表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

173/407

166 タマと出汁巻玉子

本日三回目の更新です。


 タマと対戦相手の竜馬が中央へとやって来る。

 俺達は避けないとな。

 と思ったら、伊達は真っ直ぐこっちを見てくる。

 何か言いたいのか?

 

「いいことを教えてやるよ。俺達は、お前らの選出を知った上で作戦を立てている。流石に詳しいステータスや戦法は分からねぇが、お前らみたいなエンジョイ勢なんかそれだけで十分だ」

「そうなんですか」


 伊達正宗は自慢げに語ってくれた。

 透明になれて、プレイヤーと視界を共有出来る相棒を放って情報収集をしていたそうだ。

 それで、俺達が順番を決める時にもいたのか。

 気付かなかったな。


「邪魔だったけどモジャの言う通り倒さなかったよ! 偉い?」

「そうだな、タマはえらいぞー」

「やったー!」

「チッ」


 タマは気付いていたようだが、俺が今日まで手を出すなと言ったから放置してたんだな。

 少し悪い事をしたかもしれない。

 目いっぱい褒めておこう。


 俺達の反応が気に入らなかったのか、伊達は舌打ちを一つして仲間達の元へ戻っていった。

 俺も戻ろう。


「タマ、頼んだぞ」

「まかしとけ!」


 野次馬が囲う広場の真ん中には、タマと竜馬だけが残される。

 装備はなんというか、普通。

 ただの服にしか見えない気もする。


 相棒が何か分からないくらい目立ったものがない。

 出汁巻玉子のように服が相棒なんだろうか。


「来い、テッカイザー!」


 竜馬が叫ぶと、上空から何かが飛来した。


「とうっ!」


 人型のそれの胸部に、竜馬が吸い込まれていった。

 そして、着地。

 高さ30mはありそうなメカメカしい巨人だった。

 あれは、ロボットか?


「あの相棒は三日月でも特に有名だねー。使い所は少し選ぶけど、その分かなり強いらしいよ」

「なるほど」


 アニメとかでもよくあるし、そういうゲームもある。

 そんな相棒がいるとは思わなかったけど。

 向かい合う姿はすごい絵面だ。

 小柄なタマと巨大ロボットって。


「はじめ!!」

「テッカイビ――」


 進行役の合図と共にロボットが動いた。

 胸を張ったまま、真っ二つに切断された腰から上が向こう側に倒れた。

 何かしようとした次の瞬間に、タマにぶった切られたみたいだ。


「な、なに、何が!?」

「えいっ」

「あっ」


 消滅したロボットの中から竜馬が転がり出てきた。

 状況を把握出来ていないようで、酷く混乱している。


 目の前に移動したタマが軽くチョップして、竜馬のHPは消滅。

 タマの頭上に勝者を意味する文字が躍る。

 痛みは無いからあっさり風味だな。


「…………はっ!? しょ、勝者、タマ!」

「わーい!」

「よーし、よくやったぞタマ!」

「流石ー!」

「タマちゃん最強かわいいー!」


 呆然としていた進行役が、慌てて勝者の名前をコールした。

 タマが飛び跳ねて喜んでいる。

 俺もみんなも、大きな声でタマを褒め称える。

 タマは嬉しそうに笑いながら帰ってきた。


 俺達とは対照的に、三日月は静かだ。

 まだ状況を呑み込めていないのかもしれない。

 野次馬も静まり返っている。


 相棒だけなんて無謀だ、みたいなこともチラホラ聞こえてたしな。

 どうだ、うちのタマは最強なんだぞ。


「だ、第二試合目、ハットリ対出汁巻玉子! 前へ!」

「竜馬殿は不甲斐ないでござる。ここは、拙者が取り返してくるでござるよ」

「お、おう、頼むぞハットリ! お前ならあいつ相手でも勝てるはずだ!」

「承知にござる」


 向こうは盛り上がってきたようだ。

 まだへたり込んでいる竜馬が急いで退かされている。


「それじゃ行って来ます」

「出汁巻さん、頑張って下さい」

「出汁巻玉子、負けることは許しませんよ」

「うす。オレも成長してるんすから、大丈夫すよ」


 ミゼルの気合いのこもった応援を受けて、出汁巻も中央へと立つ。

 三日月から出てきたハットリというプレイヤーは、正に忍者といった格好をしている。

 どんな戦闘スタイルなんだろうか。


「彼は確か、スピードと状態異常、急所攻撃に特化したプレイヤーだったと思うよ。出汁巻さんはバランス型で、単純に硬いし強いってタイプだから相性は悪いかもね」

「なるほど」

「でも彼はああ言ってたし、心配はいらないと思うよ」

「そうですね」


 選出を見られていたこともあって、相性が良いのをぶつけて来たようだ。

 俺達はともかく、出汁巻はどんなスタイルか知られててもおかしくないもんな。

 パンツ一丁で戦うのが知られてるとか、俺だったら恥ずかしくて死ぬかもしれない。


 トッププレイヤー同士の戦いとあってか、観客達の意識も戻ってきたようだ。

 勝敗や展開の予想を話し合っている。

 

 出汁巻玉子はいつか見た騎士鎧に剣と盾。

 こうして見ると普通にかっこいい。

 まさにファンタジー系ゲームの主人公って感じだ。


「はじめ!」


「先手必勝でござる! アーマーストリップ!」

「くっ!!」


 始まった瞬間、出汁巻の着ていた鎧が消滅した。

 インナーだけになってしまっている。

 一瞬自分でそうしたのかと思ったが、反応を見るにそうじゃないようだ。

 これはハットリのスキルの効果らしい。


「あらー、まずいかもしれないね」

「どうしてですか? 出汁巻さんは脱ぐほど強くなるんじゃ」

「気になって詳しく聞いたことがあるんだけど、そのユニークスキルは自分で脱がないと効果が発揮されないらしいんだ。脱がされた場合はノーカウント、強化は無いって」


 モグラの言葉は正しいようで、出汁巻はハットリの動きに翻弄されてしまっている。

 

「ふはは、無様、無様でござる! そこっ!」

「オレはこんなもんじゃないっすよ!」

「避けただと!? くっ!」


 出汁巻はハットリの短剣の突きを身体を捻って躱した。

 そして盾を投げつけて隙を作る。

 その一瞬の間で出汁巻はシャツを脱ぎ捨てた。


「ちっ、これ以上はさせぬでござる!」

「オレはなんとしてでも、脱ぐ!」


 ハットリの怒涛のような攻撃を凌ぎながら、出汁巻はズボンを脱ぎ捨てた。

 どんなセンスしてたらあんな動きが出来るのか。

 自分より素早い相手の攻撃を避けながらズボンを脱ぐとか、意味が分からない。

 今の動きも、かなり気持ち悪かったぞ。


「だしー!!」


 しかし、これで出汁巻はパンツ一丁。

 相棒である黄色いトランクス、玉子焼が解き放たれた。


 その正面には目とクチバシのような口、赤い丸のほっぺたが描かれていた。

 なんだあれ。

 将軍クワガタと戦ってた時はあんなの無かったぞ。

 もしかして自我を得た影響か?


「あれはオカメインコらしいよ。好きなんだってさ」

「オカメインコ……」


 あれが?

 出汁巻は全国のオカメインコに謝れ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めましたので、こちらもよろしくお願いします!
友人に騙されたお陰でラスボスを魅了しちゃいました!~友人に裏切られた後、ラスボス系褐色美少女のお嫁さんとして幸せな日々を過ごす私が【真のラスボス】と呼ばれるまで~
面白いと感じたら、以下のバナーをクリックして頂けるととても有難いです。 その一クリックが書籍化へと繋がります! ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ