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127 事故と検証


「ぶい!」

「タマ、ミルキー、ナイス!」


 ≪古代異界烏賊の足≫を切り裂いたタマが、ピースサインを向けて誇らしげに笑った。

 事態が呑み込めてないけど良い判断だったのは間違いないはずだ。

 えらいぞタマ。


「すみません、油断してしまってました……!」

「それは俺もだよ。二人とも、大丈夫ですか!?」


 ミルキーが謝罪しているが、今のを責めることは出来ない。

 ギリギリとはいえフォローは間に合っていたし、これまで余裕そうだったんだからな。

 俺もすっかり油断してた。

 むしろ俺が一番悪い。


 まずは何が起きたのかを、しっかり把握する必要がある。

 同じ事が二度と起きないようにしないとだ。


「うわー、今のは危なかったね。あ、皆のお陰で二人とも生きてるよ、大丈夫」

「ガチで死ぬかと思った」

「もう三度目じゃないゴロウちゃん? 間が悪いっていうのは伊達じゃないね」

「任せとけ」

「そんなこと任せたくないね」

「無事だったなら良かったです」


 二人とも生きてるが、HPが少し減っている。

 慌てて掛け直した≪誇りの献身≫は微妙に間に合わなかったようだ。

 ゴロウに攻撃が当たる寸前にモグラが庇おうとしてるのは見えたから、二人共に掠ったんだろう。

 モグラの言う通り本当に危なかった。


「今何が起きたのか分かりますか?」

「まだ時間は残ってたはずなのに支援が切れちゃってさ、急だったから身体がすごく重くなったように感じて、びっくりしちゃったんだよね」

「俺も俺も」

「支援が? ……同じタイミングで掛けた俺のはまだ残ってます」

「私のもまだありますよ」


 ≪誇りの献身≫で繋がっていた二本の紐も、時間になっていないのに消えていた。

 一体どういうことだ?


「あー、多分さっきのは≪ディスペル≫だね」

「ディスペル? それは何ですか?」


 ≪ディスペル≫とは、無属性魔法の一つ。

 効果は対象に掛かっているバフ、つまり支援効果を打ち消すというもの。

 その魔法でモグラ達にかかっていた支援効果や、繋がっていた光る紐が消えてしまったんだろう。

 と、モグラが教えてくれた。

 今までそんなものを使われる前に倒してたせいで知らなかった。


 詳しく知らないのに危険なモンスターのいる場所に連れてきて、死ななかったのは偶々だ。

 もっと詳しく調べておくべきだった。


「すみません、よく知らないのに連れてきて危険な目に……」

「大丈夫大丈夫、ちゃんと生きてるんだからさ。ナガマサさん達に頼り切りのオレらが何か言える立場でもないし。今度からはオレ達も気を付けるよ」

「マジこえー。モグラさんもナガマサさんもタマちゃんもミルキーさんも皆ありがとう。次は大丈夫、なはず」

「――ありがとうございます」

 

 モグラもゴロウも、俺を責めることはなかった。

 今度誰かを狩りに連れていく時は、そこのモンスターのスキルや行動をしっかり調べてからにしよう。


「じゃあさっそく実験をしたいと思うんですが、付き合ってもらえますか?」

「おっ、切り替えが早くていいね。オレに手伝えることなら協力するよ」

「俺も俺も」


 この狩り場で安全なラインを見極める為の実験を始めた。

 内容は難しくはない。

 モグラとゴロウがどこまで耐えられるか、それを調べるだけだ。


 まずは≪古代異界烏賊の足≫だけを連れてくる。

 そして紐を繋げたモグラを立たせて、無防備に一撃受けさせる。


「うっ、いくらダメージを受けないにしても、無防備で受けるっていうのはなかなkぐぶふっ!」


 今のダメージが無防備に受けた状態。これがHPを上回っていたら死ぬわけだが、モグラのHPの7割くらいってところだな。

 それを何度か繰り返す。

 ダメージは幅があるから、7割が最下点の可能性もあるからだ。

 多くても8割ってところかな。


 次は防御したり、受け流した時のダメージを計る。

 が、モグラは無防備に攻撃を受け続けたせいで死にかけている。


 HPは全快だ。


 どうやら、痛みと衝撃で身体が動かせないようだ。

 一旦休んでもらってゴロウの無防備ダメージの計測を先にしよう。


 首を振りながら後ずさるゴロウを、タマが捕まえた。


「いや、俺はいいあっ、タマちゃん待って、捕まえないで! あっタマちゃんの柔らかな指がっ、ああっ、ゲソが、ゲソがべらっ!?」


 そのまま器用に両手両足を拘束して動けなくしたタマは、ゴロウで攻撃を受け止めていた。

 苛めてるように見えるかもしれないが、これも二人を危険に晒さない為だ。

 二人も快く協力してくれたわけだしな。


 ダメージを計測してる間の他の敵は、ミルキーとおろし金に始末してもらっている。

 もしさっきのディスペルを発動されても問題はない。

 あの魔法は使用する時に予備動作と詠唱時間があるし、放ってから攻撃に移るまでは一瞬タイムラグがある。

 注意して構えていれば、支援効果を掻き消された瞬間に掛け直せる。


 ゴロウのHPに対して、ダメージは低くても9割強、大体10割越えてしまっていた。

 やっぱりさっきの一撃が直撃したら死んでたかもしれないな。

 この計測はゴロウは特に念を入れてやっておこう。


 その後も防御や受け流した時のダメージ、受ける部位による違い、魔法攻撃を受ける等思いつくだけの計測を実施した。

 後は紐以外の支援をかけない状態でも足と戦ってもらった。

 ≪速度上昇≫がない状態でどの程度相手になるかの実験だ。


 結果として、回避率は激減。

 まともに戦える相手じゃないことが分かった。

 それでも、支援が切れたことに動揺せずに回避に専念していれば、ある程度は持つことも把握出来た。


 有意義な時間だった。

 計測と実験が終わる頃には、二人共が精根尽きたような顔をしていた。

 HPは満タンなのになぁ。



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