121 笑顔筋肉と装備強化
本日二回目の更新です
今日の露店巡りは終了した。
充実した一日だったな。
変なやつらに絡まれたり、ミゼルに謝罪しに行ったりと、濃い一日でもあったけど。
「こんにちは」
「どうも」
「こんにちまっする!」
「お、いらっしゃい。こんにちマッスル! ……どうした、みんな揃ってその貼りついたような笑顔は。イメチェンか?」
ついでだからということで、マッスル☆タケダの露店へやってきた。
大通りからは外れているが人通りはそこそこある。
タケダはいつも通りタマと謎の挨拶を交わした後、≪笑顔の仮面≫を被った俺達三人を見て微妙な顔をしている。
「せっかく露店で買ったので笑顔を振りまこうかと思いまして」
「スマイルー!」
「笑顔というよりは狂気を振りまいてる感じだな」
「俺もそう思います」
「もう、それならやめましょうよ」
「面白いかなとも思ったから」
揃って仮面をつけてる理由を話したら、ばっさりと切り捨てられた。
俺もそう思うけど。
つけて歩くのを恥ずかしがってたミルキーにたしなめられたが、笑ってるから大丈夫かな。
「タマちゃんみたいに動いてりゃまだコミカルな感じなんだけどな。無言で突っ立ってると不気味さが勝る」
「……」
「やめろやめろ。無言でこっちを見るんじゃない」
試しに動きを止めて、タケダを見つめてみた。
タマもミルキーも俺と同じように無言でタケダを見つめている。
すぐに、視線を振り払うように手を振りながら嫌そうな顔をされた。
「そんなに嫌がると純白猫さんが泣きますよ」
「誰だそれは」
「この仮面を売ってた人です。本人も被ってたから、気に入ってるみたいでしたよ」
「よくあるデザインで確かに笑顔なんだが、どうしてこんなに不気味なんだろうな」
「タケダさんにも買ってありますよ。どうぞ」
「俺の分まであるのかよ。……せっかく買ってくれたのを無駄にするのも悪いしな」
新しく笑顔の仮面を取り出して差し出してみると、タケダは微妙な表情のまま受け取った。
しかし次の瞬間、タケダの顔面は笑顔になった。
ムキムキのノースリーブのおじさんが、顔が隠れる丸い仮面を被っている。
この絵面は恐怖でしかない。
子供が見たら泣くぞ。
なんとなく人通りが減った気がする。
「ミルキー、怪しい筋肉がいるから通報しよう」
「寄越してきたのはあんただろうが」
「すみません、冗談です」
「まったく……。で、今日はどうしたんだ? 装備なら出来てるぜ」
仮面を外しているとタケダに目的を聞かれた。
雑談も良いが、それが目的じゃないからな。
今日は昨日追加で依頼した装備の受け取りと、すっかり忘れてた用件を消化しに来た。
タマとミルキー、タケダも笑顔の仮面を外してストレージに仕舞ったようだ。
「まず一つ目なんですけど、この剣を強化して欲しいです」
「んん? 俺が売った剣のようだが、随分ボロボロだな」
「特殊なコインをセットしたらそうなりまして」
取り出してタケダに見せたのは≪エボリュートソード☆≫。
タケダから買った≪ショートソード≫に、タマが作ったコインをセットしたら変化した武器だ。
強化してなくても普通に強いし、ステータスが異常に高いせいで強化するのをすっかり忘れていた。
「なるほどな。素材はどうする? 見た感じ、武器に使えそうな素材ならなんでも使えそうなんだが」
「素材はこれでお願いします」
≪古代異界烏賊の牙≫をタケダに差し出す。
昨日余りにも緑の宝石が出ないから、≪古代異界烏賊≫に八つ当たりした時に拾ったものだ。
他にも皮や殻も拾っている。
「よし、分かった。それじゃあ預かっとくぞ」
「あ、あと同じように鎧もお願いしていいですか?」
「おう、構わないぞ」
「ちょっと待っててくださいね。タマ、コイン出せるか?」
「あいあい! んー! はいっ!」
「ありがとう」
ちょっと思いついてしまった。
タマのコインをセットしたら、タケダから買った剣が一気に強くなった上にどこまでも強化が出来るようになった。
それなら、この鎧でも同じことが出来る筈だ。
初めて作った防具だから代えたくないし、どんどん強化していこう。
そうすれば弱そうに見えなくて、ミルキーが変に絡まれる口実にならないだろう。
一旦皮鎧の装備を解除してストレージから取り出す。
タマから受け取ったコインをセット。
≪エボリュートオオカナヘビの皮鎧☆≫
防具/鎧 レア度:A 品質:E
Def:130 Mdef:62
コインの持つ魔力によって変質した皮鎧。
際限なく強化と進化を遂げていくと恐れられる魔鎧でもある。
産まれたばかりで品質が低いが、素材を合成していくほど品質が上がっていく。
スキル:≪捕食進化≫
出来た。これをタケダに預けて更に強化だ。
素材として≪古代異界烏賊の皮≫と≪古の結晶殻≫も一緒に渡す。
狩ってて良かった≪古代異界烏賊≫。
ついでとばかりに≪暗闇の皮≫も渡す。
これは何か。
タマのストレージで漬け込んでいた、あの魔王みたいな奴の素材だ。
MVP報酬で獲得していたものをすっかり忘れていた。
この際使ってしまえ。
「次はこの素材なんですけど、何かに使えませんか?」
「見せてもらっていいか?」
「どうぞ」
次に取り出したのは≪ゴーレム水晶≫。
説明がちょっと面白そうだったから何かに使えないかと思ったわけだ。
「なるほどな。こいつは面白いものが作れそうだぞ」
「おお、それはどんな感じなんですか?」
「それはな」
タケダが分かりやすく説明してくれる。
確かに面白い。俺が使いこなせるかどうかが問題だけど、多分なんとかなるだろう。
ミルキーやタマも良さそうだと太鼓判を押してくれた。
これは作るしかないな。
「それじゃあお願いします」
「それじゃあ小盾と、追加でいくつか素材をもらえるか?」
「はい」
小盾と、素材を手当たり次第に渡していく。
余った分はそのまま買い取りで代金から引いてもらう。
どのくらい使うか、まだ分からないらしいからな。
だから支払も受け取りの時にまとめてだ。
後払いになるけど、もし俺が逃げたとしても、その時は素材や装備をそのまま売り払えばいいだけだからな。
タケダが損をすることはない。




