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162 畑と王女

※一部修正しました


 時間はまだ朝6時。

 目が覚めてぼーっとしていたら丁度、伊達正宗からのメッセージが届いた。

 内容は決闘について。

 日時と詳細なルールが書かれていた。

 あいつ、意外と早起きなんだな。


 決闘は明日の正午。

 この村の広場でやるそうだ。

 移動が楽だから問題ないな。


 ルールは、簡単に纏めてみる。


 お互いが七人の代表を出して、一対一の個人戦。

 七戦して、その内四勝した方の勝ち。

 

 オーダー表は当日用意しておいて、一人目から順に発表。

 その後決闘を開始する。

 当日の欠員のことを考えて、参加選手以外とであれば交代を認める。


 参加選手はプレイヤーに限る。

 相棒の参加は勿論OKだが、単独での参加は禁止。

 本体のプレイヤーと一緒じゃないと参加は認められない。


 分かりやすく言うと、タマだけで一人には数えられないし、ミルキーと一緒に参加もダメということだ。

 プレイヤーのみということは、おろし金も参加出来ない。


 タマとおろし金にも頑張ってもらおうと思ってたのに、プレイヤーだけとなると厳しい。

 俺達の場合、この人数がネックになりそうだ。

 俺とミルキーで二人しかいないからな。

 一人でも余裕で勝てるだろうから、タマと俺が一緒に戦うのが無駄過ぎる。


 相棒やテイムモンスターだけを参加させるのは、露骨な捨石になるからダメだそうだ。


 『後から言い訳されても面倒だ。勝つ気で来い』


 と、わざわざ添えてある。

 俺達からすれば確実に勝てると思うんだけど、他から見るとそうじゃないのか。

 なんとかお願い出来ないだろうか。

 そうすれば俺、ミルキー、タマ、おろし金で四勝になるのに。


 そもそも、七人という設定がこっちには厳しい。

 ≪七人の勇者≫という昔のアニメか何かが好きだから、と書いてあるが、不戦勝狙いじゃないだろうな?


 まぁ、ルールを全部向こうに任せてしまった以上、仕方ないか。

 好きにしていいとこっちが言ってしまった訳で、このくらいで一方的に反故にするのは俺自身が許せない。

 一応人数が集まらなかったら断る旨と、出来れば5対5くらいにしてほしいと返信しておこう。


 40対40とかだったら絶対に無理だけど、そこまで一方的なルールって訳でもないしな。

 全員対全員と言ってくれれば、逆に楽だったかもしれないんだけど。


 微妙に公正さがあるように感じるから逆にやりづらい。

 いっそ思い切り悪どい感じだったら良かったのに。

 訂正してくれるかどうかは微妙だ。

 大人しく残り五人を確保するしかないか。


 とりあえずこの件はミルキーが起きてきたら話し合おう。


 今は気分転換も兼ねて畑のお手入れに行くか。


「タマ、起きてるか?」

「寝てるモジャ」

「畑行くけど、一緒に行くか?」

「行くー!」

「よし、それじゃ行こう」

「わーい!」


 タマと一緒に畑へ向かう。

 朝も早いのに、畑エリアにはそれなりに人がいた。

 やっぱりみんな早起きだな。


 道の傍らの畑で作業してる人にも挨拶をする。

 こういった村では人間関係が大事だと、昭二に教えてもらったからな。

 最初から結構やらかしてるから今後はしっかり大事にしていきたい。


「おはようございます」

「おはよー!」

「おはようございます。あら、ナガマサ様。奇遇ですわね」

「おあざーっす」

「ミゼル様?」

「ミゼルだー!」


 俺達の挨拶に顔を上げて返してくれたのは、なんとミゼルだった。

 農作業用の服を着て、布の垂れた麦わら帽子まで被っている。

 完全に農家のおばちゃんスタイルだ。

 テレビで見たことがある。

 金髪のお姫様のイメージからは程遠い格好だ。


「俺もいるっすよ」

「出汁巻さんもですか」

「出汁巻! ダシー!」

「ダシー!」

「うわっ」


 一緒にいた人は、出汁巻玉子だった。

 こちらも農家のおじさんスタイル。

 ズボンの向こうからはおじさんの裏声みたいな声が聞こえてきて、思わず距離を取ってしまう。


「ミゼル様、その格好はどうしたんですか?」

「あら、ふふっ、似合いますか? 農業をする際の伝統的な衣装だそうですよ」

「そうですね、とても素敵だと思います」

「ありがとうございます」


 ミゼルはどこか嬉しそうだ。

 似合ってるかどうかと言われると違和感しかないけど、そんな服を着て嬉しそうに作業をする彼女は素敵だと、そう思う。


「この村には視察で来ているのですが、見るだけよりも実際に体験した方が、どういう生活をなさっているのかよく分かるだろうと思いまして」

「なるほど」

「俺は護衛兼お手伝いっす」

「なるほど」


 ミゼルも頑張ってるんだなぁ。

 そうだ、出汁巻もいるなら丁度いい。

 明日の決闘のことを相談してみよう。


「ミゼル様、出汁巻さん、少し相談があるんですが、お時間大丈夫ですか?」

「はい、どういたしました?」

「いいっすよ」


 二人にいきさつを説明した。

 家を欲しがった伊達正宗に家を馬鹿にされて、決闘を受けたこと。

 ルール上、頭数が足りないこと。

 出汁巻に参加してほしいこと。


 簡単に、だけど丁寧に。

 出汁巻はトッププレイヤーの一人だ。

 参加してもらえるとすごく有難い。


 説明を終えると、出汁巻は少し考えてから口を開いた。


「是非力になりたいとこなんすけど、今ミゼル様の護衛でここにいるんで」

「出汁巻玉子さん、そんな連中蹴散らしてしまいなさい」

「喜んで協力するっす」

「ありがとう、すごく助かるよ!」


 即決で承諾してくれた。

 本当に有難い。

 これであと四人だ。


「ナガマサさんには色々とお世話になってますから。絶対に勝ちましょう」

「他にも困ったことがあれば、なんでも相談してくださいませ。出汁巻玉子も好きなだけお使いください」

「ありがとうございます」

「ミゼルありがとう!!」


 二人はさらに励ましまでくれた。

 ミゼルにも出汁巻にも、しっかり恩を返さないと。


「それでは、私達は作業に戻りますわね。御機嫌よう」

「おつかれさまっす」


 二人と別れて畑へ向かう。

 あの畑の持ち主にお願いして手伝わせてもらってるんだそうだ。

 お姫様が突然やってきて手伝いたいなんて言いだして、驚かなかったかな?


 ≪モジャ畑≫へ到着した。

 畑に生えるイカと雑晶が朝焼けでキラキラと輝いて、幻想的な光景だ。

 昨日全部抜いたと思ったのにまたいっぱい生えてる。

 ほんとに雑草みたいだな。


「よし、とりあえずあの結晶を抜いていってくれ」

「はーい! ピンポン玉、おはよー!」


 タマが畑へ飛び込んでいく。

 ピンポン玉にも挨拶をして元気いっぱいだ。


 あのイカもピンポン玉でいいのかな?

 本体がピンポン玉だし、いいんだろう。

 タマの挨拶に足を振って応えているし。


 収穫可能なものは今日はないようだ。

 ハーブ類は茎の部分は植えっぱなしで、葉の部分だけを収穫する。

 何日か経ったらまた収穫出来る仕様らしい。

 現実のハーブはどうなってるのか分からないが、もし違ってもそこはゲームだからそうなってるんだろうな。


 さて、俺も雑晶を抜こう。



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