の情報までもらったんだから、前と同じ態度でも別に問題ない。


 ただ、†紅の牙†には納得がいかなかったようだ。

 気のせいかもしれないけど、妙に気を遣われてる気がする?

 怯えられてる、の方が正しいか?


「うるせぇ。もう謝っただろ。それに、確かに俺達は負けたが、俺が負けた訳じゃない」

「俺に負けておいて勝てるわけないだろ……」

「お前のスキルが反則的に相性が悪かっただけだ」

「さっき何度も言っただろ、この人は多分、そういう次元じゃないって」

「俺のスキルはチート級だ。お前以外には負けねぇよ。てか、お前が負けたのはお前が初心者の頃で、相棒にだろ? ビビリすぎだっての」


 伊達は頑なに†紅の牙†の言葉を否定する。

 謝ってはくれたものの、心の底ではまだ負けてないと思っていたようだ。

 果たしてこれは、反省してるんだろうか?

 もし一対一なら勝てると思って、また変なちょっかいを出されても困る。


「それなら、改めて決闘しますか?」

「なに?」

「うわ……。なぁ、悪いことは言わない。やめといた方がいいぞ」

「上等だ。紅、お前にも俺の強さを分からせてやる」

「はぁ、俺は止めたからな」


 決闘を提案してみると、伊達は喜んで受け入れた。

 しつこく止める†紅の牙†の鼻を明かしたいようだ。


 乗り気な伊達を見て、†紅の牙†も諦めた。

 見捨てたとも言える。


 決闘の申請を送る。

 ペインフィルターは勿論全カット。

 痛みを与えないと、反省には繋がらないからな。


 俺達の家を馬鹿にした分もお金や情報でチャラにしようと思ったが、反省してないなら話は別だ。

 きっちり清算してもらう。


 ≪モジャの家≫の前に、決闘特有のバトルフィールドが発生する。

 決闘中のプレイヤーはここから出ることが出来ない。

 設定によっては場外負けにすることも可能だ。


 カウントダウンの数字が頭上に現れる。


『3』


「俺の実力を分からせるいい機会だ」


『2』


「他の連中みたいにいくと思うなよ」


『1』


「負けたらちゃんと反省してくださいね」

「負けたらな」


『GO!!』


 カウントダウンが終了した瞬間にスキルを発動する。

 俺に視線を向けていた伊達が、驚いた表情のまま見えなくなった。

 伊達は、直径3m程の球体に包まれていた。


 ドン、といくつもの音を重ねたような音が鳴った。

 球体が空気に溶けるように消えていく。

 HPが1になった伊達が、奇妙な回転をして地面に倒れた。


 俺の頭上に≪WINNER!!≫の文字が躍る。


「ほらな」

「あんた、今、何をした……?」

「魔法を使っただけだけど?」


 †紅の牙†は呆れたように一言呟いた。

 まるでこうなるのを知ってたと、そう言わんばかりの皮肉がこもっている。

 伊達は倒れたまま俺を見上げてくる。

 痛みでうまく喋れないようだ。

 

「魔法? 魔法だと? 詠唱がないのは、そのアホみたいな補正値で納得できる。だが、何故発声せずに発動を? まさか、そんなスキルがあるのか?」

「あるよ」


 つい当たり前になってたけど、声に出さずにスキルを発動させることは本来出来ない。

 それは無詠唱でも変わらないようだ。


 だけど俺達は、ミルキーのユニークスキル≪思念詠唱≫の効果で口に出す必要がない。

 相棒は元々そういう仕様だから、伊達は気付かなかったようだ。

 それであんなに驚いてたんだな。


 ちなみに、さっき使ったのは≪極・弾属性魔法≫で習得した魔法の一つ、≪無天球≫だ。

 効果は指定した相手を3m程の球で覆う。

 すかさず内側の目標目掛けて四十発の無弾が発射される。

 全方位から、同時にだ。


 威力は通常の無弾と同じで、同時発射数が八倍になっている。

 そして球体が覆うのは一瞬だが、発射されて着弾するまでも一瞬。

 その間は物理的に突破することは出来ない仕様という、回避型を殺す為の魔法だ。


 単体相手にはかなり強力な魔法だと思う。

 ディレイがほとんど無いから連打も効くし。

 しかも、ユニークスキルの相乗効果で威力は1000倍だ。


 集団相手には別の魔法もある。

 そっちも強力だから、その内使う機会もあるだろう。


「確かにとんでもないな……。だが、今のは油断しただけだ。もう一度すれば俺が勝つ」

「いいんですか?」

「怖気づいたのか?」

「俺は構わないですよ」

「かかってこい!」

「こりない奴だ……」


 伊達はまだやる気十分だ。

 よし、じゃあ設定を変えよう。

 ギブアップするか制限時間を過ぎるまで終わらない、地獄の決闘だ。


 伊達の動きが止まった。

 承諾を押してくれないと決闘が始まらない。


「怖気づいたんですか?」

「――まさか。上等だ、ぶっ潰してやる」


 カウントダウンが終わった瞬間に伊達を球体が包み込む。

 着弾する音が聞こえる。

 今回は単発ではなく、ドドドドドドドドという連続する音だ。

 重なり過ぎてドオオオオオオオとしか聞こえない。


 時間は三分に設定してあるから、それまでは延々と≪無天球≫を発動し続ける。

 球体は途切れることなく発生しては≪無弾≫を叩き込む。

 今回は全て威力じゃなく、弾数を1000倍してある。


 何故か。

 理由は簡単だ。

 全方位から大量の≪無弾≫に撃たれている伊達は、ダメージを受けた時の衝撃で空中に浮いたまま身動きが取れなくなっているだろう。


 このゲームではダメージを受けると少し動きが硬直する。

 これをヒットストップと呼ぶんだが、伊達はヒットストップでギブアップが出来ない状態になっている。

 というか、そうする為にスキルを途切れさせずに連打している。

 威力じゃなく数を増やしているのも、そういう理由だ。


 痛めつけるのが好きな訳じゃない。

 俺の第二の人生を邪魔する奴はみんな敵だと、そう決めてあるだけだ。

 謝れたんだからそれで大人しくすればいいのに。


 せっかくだから≪マジカルスラッシュ≫や≪無刀両断≫、≪裂空指弾≫も撃ち込んでいく。

 三分後、決着が付いて≪無天球≫を撃つのを止めた。

 すっかりボロボロになった伊達が地面に転がった。


 よし、勝った!



ここで一区切りとなります。

作者のモチベーションにも繋がりますので、もし気に入って頂ければ、最後まで読んでなくても構いませんので、お気軽に感想を残してみて下さい。

評価のボタンは最新話のページにありますので、良ければそちらもお願いします。

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