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138 封印スキルとお隣さん

本日四回目の更新です。


 昭二の持っていたスキルは、俺にはすごく見覚えのあるものだった。

 年相応の肉体になってるのは間違いなくそのスキルのせいだな。


 ≪老化≫の状態異常は、視力の低下、節々の痛み、運動能力・反射神経の低下、手足の震え、腰痛、肩こり等の症状を発生させるらしい。


 なんて嫌な状態異常だ。

 もし受けたとしても短時間で解除されるのが普通だが、このスキルを持っている限り付与され続けるらしい。

 やっぱり封印スキルは恐ろしい。

 でも、もしも俺の知るスキルと同じ系統だとすれば、進化する可能性もある。


「昭二さんのそのスキルが原因だと思います。俺も同じようなスキルを持ってたので」

「なんと、そうじゃったか。しかし取ってしまったもんはしょうがないのう」

「もし俺の予想が正しかったら、何とかなりますよ」

「それは本当かね!」


 落ち込む昭二に解決の可能性、レベルアップと進化のことを伝える。

 目に見えて元気になった。

 せっかくよぼよぼの身体とおさらば出来たと思ったのに、また同じ状況になったら落ち込むだろうな。


 俺の場合は走れないだけで、この世界の方が肉体的にはマシだった。

 現実と同じ状態になるようなスキルだったら流石に取得することは無かったと思う。


「昭二さん、大丈夫ですか?」

「ドラゴンの姿は見えませんが、一体何があったんですか?」

「おお、無事じゃ無事じゃ。今説明するけんな」


 スキルの進化のことを説明していると、ふと二人の男が近づいてきた。

 片方はおじさん。ただの村人みたいな服装だ。


 もう片方は30くらいか?

 入口に立っていた見張りのような簡素な鎧を身に着けて、手には剣と盾を携えて武装している。


 慌てた様子でやって来た二人の他にも、離れた場所にちらほらこっちの様子を窺ってる人達がいる。

 この村の住人達かな。


「なんじゃ、冒険者の方々じゃったか。安心したわ」

「こっちもドラゴンと聞いて死ぬ覚悟してましたよ。敵じゃなくて良かったです」

「どうもすみませんでした」

「すみませんでした」


 やっぱり考えが足りなかった。迷惑を考えるとどうも耳が痛い。


「村の皆には伝えておきますから、大丈夫ですよ。昭二さんも、あまり無茶しないで下さい。野生のドラゴンだったら死んでますよ」

「なぁに、儂の枯れた命で皆が逃げる時間が稼げるなら充分じゃわい」


 昭二はかかか、と笑った。





 昭二や村の住人達と別れて家へと戻った。

 なんか疲れたけど、引っ越しの挨拶をしておかないといけない。

 そういう文化がこの世界でもあるかは謎だが、やって悪い事ではないだろう。


「ちょっと近隣の家に挨拶してくるよ」

「タマも行くー!」

「あ、私も行きます」


 帰ってきたばかりだが三人で家の外へ。

 おろし金は放牧スペースで日向ぼっこしてもらっている。

 粗品は俺が露店で買っておいた塩の瓶詰だ。小さいビンでそれなりの値段だった。

 でもこのくらいの時代設定にありがちな程高価でもなかった。


「ここって昨日家あったっけ?」

「わかんなーい!」

「どうでしょう。あまり覚えていないんですが……無かったような?」


 さっき上から見てた時に見つけた家。俺達の家のすぐ隣にそれは建っていた。

 作りはほぼ同じに見える。放牧スペースはないようだ。

 昨日は無かったと思うが、一日で建つものなんだろうか。

 ゲームだし有り得る? でもなんの為に?


 それでも今建っているのは間違いない。

 挨拶は一応しておくか。

 玄関の扉を軽くノックして声を掛ける。


「ごめんください」

「はーい」


 ドアを開けて出てきたのは、ミゼルだった。

 え? ミゼル? なんでこんなところに?


「あら、ナガマサ様。ようこそいらっしゃいました」

「ミゼルだー!」

「こんにちは、ミゼル様」

「ごきげんよう、タマちゃん。今日もお元気ですわね。ミルキー様もごきげんよう」


 ミゼルは俺に微笑んだ後、タマやミルキーとも挨拶を交わしていく。

 はっ、思わず固まってしまっていた。

 突然すぎて脳がフリーズしてしまったようだ。あーびっくりした。


「こんにちは。ミゼル様、こんなところでどうされたんですか?」

「うふふ、実は私もここへ住むことになりましたの」

「この村へ?」

「ええ、近隣の村や町の状態を視察することも王族の務めですので」

「それじゃあパシオンがしばらくストーレを離れると言っていたのも」

「ええ、お兄様も別の場所へ派遣されたのですわ」


 ストーレの王族が他の村等でしばらく生活するのは昔からある習わしのようだ。

 だけどパシオンはミゼルは城に残ってるかのような口ぶりだったよな。


「この事はパシオンさんは知っておられるんですか?」


 ミルキーが当然のような疑問を口にした。

 とは言っても答えは分かってるだろうから、ただの確認に近いだろう。

 俺も聞きそうになってたし、答えも予想はつく。


「勿論内緒ですわ。お兄様が知れば、必ず反対されますもの」

「間違いないと思います」

「ミルキー様もナガマサ様も、お兄様には内緒にして下さいませ」


 案の定、パシオンは知らないらしい。

 知れば反対しないわけがないからな。物凄くうるさくなるだろう。


 パシオンは城を空けるのは王様の命令だと言ってたけど、ミゼルもか?

 その割には邪魔されたくなかったようにも聞こえた。

 何か目的があるんだろうか。


「そういうわけですので、お隣同士よろしくお願いしますわね」


 ミゼルはいつかのように、にっこりと微笑んだ。

 


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