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普段なら誰も居ない屋上。

でも、そこに佇む一人の女生徒。

開くはずも無い屋上の扉が開かれ、やって来たのは背の高い一人の女生徒。外見から判断するならば、異性よりも同性のモテそうなタイプだ。


「………久し振り」

「………………」


本当に久し振りに見た彼女は、私の知っている彼女と違っていた。

常にカッコ良くあろうと努力していた容姿も、今の姿では面影すら残っていない。

かとか言って可愛くなった訳でも無い。

でも、久し振りに彼女の顔を見たら、自然と涙が溢れてきた。


「ごめんなさい」


ただ一言。

それだけ言って、私はその場に崩れ声を出さず泣いていた。


「若菜が謝ること無いよ。私の方こそごめん」


泣き崩れている私に近付いてきて、抱き寄せると謝ってきた。

彼女に抱き寄せられて、彼女の匂いを久し振りに嗅いだ私は、自然と抱き返していた。


「もう二度と離れない。離れたく無い」

「私も同じ。二度と離さないから」


そして私達の唇は重なった。





************



あの女が一人で屋上に上がって行くのを見て、バレない様にこっそりと後を着いて行った。

屋上には久しく会う事が無かったお姉様が居て、思わず駆け出そうとしていた所を、後ろから誰かに抱き締められお姉様の元へ行く事を阻まれた。


「離してください!」

「しっ! 静かに」


声の主からして、あの女と一緒にいるヤツだと気付いた。


「お姉様の元に行かないと、あの女に何されるか分からないじゃないですか!?」

「なにもしないよ。それよりもちゃんと見てなさい」


そう言われてしまっては、渋々だけど二人を見てた。

そしたら突然お姉様は泣き崩れ、あの女に抱き締められると、同じ様に抱き返していた。

(え? お姉様は、あの女の事嫌いじゃないの?どう言う事?)

私は今までずっと、お姉様はあの女の事が嫌いだと思っていた。だから、あの女には近付かせない様に色々とやって来た。

けれど今屋上に居る二人は、愛しい人を離さないとばかりに互いをぎゅっと抱き締め合っている。

そして聞こえてくる二人の会話。

(え? お姉様……?)

ぐるぐると思考が回っていると、二人はキスをしていた。


「あの二人は、元々恋人同士なんだよ。それを何故か皆に隠していた。それ故になんだと思う」

「何故、貴女がそんな事知ってるの!?」

「二人の行動を見てたら分かるよ。貴女は水上さんしか見て無かった。だから二人が恋人である事に気付く事は一切無かった。あの二人の仲を割いたのは貴女であって、貴女の慕う水上さんを苦しめてたのは貴女自身だったて事」

「そ、そんな……私はお姉様の為と思ってずっとあの女に近付かせなかったし、私だけを見て欲しくて頑張ってきたのに、全てはお姉様を苦しめているだけでしか無かったなんて……」


お姉様の為にと色々とやってきた。全てはお姉様に好かれたいが為とはいえ、自分がやってきてた事が、お姉様を苦しめていただけなんて。

そんな私がどれだけお姉様に『好き』とか『お慕いしている』と言っても靡いてくれなかったわけだ。

そりゃ、自分を苦しめる相手を好きになるわけ無いよね、私だってそんなの嫌だ。


「あは、あははは……」

「………………」

「お姉様の所へは行きません。離して貰って大丈夫です。こんな私をお姉様にお見せするわけにはいきません」

「そっか…………何かあったら、何時でも話聞く」


羽交い締めにされていた私は解放されたと同時に、屋上へと通ずる階段から去って行った。





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