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120 保留と笑顔

本日一回目の更新です。


 ミゼルに見送られて城を出た。

 花火をバックに、女神のエフェクトがお米のようなものを撒いている。


 何故かレベルが上がった。

 経験値が入ったっぽい。

 何の経験値だ。


 今回はプロポーズのつもりじゃなかったということでミゼルは納得してくれたようだが、政略結婚の話自体が完全に消えた訳じゃなさそうなんだよな。

 ミルキーはああ言ってくれたけど、うーん、考えてしまう。


 ――まぁ、ここは現実とは違う。俺は第二の人生を楽しむ為にここにいるんだし、深く考えなくてもいいか。

 PKを撃退した時も考えてたことだが、この世界の常識として禁じられていないなら気兼ねする必要はない。


 重婚もそうだ。

 王様が政略結婚を推してくる件は、気が向いたらその時に考えよう。


 とりあえずミルキーと合流だな。さっきあったことや、俺の考えを話さないといけない。

 その後は露店巡りの続きでもしようか。


「というわけで、俺がミゼルのことを気に入ることがあれば、政略結婚のことを前向きに考える」

「良いと思います」

「ははは、ありがとう」

「とんでもないことをしてるナガマサさんが常識を気にしてると違和感がありますし」

「それはなんか酷い気がする」


 若干ずれかけてた思考が戻ったのはミルキーのおかげだな。

 楽しく、のんびり。

 現実の常識なんて不自由な身体と一緒に、ポイだ!


「よし、それじゃあ露店巡り再開だ。明日はモグラさんやゴロウさんも一緒だから、色々用意しておかないといけないし」

「はい、役に立ちそうなアイテムを沢山準備しましょう」

「そうだね」

「タマのご飯も!」

「分かってる分かってる。それじゃあ行こうか」


 今の時間は15時。

 お昼を過ぎて、大通りの賑わいはそこそこだ。

 冒険者もそれ以外もがっつり働いてる時間だからな。


 俺の体感だと、朝と18時から21時がピークだと思う。

 特に夜は、狩りから帰ってきた冒険者達が溢れてる。眺めてる分には楽しい。


 今の中途半端な時間帯でも、大通りの真ん中辺りは露店がみっちり詰まっている。

 装備の個性が出てきたお陰か、見たことあるような商人もちらほらいる。


 プレイヤーの場合は名前が出るけど、正直見てないし覚えてないからな。

 だけど装備が印象に残ってれば、立ち寄ったことのある露店だとすぐ分かる。


 この、笑顔の仮面に明るい紫色のとんがり帽子を被ったプレイヤーとか。


「この商人さんの装備、派手な組み合わせですね」

「ほんとにね。威圧感がすごい」

「いらっしゃいませー」

「こんにちは。今日はあのお面だけじゃないんですね」

「仲間に、もっとちゃんと稼いで来いって怒られちゃいまして」

「なるほど」


 シンプルな笑顔のお面を被った女性プレイヤー、純白猫の露店では、いくつかの装備品や素材が売られていた。

 以前見かけた時は彼女が装備しているお面がずらっと並べられていたのに、今日はまともだな。

 お面もあるが、隅の方に二つ置いてあるだけだ。


 値段もそんなに高くないし、確かにこれだけ売っててもそんなに稼げそうにない。

 いや、原価が安ければ儲けにはなるのかな。

 怒られたってことはそうでもなさそうだが。


「このお面は街の周囲のモンスターの素材で簡単に作れますから。欲しければ買うくらいなら作るんじゃないですかね」

「やっぱり。じゃあこないだの一面の仮面は一体……?」

「布教活動? 笑顔が広がればきっと世界平和に繋がりますよ!」

「なるほど。ナガマサさん、笑顔のお面買いましょう!」

「タマもー!」


 純白猫のよく分からない理屈に、まさかのミルキーが食いついた。

 タマは案の定喰いついた。

 結構便乗したがるからな。がんがん乗ってくるし、同じことをしたがる。


 装備するかどうかは置いといて、欲しいなら買うか。

 俺も装備をいくつか買ってるし。


「お、おう。お面三つ……いや、六つありますか?」

「もちろんありますよー。ストレージに一杯詰まってるんで。足りなければあと三十個程出せますけど」

「そんなにいりません」

「はーい、六つで60cです」


 やけに安い。

 どうやら、少しでも布教する為に材料費以下で売ってるようだ。

 

 お金を払ってお面を三つ受け取る。

 それを一つずつタマとミルキーへ手渡すと、二人とも早速装備した。

 そこはかとなく怖い。


 この、笑顔なのに表情が無い感じがホラーだ。

 返り血でも浴びてたら完璧だな。

 せっかくだし俺も装備しておくか。


「どう? どう? かわいい?」

「よしよし、いい笑顔だぞタマ」

「やったー!」


 タマは笑顔の仮面を装備してご機嫌だ。

 そういえば、今朝この露店を離れた時に名残惜しそうだったな。もしかしたら欲しかったのかもしれない。

 ミニクラウンを避けてタマの頭を撫でてやると、更に元気になってぴょんぴょん飛び跳ねている。


「……これ、付けてる人が何人も集まってると不気味ですね」

「うん」


 そんな中、ぼそりとミルキーが呟いた。

 正直俺もミルキーと同じ意見だ。

 純白猫の時点で怪しすぎるから、薄々そんな気はしてたけど。


「そんな時には帽子系の装備を組み合わせると不審者度が増しますよ。≪ニットキャップ≫なんかおすすめです!」

「不審者度を上げるつもりはありませんから大丈夫です」

「そうですか」


 なんかこの人ゴロウと同じ匂いがするな。

 マイペースというか、ちょっと変な人という意味で。


 ≪笑顔の仮面≫の付け心地は悪くない。

 そういう仕様なのか、一切視界の邪魔にならないからだ。

 見た目は穴が空いてるようにも見えないのに、装備してしまえば全然気にならない。


 こういう見た目だけの装備って、なんか集めたくなるから不思議だ。

 お金に余裕が出来てきたらコレクションしたい。

 拠点の後で考えておこう。



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