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146 心臓狩りと帰宅


 城の中を駆け回って騎士達を狩る。

 ひたすら狩る。

 狩るというよりはもはや収穫に近い。


 タマとミルキーが前を走る。

 騎士を見つけたら、遠距離から攻撃して粉砕する。

 ドロップしたアイテムはわざわざ拾ったりしない。

 近くさえ通れば、走りながら≪強欲(グリード)≫のスキルを使うだけでストレージの中に納められる。

 

 ずっと言ってるけどほんと便利。

 効率よく狩ろうと思ったらこのスキルは手放せない。

 もとは商人系の職業スキルのようだ。

 のんびり楽しく暮らす為なら俺は強欲でいい。


 心臓!

 心臓寄越せ!


 このエリアでは、偶に宝石の騎士以外も混じるようだ。


 結晶体に宝石を散りばめた犬、≪ジュエルハウンド≫。

 細見でかなり軽快に動く。

 壁や天井を走ってきたのにはびっくりした。

 騎士達のペットなんだろうか。


 大きな鏡、≪デモンズミラー≫。

 大海魔の魔力に充てられてモンスター化した鏡らしい。

 動きは遅いけど多分タフ。

 魔法攻撃を跳ね返してきた時は本気で驚いた。

 魔法耐性が100%だから1しか食らわないんだけど、それでも一瞬死ぬかと思った。

 タマの魔法なんて俺達でもやばい気がするからな。


 この鏡はミルキーに任せてみた。

 見た目が思い切り鏡だから、ミルキーの相棒の成長に繋がると思ったわけだ。

 実際倒してみたら相棒に経験値が一気に入ったらしい。

 それからこの鏡は、ミルキーが率先して倒すように決まった。


「今どのくらいですか!?」

「今231個!」


 アイテムは俺が全部拾ってるから≪宝石の心臓≫の個数も俺が一目で分かる。

 ミルキーの問いかけに、ストレージを確認してから返す。

 タマがガリガリ大きな音を立てて騎士を砕いてるから、会話が大声でないと成立しない。


「結構かかりそうですね!」

「そうだな!」

「たのしー!」


 楽しそうで何よりだけどな。

 ボスを呼ぶのに500個必要な心臓は、まだ貯まりそうにない。

 もうそろそろ二時間経つんだけど。

 

 この場所で狩りを始めてから二時間が経過した。

 正確には、一時間の二セット目が終わった。

 基本的にモンスターを狩るのは長くて一時間一セットだと、ミルキーとの間で決めてある。

 一時間経ったら十分程休憩を挟んで、狩りを続行するか帰る。


 命がかかってる以上、集中力を維持するのは大事だ。

 無理してぶっ続けで狩りをしても、ミスに繋がったりといいことはないだろう。

 俺達のモットーは安全第一。

 これに尽きる。

 俺が言いだして、ミルキーに同意をもらった形だ。


 幸いミルキーも、『休むのは寝る時か死ぬ時だけだ! ひゃっはー! 狩りつくせぇ!』みたいな感じじゃなかったから、俺の方針に快く同意してくれた。


 昔ゲームの知り合いでそんなのがいたからな。

 寝落ちするまで休まず狩りしてた。


「全然貯まってないけどどうしようか。今日は一杯狩りしたし、ここまでにしても良いと思うんだけど」

「そうですね。キリもいいですしそうしましょう」

「タマもそれでいいか?」

「おっけー!」

「じゃあ帰ろうか」

「はーい」

「はい」

 

 宝石の心臓は貯まってないが、今日はこれで帰還だ。

 元々の目的はただのお金稼ぎだし無理をする理由もない。

 クエストを受けはしたけど、急ぎでもない。

 また明日、宝石集めのついでに心臓狩りだ。


 ――心臓狩りって字面がよろしくないな。

 まるで悪魔か何かみたいだ。

 殺人鬼とかでもそんな異名がありそうで怖い。


 さっきと同じように入口まで戻り、タマ二号に話しかける。

 選択肢を選べば一瞬で謁見の間だ。

 やっぱりこっちは煌びやかでホッとするな。

 向こうのエリアは辛気臭くていけない。


『よくぞ戻ったな、冒険者達よ』

「今日はこれで帰ります」

『彼奴は倒せずじまいか……』

「心臓を集めるのが時間が掛かりそうでして。明日か明後日には挑みたいと思います」

『うむ、そなたらだけが頼りじゃ。では気を付けて帰るのじゃぞ』


 ≪ダイヤモンドクイーン≫に見送られて謁見の間を後にした。

 少し残念そうだったけど、仕方がない。

 もうちょっと簡単な条件だったら良かったんだけど。

 ドロップ率とドロップ運に左右されるこのクエストの方式だと、かかる時間が人によって誤差が大きい。


 単純に何匹倒せば終わり、じゃないからな。

 どのくらい時間が掛かるかというのもざっくりとしか計算出来ない。

 多分あのまま狩りを続けてても三、四時間はかかりそうだ。


 普通のオンラインゲームだと、ここで狩りをした人達が他にもある程度いて、拾った≪宝石の心臓≫を少し高めの値段でクエストアイテムとして売ってたりするからそれを買えばいい。


 だけど、今は俺達以外いそうにない。

 そもそも≪輝きの大空洞≫の存在自体が知られてるか怪しい。

 この世界に詳しいモグラも出汁巻玉子も知らないみたいだったし。


 仮に知ってたとしても、≪無明の城≫の騎士達のHPはどれも10万を越えるし、他よりタフな≪ルビーナイト≫や≪ダイヤモンドナイト≫は20万近い。

 普通のプレイヤーからすると難易度がかなり高いと思う。


 他から買うのは多分無理だな。

 地道に狩りをして集めるとしよう。


 帰りもおろし金に乗って、我が家まで一直線だ。

 ダンジョンを出たらどっと疲れた感じがしたから背中でゆっくり休ませてもらう。

 タマは元気におろし金と並んで飛んでいる。

 タフ過ぎるな。



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