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169 紅の剣士

本日二回目の更新です


 何故か背後に現れたタマを抱っこして皆の元へ戻る。

 口々に労ってくれるが、俺は何もしていない。

 頑張ったのは皆の方だし、感謝でいっぱいだ。


「あれって、前に私達に絡んできた人じゃないですか?」

「うん、そうみたいだね」


 ミルキーの視線が広場の中央に向く。

 そこでは、伊達正宗と†紅の牙†が向かい合っていた。

 背中を向けてはいるけど、プレイヤーネームが表示されているから間違いない。


「止めとけ、そんなことをすれば徹底的にやり返される。今よりももっと面子を潰されることになるぞ」

「……何だよ、お前は」

「あんたと同じだよ。俺も、あそこにいる男にこっぴどくやられたんだ」


 何かを言い合っているようだけど、観客がざわついてて微妙に聞き取りづらい。

 俺達に関係ないようなら帰ろうかと思うんだけど、ダメかな。


『何やら険悪なムードじゃのう』

「揉め事かなぁ」

「――さっき、三日月のマスターがナガマサさんに攻撃しようとしたんじゃないかな。確かな証拠は無いけど、オレにはそう見えたよ」

「えぇ……」


 あっさり引き下がったと思ったら、不意打ちしようとしてたなんて。

 だから、タマが俺の後ろに来たんだな。

 改めて一騎打ちを申し込んでくるくらいは予想してたけど、そこまで頭に血が上ってるとは思わなかった。


 ということは、†紅の牙†はその不意打ちを止めた?

 恨まれてると思ってたけど、そうじゃないのか?


「邪魔をするならまずはお前からだ!」


 話が進んだのか、伊達が叫んだ。

 興奮していた野次馬達が一斉に黙り込み、静寂が訪れた。


「決闘なら受けてやる、少し頭を冷やせ」


†紅の牙†が何やら操作をする。

 決闘の申し込みをしているんだろう。


「――いいだろう。ただし、設定はこうだ」

「ペインフィルター0%に、賭け金1Mか。小遣いをくれるなんていい奴だな、お前」

「ほざけ」

 

 大勢の目があることで躊躇ったのか、伊達は多少のルール変更の末に申請を受け入れたようだ。

 両者の合意の上で、四角い決闘フィールドが形成されていく。


「紅さーん! 頑張ってください!」

「まったくもう、無茶するわね! そんな奴叩きのめしてやりなさい!」

「が、頑張って……!!」

「静かにしてろ!」


 観客の中から三人の女の子が†紅の牙†へと声援を送る。

 それぞれがタイプは違うけど全員容姿が整っているな。

 性格もバラバラなようで、応援にもそれが現れている。


「――あっ、えっと、すぐに終わらせる!」


 †紅の牙†は面倒臭そうに声を荒げた。

 と思ったら。何かに気付いたように言い直した。

 どうして今俺の方を見たんだろう?


「トップギルド≪三日月≫のマスターであるこの俺に喧嘩を売ったことを、後悔させてやる」

「口だけならなんとでも言えるな」

「舐めた口を……!!」

「来い!」


 戦いが始まった。

 †紅の牙†の武器は、以前と同じ黒剣。

 対する伊達は刀だ。

 二人とも剣士系の職業なんだろうか。


 普通に戦ってる分には、伊達がやや有利か。

 †紅の牙†はミルキーと同じくらいの時期にゲームを始めてたと思う。

 それなのにトップギルドのマスターとそれなりに戦えてる。

 かなり強くなってないか?


「なるほど、そこそこやるようだな」

「あんたもな」

「だが、その程度で俺には勝てん!! 独眼竜の魔眼(ハーフアイズ)!!」

「なっ!? 闇色の火焔剣ダークネスインフェルノ!!」


 伊達が何かのスキルを発動したようだ。

 眼帯をしていない方の眼が怪しく光った。

 †紅の牙†の動きが目に見えて鈍る。

 デバフか?


 咄嗟に放ったであろう反撃のスキルも、伊達の装備の裾に掠めただけで直撃はしていない。

 剣が黒く燃え上がっていたけど直接攻撃系のスキルかな。

 そうだとすると、今のを外したのは痛い。


「はっ、なんだこれは。当たらなくて残念だったな」

「身体が重い? ――何をした?」


 裾に黒い炎が燃え移ってるけど、それ以上燃え広がらないし、ダメージも特にないようだ。

 伊達も少しだけ気にした後、無視することにしたようだ。


「俺の持つユニークスキル≪独眼竜の魔眼≫は、見た相手の全ての最終的な能力値を半分にする! 防御力も攻撃力も、全てだ!」

「なるほど、それでこれだけ動きが鈍いのか。が、それだけだな」

「いいや、それだけじゃない。俺にはまだもう一つ、対人戦に特化したスキルがある」


 能力値半分ってかなり強力なスキルじゃないか?

 観客達もざわついてるし、モグラですら驚いている。


 ミルキーや俺はそこまでだけど。

 だってスキルの威力が10倍とか100倍とか1000倍になってるし。

 相手を半分にするスキルくらいあるだろう。


「へー、そんなに自信があるのか?」

「当然だ。そのスキルの効果は、対象の補正値を俺にコピーする。さっきは驚きのあまり撃ちそうになったが、今は丁度いい!」

「べらべらうるさい奴だ。そんなに言うなら使ってみろよ」

「ふん、お前程度に使う必要は」

立ち上がる者(スタンドアッパー)

「――!?」


 伊達が喋ってる途中で†紅の牙†が切りかかった。

 三日月のメンバーから野次やブーイングが飛んでいるが、戦闘中に喋ってる方が悪いと思う。


 伊達が反応が遅れてギリギリのタイミングで受けたのは、油断していたせいだけじゃない。

 †紅の牙†の動きがよくなっている。

 能力値を半減させられる、前よりもだ。


「俺のこのスキルは全ての数値の減少を無効化する。更に、減っていた分を上乗せさせる。使わないと、負けるぞ?」

「お前っ――!! いいだろう、使ってやる!!」


 伊達は何故かこっちを見た。

 何だ?


「転写!!」


 伊達の眼に怪しい光が灯った。

 なるほど、俺の補正値をコピーしたのか。


「ふははははは! あれだけのステータスを持つ奴だ、他の連中が勝てる筈がない! だが、俺ならば勝てる!」


 どうやら俺の補正値を知っているらしい。

 ステータスを見ることが出来るようなスキルでも持っているかもしれない。


 目や見ることに関するスキルがさっきから多いし、多分そうだな。

 多分、俺のステータスを初めて見たのは決闘の決着が付いてからだろう。


 先に見ておけば、まだ何かが変わったかもしれないのに。

 俺達のことを馬鹿にしてたツケだな。


「さて、お前を倒したら次はあいつだ!」

「無理だな」

「――何だと?」

「お前はもう、俺に負けている」

「何を言って――な、なんだこの炎は!? ぐ、力が抜けて――!」


 裾で燃えていた小さな黒い炎が激しく燃え上がり、伊達の全身を包み込んでしまった。

 一体何が起きたんだ。

 伊達だけじゃなく、周りも皆理解が追いついていない。

 勿論俺もだ。


「その炎は呪いだ」

「呪い、だと?」

「ステータスのプラス補正値を、マイナスへと置き換える。欲張って奪わなきゃ、まだ戦えたかもしれないのにな」

「何だと――!? やめろ、来るな!」

「オーバーエッジ、バーストエッジ、ブラストエッジ」

「くそ、くそっ、なんでこんな奴に……!!」

「反省しろ。そうすればきっと、強くなれる。……俺みたいにな。ヴァリアントスラッシュ」

「ぐがっ!?」


 †紅の牙†の剣が伊達を切り裂いた。

 伊達のHPは呆気なく1になり、勝敗が決した。


 なんだかんだ他の人も酷いスキル持ってるんだな。

 ちょっと安心した。

 勿論、俺のは飛び抜けて酷いけど。



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