表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/407

104 本音と本音

本日一回目の更新です


 シエルは落ち込んで帰ってしまった。

 俺も帰ろうとしたら何故か引き止められて、客間に通された。


 シエルがいる間はずっと扉の前で話してたのに。

 あいつが嫌われてるから屋敷に入れてもらえなかったのか?


 とりあえずメイドさんが入れてくれたお茶を飲んで、緊張を誤魔化す。

 メイドさんは退室してしまって、この部屋には俺とアルシエしかいない。

 よく知らない相手だし、お互い元気が良い明るいタイプではないから正直気まずい。


「引き止めてしまってすみませんでした」

「いえ……。あの、何かお話があるんですか?」


 見た目は小学生くらいなのにこの落ち着きよう。

 大人と話してるみたいな気分になる。

 見た目が中学生くらいなのに、中身は完全に子供なタマとは逆だな。


「シエル様のことを聞きたかったんです。あの方のお友達に会う事が出来なかったので、今を逃したらいつになるか分からなくて」

「なるほど」


 お友達に会えなかった。

 それはタイミング的になのか、そもそも存在していないのか、俺には分からない。


 シエルは一部の性癖が関わってこないところでは、俺と違って優しげで真面目そうだ。

 友達がいないなんてことはないだろう。

 ただ問題があるとすれば――。


「俺はシエルさんの友だ「シエル様は、私の事を好きでいてくれてるんですか……!?」

「んん……!?」


 友達ではないと言おうとしたら言葉を被せられてしまった。

 穏やかでありながらも、その言葉に込められた熱量は中々のものだ。

 というか質問の意味がよく分からない。

 いきなり過ぎて、呻くような変な声を出してしまったよ。


「私も、あの方の事は真面目で優しく、素敵な方だと思っています。両親も結婚相手に申し分ないと、応援してくれているんです」

「そうだったんですか……。でも、シエルさんは相手にしてもらえないと」

「シエル様は、私の髪のことしか褒めてくれないんです。もし私の髪が緑色じゃなければ、家の名前が緑を意味するグリーンじゃなければ、この髪を失えば、シエル様は私なんかに興味を持たないのではと、不安になるんです」

「はあ」


 実はアルシエもシエルのことが好きで、両想いだったらしい。

 だけどあの変態が髪に食いつきすぎて不安になったと。

 確かにアルシエの緑の髪は美しい。


 でも結局見た目だけのものだから極端な話、『見た目が超好みです! 結婚してください!』って言われてるようなものだ。

 人によっては嫌だろう。

 アルシエのように思っても仕方がない。


 髪にしか興味が無いかどうかは確定じゃない。

 俺も知らない。

 ただ、正直否定がし辛い。

 本人があんな感じだったからなぁ。

 これも身から出た錆――カビにしたら喜びそうだな。緑だし。


 だってあいつ、服も全身それとなく緑だし、帽子も緑だったからな。

 髪の毛を染めようとして父親に怒られたとも愚痴っていたし、筋金入りの緑好きだ。


「すみません、俺には分からないです」

「――! そうですか」


 無責任なことは言えない。

 そもそもがシエルの好みの話なんだから、俺が口を出すようなことでもないしな。

 もしアルシエの緑の髪が失われてシエルが興味を失うとしても、仕方ないのではと思ってしまう。


「アルシエ様、思いは伝えないと伝わりません。分からなくて不安になるなら、いっそ聞いてみてはどうでしょう?」

「でも、もしそれでこの髪にしか興味がないと言われてしまったら――」

「それは駄目なんでしょうか?」

「え」


 理由はどうあれ、選んでくれたのなら俺は嬉しい。

 見た目だろうと中身だろうと、自分の一部であることには変わりないし。


 ミルキーとの関係もそんな感じだったと思う。

 あくまでも、俺の個人的な意見でしかないけどね。

 押し付ける気はない。


「興味を持ってもらえるのは幸せなことだなと、俺は思ってるので。アルシエ様が不安に思うのも当たり前だと思いますけど」

「はい……。どうしようもないくらい、不安なんです」

「アルシエ様は一体どうしたいのか、考えてみたらいいんじゃないでしょうか? すみません、俺はしがない冒険者なので大したこと言えないです。失礼します」


 俺は逃げるようにグリーン家の屋敷を出た。

 なんだか偉そうなことを言ってしまった気がする。


 不安なのは分かるけど、そこで思考が止まるのは俺には分からなかった。

 不安を解消するか、解消しないなら諦めるかでいいんじゃないのか?

 不安だ不安だとだけ言ってても何も変わらないどころか、気分が落ち込んでいくだけだ。


 俺も、この世界に来る前は同じような状態になっていた。

 悔やんで悔やんで、何もせずに目を背けるだけ。

 ここにも逃げてきたようなものだけど、今は前向きに、楽しく生きて行きたいと思えている。


 両想いなんだったら、アルシエにも前向きに生きてほしい。

 シエルが緑色の髪しか話題に挙げないのが問題のような気もするが、変態にとっての性癖は酸素みたいなものだ。

 取り入れて出してを繰り返さないと死ぬんだろう、きっと。


 宝石を納めるだけの筈が妙な展開になった。

 残りの報酬も受け取ってないから、まだ完了してないんだよなこれ。


 とりあえずタマとミルキーと合流しよう。

 マッスル☆タケダに頼んである装備も完成してるだろうし、受け取りに行くのもありだ。 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作始めましたので、こちらもよろしくお願いします!
友人に騙されたお陰でラスボスを魅了しちゃいました!~友人に裏切られた後、ラスボス系褐色美少女のお嫁さんとして幸せな日々を過ごす私が【真のラスボス】と呼ばれるまで~
面白いと感じたら、以下のバナーをクリックして頂けるととても有難いです。 その一クリックが書籍化へと繋がります! ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
[一言] ぶっちゃけ恋に限らず自分が何をしたいのかよな。人に言われて変わるのもどうかと思うけど。何をしたいのか、どうなりたいのか、何がいけなくて何がよかったのかよく考える事な。良い関係を壊したくないと…
2020/01/06 01:37 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ