story:3 君を愛して歩いて行く
言葉が少したどたどしい。
服も買ってやらないと。
誰かを思って考えて行動すること、とても久しぶりな感覚だ。思わず頬が緩む。
さて、さしあたって。
――何をしよう。
まあ、急いでもいい結果は出ない。今日はティアモをこの世界に慣れさせよう。
ティアモは、どんな子なのか、それを僕は理解しなければならない。
「ティアモ」
「?」
呼ばれて困っている、そんな顔も綺麗だ。
日が昇ったばかりで、窓際に立つ僕を眩しそうに半目になりながらも頑張ってみてくれている。
しかし。
反応から察するに、自分の名前を知らないと見た。
「いいかい」
優しく問いかける。
今さっきまで君を捨てようとしたのに、もう怯えていない。君は強いな。
「君の名前は――ティアモだよ」
「ティアモ、トハ……ドウイウイミデスカ?」
高い機械音で、そう問うてくる。
君から望まれた答え。それを答えないなんてことはしない。
だって、君が望んだことだもの。
「それはね――――――」
「ソウナノデスカ」
言葉は、伝わったのだろうか。
ティアモからすれば意味の分からない単語が並べられて、理解してくれたのだろうか。 途端、ティアモは笑顔になって。
「ワタシハ、コトバヲシリマセン。デモ――ワタシハソノヒビキガスキデスヨ」
不意にそう発せられ。
何故だか知らないけれど、とうの昔のことを思い出して、目端が熱くなって。
見られたくなくて、ティアモを抱きしめて。
嗚呼。
君は今も。
元気にしているだろうか。
あの時の君は――泣いていた。
雨が降って、それでも君が涙にぬれているのが分かった。
だから、この子は。
泣かさないように、歩いて行こう。
ティアモ、君の名前に込めた意味とは真逆のことはしてあげたくない。
二人で歩いて行こう。君も僕も強く歩いて行こう。
短くてゴメンネ……