54 小娘と美少年
「ジュリアンヌー!」
「ステファ!久しぶりね」
今日から新学期ですよー!ビッカピッカの二回生になりましたジュリアンヌですよー!中身は31歳ですけどねーイタくないよ大丈夫ーこの世界ランドセル文化じゃないから絵面耐えられてるー!
「おーい!ジュリアンヌー!ステファー!」
「アルト!」
「アルトー!久しぶりー!」
「……ねぇ知ってる?!αにセルヴィアの王女様が留学で来られたらしいよ?!」
「え?!マジか?!」
「えぇ、そうらしいわね」
「……あれ?ジュリアンヌもう知ってるの?珍しい!…………私さっきお顔見てきたけどすっっっごい綺麗だった……!!」
「マジかよぉぉぉぉ!!!」↑
「しかもラファエル殿下の御婚約者なんだって!αの女の子が話してるの聞いちゃった!」
「マジかよぉぉぉぉ………」↓
「アルト何落ち込んでんの……?ほら、早く集会場行こう?」
「新しい生徒会長はどんな方なのかしらね?楽しみだわ~」
「そっちは知らないんだ?!さすがはジュリアンヌ……(継承式の記憶無いのかな……?)」
「俺だけの天使は何処……?!」
「……皆様春季休暇は如何でしたでしょうか?なんとも寂しいことに私は専ら父の仕事の手伝いに追われていました……最後の春季休暇だったにも関わらずです……」
ステファに依るとこちらは新生徒会長のローゼン=シオン様、αの六回生です。ジャスティシアの民事部長官のご子息らしいですがとても良い人そうですね~。ノア様には劣りますがかなりのイケメンです。ちょっと派手な感じかな?
因みに副会長はトヴァイツ=ナッシュ様だそうです!こちらはβの六回生です!眼鏡が似合う硬派なイケメンですね~。私はどっちかっていうと副会長の方が好きですね。あ、聞いてないっすよね?さっせん。
「皆様おはようございます。僕は新しく風紀委員長に任命されたノルディック=ジェノスです」
こちらは我が風紀委員長のジェノスパイセンですね!βの六回生です。見た目はほんわかイケメンなんですがグレイス委員長ばりに仕事出来るし人当たり最高とかで実は人気爆発してるらしいよステファ曰く。グレイス委員長の後任はこの人しかいないよね~。
因みに副委員長はフォルテ様だよ。フォルテ様はαの五回生。グレイス委員長にガチ恋勢だったけどメンタル大丈夫なのかな?
「……では生徒会と風紀より皆さんにご案内すべき事があります。皆様の中には既にご存知の方がいらっしゃることとは思いますが……この度ウィンガードにて【三国交流試合】が開催されることになりました。【三国交流試合】とはその名の通りウィンガード、セルヴィア、アラン、三国の学生による文化的交流を目的とした競技大会です」
「目的は文化の交流であり、魔力、神力、剛力を用いて戦うことではありません。三国の文化を尊び、学び合うことが真の目的です。競技大会では、知識を問う【ノーシィ】と総合力を問う【シンテシィ】の二つの力が求められます」
「3人で一組となりますので参加希望者の方は生徒会室前の専用の箱にこちらの用紙を投函して下さい。【三国交流試合】の【本選】に出場する為には、ウィンガード内での一次及び二次の選抜試験に通過して頂く必要があります。一次選抜は6月、二次選抜は9月を予定しております。内容に関しては公平を図るため当日まで非公表とさせて頂きます」
「因みに優勝組には各国の王立学校への留学権とそれらに掛かる全費用及び単位が与えられます」
ザワッ!!..
「……おい。知ってたか……?」
「知るわけないだろ?!にしても……えげつない催しだな…」
「私出られるかな?!留学したいー!」
「出るのは自由なんだろうけど…………」
「えぇぇぇ……?!三国対抗競技とか…………もう完全に雲の上の話じゃない?!あ、でも…………ジュリアンヌは勿論出るんだよね?」
「フフフ……勿論出るわ!………………アルト」
「………………ハッ?!………………まさか……」
「優勝するわよ!」
「師匠の思考に全く追い付けない!」
「ジュリアンヌは凄いなぁ~…………アルトも凄く強くなったもんね……頑張ってね二人とも!」
「任せて。ステファがいつでも遊びに来れるように部屋を用意して貰うから一緒に観光しよう」
「フフ……!有難うジュリアンヌ!」
「外堀が埋まっていく?!」
「大丈夫大丈夫。エリオスと3人で頑張ればなんとかなるって」
「俺の意思が迷子だけど既に頑張る選択肢しかない…?」
「ジュリアンヌ嬢少し話があるのだけど……やぁ、ステファ嬢」
「おはようございますジェノス委員長!じゃあ私達先に教室戻ってるねー……ほらアルト、行くよー?」
「ジェノス様だわ……今日もにこやかで素敵ね……」
「本当に……あら…誰かしらあの子………」
女子の視線が刺さること刺さること。まぁ気になりますよね新風紀委員長様とモブ生徒Aのエンカウントとかね。……いや、大丈夫だよ?村人Aは無害だよ。ほら、全然釣り合ってないよね?だから私を睨まないで下さいませんか?
「……実は今年度から『風紀委員長補佐』という役職を置くことにしたんだけど…………僕は君にお願いしたいと思っている。職務内容はその名の通り風紀委員長『専任』の補佐官だ」
「そうなのですね。それは素晴らしい御英断でございましょうが…………」
…………………………私?
ピッカピッカの二回生の…………私か?
いるいる。風紀委員わんさかいるよ。あ、ほら、情熱1000%のシドルパイセン……とか………………いや、ほら他にもいるでしょ誰かしら!
「急な申し出で悪いのだけど正直君以外考えられなくて……」
「……」
……あらヤダ。おばちゃんちょっとキュンしちゃったよ?………まぁね?ジェノスパイセンには私のゴリラ加減見せちゃったし?多少使えそうなお助けキャラ認定はされちゃうよね。
けどさ…
「……大変光栄ですが私はまだ二回生です。私よりも優秀で経験が豊富な諸先輩方が数多く在籍されていると思うのですが…………」
「君はまた…………君よりも優秀な風紀委員なんて王国騎士団にもいないんじゃないかな?それに君は【三国交流試合】に出るつもりなんでしょう?委員長補佐の方が君なら効率的に働けると思うのだけど…「若輩者ではありますがお引き受け致します」
パワーワード出してきましたねパイセン。私は『時短』『お手頃』には滅法弱いのです。じゅるり。
「有難うジュリアンヌ嬢!君ならそう言ってくれると思ったよ!じゃあ仕事の段取りがついたら君に一報入れるね。これからも宜しく頼むよ」
「こちらこそ宜しくお願い致しますわ」
さすがグレイス委員長の後任だけある。完全にやり込められてやったわ私が。……でも委員長補佐って何すんだろ。去年のフォルテ様の仕事っぷりとか正直知らんし。グレイス委員長のこと惚気倒してた記憶が殆どだもの。
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「ロレンツィオお皿取ってー」
「そんなもの魔法を使え!」
「いちいち使うか!」
……はい?ケンカップル同棲まじプマイ?
違いますよ?登校初日を終えてマイルームでまったりディナーなうなんですなんか知らないけどロレンツィオもいますけどね?
因みに今日の献立は『暴れ牛シチュー』とロールパンとサラダです。今日も最高の出来だと思います。いつでも嫁に行けると思います貰い手があればの話ですがね!
「そう言えば……アンタ何でリュカ君に着いて行かなかったの?」
『我と離れるなど堪えられぬだろう!』
とかなんとか言ってリュカ君公認ストーキングするかと思った。リュカ君まじ優しいからな……リュカ君元気かなぁ……?グスッ
「此度はリュカがそれを望んでいなかったからな。…………何だこのシチューは?!本当に貴様が作ったのか…………?!」モグモグ
「文句あんなら食べなくて良いっつの!……ふーん…一応アンタなりに考えてることもあるんだ?」
「貴様我を何だと思っておる……?!まぁ、我程リュカを理解している者はおらぬだろうな!どうだ悔しかろう!アッハッハッ!」
「……はいはい」
やっぱロレンツィオって両方いけるクチなのかな?つーかロレンツィオがどの殿方と結ばれようが勝手だけどリュカ君とエリオスだけは止めて欲しい。どうか遠方でやってくらさい。近場過ぎて萌えねぇつか仲間のそんなの……巻き込まれたくねぇ……(泣)
「リュカは『古の巫女』に操られた事が悔しくて堪らぬのだ」
「……!!」ゴホッ
ちょっ……いきなり真面目な話とか…………?!
待て待て……!!
「……そんなの…………仕方ないじゃない。だって古の巫女は『最厄』だったんだし……リュカ君に全く落ち度はないよ。寧ろ完全な被害者」
「だがヴォルグと小僧、それにあのアランの小娘は『言霊』に掛からなかった」
「っ、それは…………『加護持ち』だったからなんでしょ…?私の周りには何人かいるけど本来加護持ちなんて本当に希少な存在なんだって…ヴォルグ先生も言ってたし……」
「貴様がリュカの立場なら同じ事が言えたか?」
「…………っ、それは…………」
「ククク……リュカを甘くみておると痛い目に合うぞ?なんせリュカは我が師の魂を受けついでおるのだからな!!」
「……と言うかその『魂云々』の話は一体何なの…?アンタの勘?」
「はぁ?古代魔法を以てすれば魂など見分けられるだろうが!」
「……はい?」
いや、知らんし。
「…………つかさ、アンタあの時……『妖精の森』で初めて会った時、何であんなに怒ってたの?」
…………前々から気になってた。
でもなんか…………まだそんな『時期』じゃないのかなーって……ずっと遠慮?してた。ロレンツィオも何も話さなかったし……。
だから聞かなかったんだけど………もう聞いても良いのかもしれないって……今……ふとそんな気がした。
「良く覚えておらぬ」
「……そうなの…………?」
「気付いた時には我は……貴様に斬られ…………思い出すだけで腸が煮えくり返るわッ!!」
「あーもう御免て!私も必死だったの……!!…………つーかアンタだってさアリシアのこと人質に取ってさぁ『人類死ね』みたいな感じで攻撃バンバンしてきてさぁ…………魔王みたいだったよ」
「……フン。妖精は好かぬ」
いや、知らんし(二度目)
「ジュリアを陥れたあの妖精にでも似ていたのかもしぬな」
「………………………何でアンタの妹さんは…………亡くなったのよ…………」
アンタは私の事が嫌いなんだろうけど……私はアンタの事結構信頼してるんだからね?
だから不思議まみれのアンタの事も知りたいと思ってんの。そんで出来たらアンタの……深い傷?……だって癒してあげられたら良いなーって……勝手に思っちゃってんの私は。
………こんなに近くにいるのにアンタのこと全然知らないとかさ……いい加減寂しいんだよ。バーカ……
「……ジュリアは誰よりも美しく慈悲深く…………誰よりも才に恵まれた亞人だった。ジュリアは知らずのうちに全てのモノを魅了した。そしてジュリアもまた全てのモノを愛していた」
「……うん」
「我らは『始まりの場所』と呼ばれるあの豊かな森で暮らしていた。人間こそいなかったが亞人も妖精も魔獣も全てが睦まじく共存していた。……しかしある時…………『それ』は突然現れた」
「……」
「それが『古の巫女』とその従者達……人間だった」
「!!」
「『古の巫女』は特に深い傷を負っていた。今にも死に行くように我には見えた。我はどうもする気はなかったが……ジュリアは違った。あの子は誰とも知らぬ人間の傷を……迷うことなく癒した」
「本当に優しい人だったんだね」
「……だからそう言っておろうが。『古の巫女』どもは初めはジュリアに最大限の感謝を示し睦まじく関わっていた。ジュリアの方も初めて見る人間共を恐れることなく受け入れ親しんだ。
その内『自分達は国を追われた身分なのだ』と奴らが話したそうだ。ならばこの森に居れば良いと、ジュリアは長老に掛け合い長老もそれを許した………今思えば何と能天気な話だったのか……」
「……」
「月日が流れ…………ジュリアに好意を寄せる輩が出てきた」
「…」
「その男はどうやら……『古の巫女』の婚約者だったらしい」
「………………」
「それだけではない。他の従者達も次第にジュリアに焦がれ始めていたようだが…………ジュリアは奴らの想いには気付かなかった。何故ならジュリアには既に想い合う者があった。…………それが我が師匠オーウェン……………………今その魂はリュカに受け継がれているがな」
「…………………………そう、なんだ……」
「『古の巫女』の身にそれまでに何があったのかは知らぬ。だが命からがら婚約者と共に逃げお失せてきたにも関わらず婚約者の心は自分から離れてしまった…………古の巫女にとっては許し難い屈辱であり絶望だった。そしていつの日かその憎悪がジュリアに向けられることとなった。
……ある時から睦まじかった筈の人間共の様子がどこかおかしいとジュリアがこぼすようになった。そして妖精が一人……忽然と姿を消した。だがそれは……………………直ぐに発見された。死体としてな。
…………あろうことか死んだ妖精の妻がこれはジュリアの仕業だとのたまった。誰も信じる筈がない。我はそう確信していたが…………………もう既に…手遅れだったのだ。気付いた時には…………我とジュリア以外のモノは全て『言霊』に操られていた。全ての魂が『古の巫女』の色に染まっていたのだ」
「…………………」
「……我は言った。『ここから逃げるしかない』と。我にとって『言霊』に染まった我が故郷など、ジュリアの心を傷付ける仲間など……疾うに見切りがついていた。……それが例え我が師匠であったとしても。我が護りたいモノはもうジュリアだけだった。だがジュリアは………………我と逃げることを拒んだ。『大切な皆を置いていける筈がない』と涙をこぼしながら我に微笑んだ……………
……………それがジュリアとの最期の会話となった」
「……………………ロレンツィオ…」
「……良いか小娘。『古の巫女』は初めから『言霊』を扱えた訳ではない。突然に扱えるようになったのだ。でなければ我もジュリアもあんなにも後手にまわることはなかった」
「………………まさか…」
「貴様が『古の魔法』を扱えるようになったようにギフトは後に獲得することが出来る。古の巫女に『言霊』を授けるなどとんだ神がいたもんだがな」
「…………じゃあもしかしたらアンタが目覚めたのも…『古の巫女』が復活したのも…『神』のせいかもしれないってこと?………つーか何でいきなりそんな大事な話私にしてくれんの……頭パンクしそうなんだけど……?!」
「貴様の魂………ジュリアが…………我と話をしたがっておる気がしてな」
「……はい?っていうか怖い怖いやめて私の魂と勝手に対話しないでくんない?頭大丈夫?もしかしてボケ始まっちゃった?まぁ1500歳だもんね?」
「…はぁぁぁぁぁ………何故ジュリアの清く美しき魂が…こんな……平凡な小娘に……!!なんと嘆かわしきことか!!」
「私の顔見て溜め息つくんじゃねぇよ美少年コッラ☆」
『……お兄様。私はアリアナも…助けたいのです……』
今思えばあの時本当は………そう言いたかったのかもしれぬな……
不甲斐ない兄で悪かった。
お前の想いもお前の魂も郷土も仲間も……我は何一つ護ることが出来なかった。
だが今度こそは……………
この小生意気で可愛いげのない…ジュリアンヌなら…………………………




