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137 昭二と封印スキル

本日三回目の更新です。


 考え事をしていると、ミルキーが小走りでやって来た。

 カナヘビモードのおろし金も一緒だ。


「ナガマサさん、大丈夫ですか?」

「キュルル」

「だいじょーぶ!」

「ミルキー。こっちは大丈夫だよ。こちらは宮田昭二さん。こっちは――俺の恋人のミルキーです」

「こ!? ……はじめまして、ミルキーです」

「これはこれはご丁寧に。儂は宮田昭二じゃ、よろしくのう」

「それで、こっちがさっき俺達が乗ってたおろし金。タマのペットです」

「キュルル」

「おおう、こいつがさっきのドラゴンかね。こうしてみると可愛い顔しとるのぉ」

「キュル!」

「そうでしょー!」


 合流したミルキー達を宮田に紹介する。

 俺の恋人発言でミルキーが一瞬動揺した気がする。

 俺もちょっと照れてるんだから我慢して欲しい。

 恋人で合ってるよね? 否定はされなかったし合ってるはずだ。


 宮田はおろし金の顔をまじまじ見ている。

 さっきのドラゴンモードの姿でも愛嬌のある顔をしてるんだけどな。

 少し距離があったから、よく見えなかったんだろう。


 カナヘビモードのおろし金を撫でて嬉しそうにしている。

 おろし金も嬉しそうだし、タマも誇らしげだ。


 宮田の周囲を飛んでいたセキセイインコがおろし金の頭に止まった。

 首を傾げるおろし金の上で、セキセイインコも首を傾げている。

 和む絵面だ。


「おお?」

「タゴ!」

「おお! 喋った!」


 タマがおろし金の正面に立った。

 セキセイインコと目線を合わせて、タマも首を傾げている。

 セキセイインコが突然喋り出して、タマが楽しそうな声をあげている。平和だ。


「そいつは儂の相棒の田吾作じゃ。仲良くしてやってくれい」

「田吾作! おいでおいで」

「タゴ」

「ひひひひひひ、くすぐったいよ田吾作ー!」


 タマが手を差し出すと、田吾作はぴょんと可愛く跳び乗った。

 そのまま足元にあるタマの指をガジガジガジガジ――。

 タマはくすぐったがって身を捩ってるけど、あれ本気で噛んでないか?


「田吾作は人の指を抉るのが好きなんじゃが……痛くないんか。タマちゃんは強いんじゃのう」

「そんな危険なものを放たないでください」

「緊急事態かと思ったんじゃよ」


 宮田はスタート地点がこの村だったらしい。

 ここを拠点にしているプレイヤーもいたから、色々教わって独り立ちした後は、この村でのんびり暮らしていたそうだ。

 この村のNPCは平均年齢がかなり高いみたいだけど、NPCを合わせても宮田は村の中で最年長らしい。


 突然上空からドラゴンが現れたらびっくりもするよな。

 本当に申し訳ない。


「ナガマサさんらは引っ越してきたんじゃろう? 何もない村じゃが暮らしやすいとこじゃ。困ったことがあれば何でも相談してくだされ」

「はい、ありがとうございます。宮田さんも何かあったら言ってください」

「そうさせてもらうよ。あと、昭二で良いからの」

「はい、昭二さん」

「しょうじー!」

「タマちゃんは元気じゃのう」

「わー!」


 昭二は良い人そうだ。タマに対しても優しい。

 タマは頭を撫でられて喜んでいる。

 だけど現実のおじいさんのように体が衰えている風なのが気になる。


 この世界にいるプレイヤーは全員脳だけになっている。

 ゲームの世界に肉体は必要ないから、実験に参加すると決めた時に肉体を捨てる覚悟をしてる筈だ。


 それなのに、昭二のように背中が曲がっていたり、手足が震えてるのは何故なのか。

 もしかしたら不便な部分まで再現する仕様なのかもしれないが、俺は現実世界そのままじゃない。

 それが違和感を感じさせてくる。


「すみません、少しお聞きしたいんですけどいいですか?」

「ええよ。何を聞きたいんじゃ?」

「ええっと、この世界でも足腰って弱ってたりするんですか?」


 この世界で、現実世界でのことを話すことは出来ない。

 研究所とそういう契約になってるからだ。

 理由は分からないが、それを守らないと参加出来ないとなれば拒否する理由はなかった。


 聞いた話では、言おうとしてもフィルターが掛けられていて言葉に出来ないようになっているし、絵や字にすることも制限されている。

 特に困ることはないし、現実でのことを考える機会が減って第二の人生を楽しむのに集中出来る気がする。


 だから聞き方を少し考えたが、特に引っかからなかったようだ。


「そうじゃのう……。こっちへ来てからは元気だったんじゃよ。見た目は変わらんかったが、まるで若い頃に戻ったようじゃった」

「そうなんですか。じゃあどうして今はそんな感じに……」

「なんじゃったかのう。スキルを取った時から急に体が重くなったんじゃよ。節々も痛むし、特に腰が痛くてかなわん」


 スキルを取った時から?

 もしかして、俺みたいに変なユニークスキルを取ったんじゃないだろうか。


 俺の場合は≪封印の左腕≫≪封印の右腕≫≪封印の左脚≫≪封印の右脚≫、という封印シリーズ。

 効果はスキルが使えなくなったり走れなくなったり。

 ただの縛りプレイスキルだった。


 レベルが最大になった時に≪解放の~~≫というスキルに進化してとんでもないことになったけど。

 変な意地で全部取得して良かったと思う。


「そのスキルの名前と効果、良かったら教えてもらってもいいですか?」

「なんじゃったかな。ええっと……」


 昭二さんが教えてくれたスキルの名前は≪封印の肉体≫。

 効果は、能力値を含む全てのステータスを十分の一にする上に、≪老化≫状態にする。

 うん、なんかすごく見覚えがある感じだ。



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