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131 策略と提案

本日一回目の更新です。


 ガタゴトと馬車が揺れる。

 馬車の中には俺、タマ、ミルキー、ミゼル、出汁巻玉子が乗っている。


 見た目よりもかなり広く感じるのはゲームだからなのか、この馬車が特別なのかわからない。

 多分前者だな。

 他の建物とかもそんな感じだし。


「ミルキー様、先日お兄様を撃――論破していただいたそうで、ありがとうございました」

「ど、どういたしまして。余計なお世話だったかもしれないと思っていたんですけど、ご迷惑じゃなかったですか?」

「そんなことありませんわ。お兄様は私が結婚をすることに反対らしく、このままでは結婚の話が出る度にお相手の方を攻め滅ぼす為に出陣しかねなかったので、とても有難く思っています」


 ミルキーはミゼルの結婚話で大騒ぎするパシオンと、バトルを繰り広げた。

 あくまで口だけだけど。

 本人はミゼルのことを想ってと言っていたし、それは本心なんだろうけど、あまりにもうるさいし勢いがすごい。

 実際ミゼル本人もうんざりしていたようだ。


 あのままだと王様やミゼルが俺との結婚を提案した時に、ミゼル親衛隊を引き連れたパシオンと一大決戦を繰り広げないといけないところだった。

 あの騎士団の人達とは結構打ち解けたと思うし戦いたくない。


 出汁巻玉子もそうだ。

 あんな光る猥褻物とは戦いたくない。


「でも、ミゼル様が結婚したい相手を連れてきたら認められるか試す、というところまでが私には限界でした」

「それだけで十分ですわ。私が結婚したいと思う方なら政略結婚であろうと、お兄様の基準なんて簡単に蹴散らしてくださる筈です」

「ふふっ、そうですね」


 ミルキーが申し訳なさそうに言うと、ミゼルは微笑んだ。

 何かちょっと物騒なこと言ってる。

 しかも、意味ありげにこっちに笑顔を向けてきている。


 釣られてミルキーも俺の方をチラ見した後、同意した。

 恥ずかしいのでやめてください。


 女性二人が仲良く話をしてる内に馬車が止まった。

 そんなに時間経ってないけどもう着いたのか?

 御者が開けてくれた入口から外へ出ると、そこは城の門の内側だった。あれ?


「もしかして、城の内側に拠点を……?」

「ミゼルと一緒!? ミゼルと住むの!?」

「ミゼル様ったら大胆……」


 俺は困惑した。

 拠点探しで城に連れてこられたってことは、城にその物件があるのかな。

 もしかして、城内の一室を間借りする形なんだろうか。


 そうだとすると、俺を近くに起きたがっていたパシオン以上の発想ということになる。

 多分パシオンは、身内以外がミゼルの住む城に留まることを嫌がるだろうし、それは提案しないだろうからな。


 タマはミゼルのことも気に入ってるようで、すっかりはしゃいでいる。

 ミルキーは口に手を当てて何か呟いている。

 こっちもなんとなく嬉しそうな? 楽しそうな顔をしている。


「ふふ、そうではありませんわ。それも素敵だとは思いますが、お兄様の干渉が酷いことになりますわよ?」

「それは嫌だなぁ」

「やだー!」

「嫌ですね」

「ですよねー。んじゃ案内するんで、付いてきてください。こっちっす」


 ミゼルの言う通り、城内に住めばパシオンが常時貼りつきそうだ。

 今でも城内を通る時はほぼいるしな。

 あれももしかしたら、俺が不用意にミゼルと接触しないようにという意図だったのかもしれない。


 出汁巻の案内で到着したのは、何の変哲もない部屋だった。

 俺からしたら豪勢で広い部屋だけど、城という基準で考えたら普通の部屋だと思う。


 そこには一人の女性騎士がいた。

 前に≪将軍クワガタ≫を狩りに行った時に見かけた気がする。


「こっちはミゼル親衛隊の一人で、ノーチェっす」

「ナガマサ様とタマちゃんはご無沙汰しております。ミルキー様、初めまして。神官騎士のノーチェです」

「あ、えっと、お久しぶり?」

「ひさしぶりー!」

「はじめまして、ミルキーです」


 出汁巻が紹介してくれたノーチェは神官騎士。

 神官だけど騎士のスキルも使えるというそのまんまの職業だ。


 一応後衛になるからか、話した記憶がほとんどない。

 突然騎士の人を紹介されてまたも困惑してしまう。

 一体何が始まるんだ。


「出汁巻さん、物件を見に行くんじゃなかったんですか?」

「そうっすよ。それじゃあノーチェ、頼む」

「はい。ワープゲート!」

「これは神官が使える移動系のスキルっす。先に行きますね」


 ノーチェがスキルを使用したらしい。

 俺達の前の床に直径3mくらいの光る円が現れて、その内部から光が溢れている。

 高さ1m程の、光る円柱だ。


 その中へ出汁巻が入ると、その姿がすうっと消えた。

 移動系のスキルというのは本当らしい。

 安全を証明する為に出汁巻が一番に入ったんだな。


「それじゃあ俺達も」

「いこー!」

「あっ、待っ」

「ふふっ」

「あらあら」


 俺が言い終わる前に、タマが俺の腕を掴んで円の中へ飛び込んだ。

 景色が変わる寸前にミルキーの笑う声と、ミゼルの楽しそうな笑顔がそこにあった気がした。


 ふと気が付くと、さっきまでとは全然別の場所にいた。

 先に移動した出汁巻も少し離れた場所に立っている。

 俺達がいたのは城内の一室だったが、今は室内ですらない、のどかな村のような場所だ。


 ここはどこだろう。



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