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Coração da máquina  作者: ヤマ
Coração humano
2/16

story:2 君に気付かされる幸せ

 ――――。

 君からの返答はない。

 君はただ、顔を固くして、借りた猫みたいに固まっている。

 おびえて、いるのかな?


「こんにちは」


 おはようとは少し違うニュアンスを持った言葉、ありふれた言葉を投げかけてみる。


「…………」


 また無言。

 けれど、僕の目には、言葉の意図をくみ取って、考えているように見えた。

 今度はしっかり、時間をかけて待ってみる。


「ア……ア……」


 言葉を、発した。

 信じられなかった。

 君は、この世に。

 生まれてこれたんだ。

 それが、他の人から見たら、どうでもいいことが。

 自分のことのように嬉しかった。

 君がいるだけで、心の中にいるだけで嬉しかったのが。

 ようやく、ようやくあの日の続きを君と話せるんだね。

 僕は嬉しいよ。君が今、僕の目の前にいて、僕と話そうとしてくれること。


「ア……アナタハ……――ダレ、デスカ……?」


 ――――。

 まあ、そうなるよな……。

 想定内だ。

 ここから質問を重ねて、ティアモを人間らしくする。

 さあ、質問をしていこう。


「じゃあ、いくつか質問をするよ?」


「アナタハ、ダレデスカ……?」


 ……むう。

 そう来たか……。

 今度のバグは、また一味違う……。

 まだまだ難しいな、夢は本当に完成されるのだろうか。気が遠くなる。


「また作り直しか……」


「アナタハ」


 やはりバグだろう、今までよりも――。


「ワタシハ、ワルイコ――デスカ……?」


 ――――。

 そんなことを言わないでくれ。僕は、僕には――君を処分することができなくなってしまう。

 だからそんな声で――。

 そう思って振り返った瞬間。

 君が――泣いていた。

 僕は勘違いをしていた。

 君が完璧じゃないからって、君が悪いわけでもないのに、君は生まれるべくして生まれたのに――僕はその全てを押し付けてしまった。

 頬を優しく撫でた雫は、床に落ちて。

 僕は気付いた。

 君が――生きていると、本当の意味で気付けた。

 完璧なんかないものだった。

 なんでそれに気付かなかったのだろう。

 僕はティアモの元に行く。

 ティアモが怯えるのが見て取れた。

 ごめんね、怖かったろうに。

 もう、絶対にあんなことは言わないと誓おう。

 その誓い、そしてお礼を込めて僕は。

 ティアモの頭を、撫でてやった。

 くすぐったそうにする君を見て、僕の心も温かくなる。

 少なくとも僕は、君から少しの温もりを、感じ取ったよ。

 君に、僕の気持ちが伝わっていると嬉しいな。

 君には驚かされて、気付かされてばかりだ。

 僕は同じ量だけ、君に驚きと気付きを、与えられるのかな。

 ――あれ?

 こんな気持ちは、いつぶりだろう。

 誰かと一緒にいて、楽しいと思えたのはいつぶりだろう。

 それに気付いて、改めて思う。

 生まれてきてくれて、ありがとう。

 僕が笑うと、君が笑って。

 そんなありふれた光景に、幸せが潜んでいて。

 太陽のように眩しく見えた君の笑顔。

 明日も来年も、いつまでも。

 守っていけたらいいな。

あったかいと感じていただけましたか?

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