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152 崩壊と旅立ち

本日四回目の更新です!


 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴ。


 ドロップアイテムも回収したし、戻ろうかと思ったその時だった。

 激しい音と振動が俺達を襲った。

 有り得ないぐらい上昇したステータスのお陰かなんともないけど、これはイベントが進行したのかな。


 俺達の目の前に光る球体が現れた。

 これは≪ダイヤモンドクイーン≫のいる謁見の間と、このエリアとを繋ぐ役割を持っている。

 この空間への転送や、ダイヤモンドクイーンとの会話を可能にしてくれる優れものだ。

 それがここに来たっていうのは、イベントで間違いなさそうだ。


『討伐に成功したようじゃな』

「はい」

『もうすぐその場所は崩壊するであろう。こちらへ呼び戻すが良いか?』


 空間が崩壊する緊急事態なのに聞いてくれるのか。

 これ、多少は待ってくれるんだろうな。

 ドロップアイテムとかを拾う猶予を残してくれてるのかもしれない。

 もしこのまま崩壊して、あのワニと再戦出来ない場合は非難が凄そうだし。


「タマ、ミルキー、やり残したことはないか?」

「もっと心臓狩りたい!」

「大丈夫です!」

「タマ、今回は諦めてくれ」

「モジャー……」


 悲しそうに鳴いてるが、これは仕方ない。

 よっぽど騎士を狩るのが楽しかったんだな。

 またどこかで強敵がわさわさいるダンジョンを探そう。

 納得してくれたようだから撤収だ。


「お願いします」


 タマ二号に話しかけると、景色が切り替わった。

 そこは煌びやかな謁見の間だった。

 玉座にはダイヤモンドクイーンもいる。

 無事に戻って来られたようだ。


『よくやったぞ、冒険者達よ。戦士達の無念を晴らしてくれて、感謝する』


 女王は頭を下げた。

 それに追随するように、部屋にいた≪クリスタルナイト≫達が一斉に跪いた。

 一糸乱れない動きはすごい迫力だ。


「どういたしまして」


 この場面で謙遜するにしても、仕方が分からない。

 素直に受け取っておこう。


『……フッ。さて、では褒美をとらそう。大したものではないかもしれぬが、感謝の気持ちじゃ。受け取るがよいぞ』


 女王の言葉と共に、俺達の頭上に女神のエフェクトが二人ぶわぁっとなる。

 どうやらクエスト完了の経験値で、二人同時にレベルが上がったらしい。

 向かい合わせでがっしり手を繋いで百合ポーズだった。


 ストレージにも何かアイテムが放り込まれているようだ。

 どれどれ。

 取り出してよく見てみる。

 豪華な作りに見える。

 

≪宝石女王の腕輪≫

防具/腕輪 レア度:S- 品質:A+

Def:10 Mdef:10

宝石女王の願いが込められた腕輪。

宝石が散りばめられており、中央部分には一際大きなダイヤモンドが輝く。

最大HP+20%

最大SP+20%

スキルディレイ-20%

斬撃耐性+30%

魔法耐性+30%

無属性攻撃耐性+30%


 なんかすごい性能の腕輪だ。

 ミルキーは豪華な首飾りを眺めている。

 同じような性能なんだろうか。


『異界暴食大海魔を討伐し報告が完了された為、ワールドクエスト≪宝石女王の願い≫が達成されました!』

「あっ」

「えっ」

「モジャ」


 メッセージが流れた。

 これは、おろし金が魔王を倒した時と同じやつだな。

 知らず知らずの内にワールドクエストを達成してしまったらしい。

 多分これは発生前というよりは、実装前のやつな気がするんだよなぁ。


「やりましたね!」

「よく分からないけどやったモジャ!」


 でもミルキーが喜んでるし、いっか。

 色々レアな素材や装備も手に入ったし。

 この腕輪を装備してたら、より一層雑魚に見られなくて済むかな?


『さて、わらわ達は新たな地を求めて旅立つとするのじゃ』

「えっ、そうなんですか?」


 異次元にワニを封印していた力を転用して、三層からイカの足が出てくることはなくなった。

 それならもう、女王達がこの洞窟に籠もる理由ももう無いのだそうだ。


 女王は、イカが地上に出ないよう文字通り身を削って見張ってくれていたらしい。 

 自分達のように、地上がイカに蹂躙されるのを見たくなかったと語ってくれた。


 それなら引っ越しするのも当然なのかもしれない。


『それに、この地は嫌な事を思い出してしまう。悲しみが多すぎるのじゃ』


 という女王の言葉が胸に響いた。

 そして、閃いた。


 それならいっそ、あの村に来ればいいんじゃないか?

 ミルキーの方を見てみる。

 俺の考えが伝わったのか、しっかりと頷いてくれた。

 ありがとう。


「新天地って、どこか決まってるんですか?」

『決まってるわけなかろう。わらわ達はこの地より出たことが無いのじゃ。それでも、大海魔に汚されてしまったこの地よりも良い場所は、きっとどこかに有る筈じゃ』

「それなら、俺達のいる村に来ませんか?」

『なんじゃと?』


 見た目は強そうなドラゴンのおろし金だって受け入れてもらえたんだし、ダイヤモンドクイーンだって大丈夫な筈だ。

 人型だし、良く見たら普通に美人な感じだし。

 

 そもそも扱いってモンスターになるのか?

 人とは違うだけで、人に近い種族なんじゃないのか?

 ファンタジーでは定番のエルフとか、ドワーフみたいに。

 

『申し出は嬉しいが、無理じゃ。わらわ達は人の世では暮らしていけぬ。そう神に定められておるのじゃ』

「神に……」


 やっぱり括りとしてはモンスターなのかもしれない。

 クリスタルナイトとかも普通に戦ったし。

 それでも知性はあるんだから、なんとか出来る筈だ。


『そなたらには、心の底から感謝しておる。今の申し出も、嬉しく思う。神に定められていなければ、頷いておったじゃろうな』

「分かりました。すみません、ちょっと強引かもしれないけど、試させてください」

『何……?』


 うまくいくかは分からないけど、ダメで元々。

 うまくいけば儲けものだ。

 ストレージから≪コイン:ブランク≫を取り出した。

 

『一体何をするつもりじゃ?』

「いいから、これを握ってください」


 手を取って、コインを握らせる。

 女王の手は少しひんやりしていた。

 戸惑いがちにコインを握ってくれた。


 頼む、うまくいってくれ。

 コインを握りしめた手を、その上から握ったまま祈る。


「大丈夫だよ」


 タマがその上に手を重ねて、励ましてくれる。


 俺の祈りが通じたのか、女王の手の中のコインが光を放つ。

 光は広がって、女王の身体を包み込む。

 そして、光が消えて、俺の手の中には一枚のコインが残されていた。



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