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136 旅立ちと赴任

本日二回目の更新です。


 朝になった。ここでの朝ごはんともしばしの別れだな。

 それを分かってるからかタマの食べる量がいつもより多い。

 そしておばちゃんが盛ってくれる量もいつもより多い。

 しっかりお金を払っておかわりしておこう。


 お腹いっぱい食べた後、おばちゃんと宿に別れを告げて、ミルキーとの待ち合わせ場所へ向けて出発した。


「おはよう」

「おっはよー!」

「おはようございます」


 いつもの噴水広場でミルキーと合流。

 まずはバーリルへ向かう。

 必要かどうかは分からないが、向こうへ着いたら引っ越しの挨拶とかをしたいな。


 お金もかなり少なくなってしまったから一度狩りに行くのもいいかもしれない。

 ≪輝きの大空洞≫で狩りをすればすぐに稼げるはずだ。

 よし、落ち着いたらそうしよう。


 今日はおろし金で移動することにして、まずは城へ向かう。

 街中じゃなくてもフィールドから飛んでいけばいいとも思ったが、初心者達が大勢いて驚かせてしまうだろうとミルキーに却下された。

 仕方ないので今後も大人しくお城を利用させてもらう予定だ。


 城へ入ると、パシオンに遭遇した。

 やっぱりこっちの動きを把握してるんじゃないだろうな?


「「おはようございます」」

「おはよー!」

「うむ、おはよう。今日はこれからバーリルか?」

「そうですね」

「そうか。しかし丁度良かった、少し頼みを聞いてくれぬか?」


 今日はどことなく機嫌が悪そうだ。

 というよりも浮かない顔をしていると言った方がいいだろうか。

 その頼みとやらに関係してるのかもしれない。

 俺に出来る範囲のことならいんだけど。


「出来る範囲でなら」

「貴様なら問題はないはずだ。実は父上の命で、しばらくこの地を離れることになった」

「そうなんですか」

「うむ。しかしミゼルを残していくのは心配だ。護衛に騎士団の精鋭をつけるとはいえ、先日のように何が起こるか分からん。だから出来るだけで良い、ミゼルのことを気にかけておいて欲しいのだ」


 そういえばパシオンは王子だった。

 普段うろうろしてるから忘れてたが、外交とか社交とか色々忙しいんだろう。

 妹ラブなこいつがミゼルの心配をするのは分かる。

 むしろ雇うから四六時中護衛しろ、と言われないのが意外なくらいだ。


「ただし、この機会に距離を縮めようなどとは考えるなよ。何が起こっても良いように適度な距離を保ちつつ、有事の際には一番に駆けつけてミゼルを救え。父上は二の次で良いからな」


 ただ俺に近くにいて欲しくないだけだったらしい。無茶苦茶言ってる。

 多分王様が俺とミゼルを結婚させようとしたことをまだ警戒してるな。

 それなら俺に頼まなかったらいいのに。


「ミルキーよ、私がいなくてミゼルが寂しがるだろうから、話し相手になってやってくれ」

「あ、はい」


 ミルキーもパシオンにしっかりお願いされていた。

 俺と違って変な警戒しなくて良いからな。

 でもミゼルはパシオンがいなくて寂しがるだろうか。

 むしろ清々するような気がする。わざわざ言う必要もないしそっとしておくけど。


 これから出発するらしいパシオンと別れて、訓練場から飛び立った。

 おろし金は相変わらずの人気で騎士達に囲まれていた。

 その中には王様もいた。

 おろし金的には高級なお肉をくれるからか、王様は嫌いではないようだ。


 短時間の空の旅を楽しんで、バーリルへと到着した。

 どこに降りるか考えてなかったな。

 俺達の家の放牧スペースに直接でいいか。


「おろし金、あっちに頼む」

「キュルル!」


 俺の雑な指示でもおろし金にはしっかり伝わったようだ。

 放牧スペースの真上に到着した。

 なんか俺達の家のすぐ隣に建物が増えてないか?


 おろし金が羽ばたきながら徐々に高度を落としていると、下から何かが飛んできた。

 それは槍だった。

 おろし金の足に当たったがダメージは1。何が攻撃してきたんだ。


「ちょっと見てくる」

「タマもー!」

「あっ、はい」


 攻撃が放たれた方向に向かって飛び降りると、一人の老人が警戒態勢で槍を構えて立っていた。

 プレイヤーで、名前は≪宮田昭二みやたしょうじ≫。


 見た目が90くらいのおじいさんで背筋も曲がってて手足も震えてるんだけど、この人もプレイヤー!?

 傍らには緑と黄色のセキセイインコが一羽、飛び回っている。


「あんたら、一体何者じゃ!? あの化けもんとどういう関係か白状せい!」

「あ、はじめまして。俺はナガマサと言いまして、プレイヤーです。こっちはタマ。俺の相棒パートナーです」

「よろしく!」

「ほほう?」

「この村に危害を加えるつもりはないので、落ち着いてください。あのドラゴンはタマのペットのおろし金です。実はつい昨日あの家に引っ越してきまして」

「なんじゃ、そうだったんか。そりゃすまんかったのう」


 自己紹介をした上で簡単に説明をすると、槍を下ろしてくれた。

 かなり警戒してたみたいだけど話を聞いてくれる人で良かった。

 よくよく考えるとおろし金は強そうなドラゴンって感じの見た目だから、いきなり飛んできたらびっくりするか。


 おろし金が放牧場に降りて姿が見えなくなる。

 多分カナヘビモードになったんだろう。ミルキー達もすぐにこっちへ来る筈だ。


「儂の名前は宮田昭二じゃ。今の時間この村に戦えるもんはほとんどおらんから、せめて時間稼ぎだけでもと思って攻撃してしもうた。ほんにすまんかった」

「いえ、急に飛んできた俺達も悪かったので。どうもすみません」

「ごめんなさい」

「気にせんでええよ。村の皆には儂から話しとくけんな」


 宮田はそれはもう見事なおじいさんだ。

 顔も手もシワシワで背中も曲がっていて足腰も相当弱ってそう。

 よく槍を投げられたな。


 喋る声も掠れているし、滑舌も良くないようですごく聞き取りにくい。

 お年寄りの体調をここまで再現するものなのか?

 もしそうなら、俺もこの世界をこんなに楽しめてないはずなんだけど。

 


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