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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

トーチカのゴブリン~戦場の飼育兵が体験した事~

作者: 犬尾剣聖



 広い砂海の中に小さな島があった。


 一番近い街のガンビアからも陸戦艇で1日弱ほどの道のりがある。


 この地は周囲4kmほどの小さな島であり、戦略的に見てもまったく価値のない場所のはずだった。


 しかし現在は1個中隊ほどの守備隊が駐屯している。


 それはここに水があるからである。


 つまりこの島はオアシスであった。


 そしてもっと重要な秘密が1つある。


 この島の水源は地底湖であり、その水源にはなんと『魚』という生き物が生息している。

 さらにその地底湖の水は魔力を帯びていて、そこで育つ魚は巨大化していった。

 つまり大量の魚の肉が手に入るということだ。


 水が少ないこの世界では『魚』は極めて貴重品。


 それが捕れるこの場所はまさに重要拠点でしかなかった。


 本土のガンビアとは毎日定期便が行き来しており、水の輸送と収穫した『魚』を定期的に輸送している。


 本土に輸送された水は魔力の除去を行った後に通常の水に転用される。また、一部の水は魔力を帯びたまま農作物に肥料として与えられる。

 そうすることにより巨大化した農作物が採れるのである。


 『魚』は収穫を続けるといつかはいなくなってしまう。


 そのため常に一定量を保持するために、飼育分隊というのがこの島に駐屯していた。


 その仕事というのは『魚』に餌を与え育てる事と、定期的に収穫した『魚』を本土に献上する事、そして水を確保する事であった。

 それが彼等飼育分隊に与えられた任務だった。


 その分隊長は頭に入れ墨を彫っているのが特徴の「スケッチ」軍曹だ。


 この島では有名人であり、頭に彫られた入れ墨がまるでスケッチ段階で仕上げっていない絵のようであるがため「スケッチ」というあだ名がつけられたのだ。


 ちなみにその絵というのが『魚』だったりする。


 しかし『魚』を知る者は少ないがため、余計に変な絵に見えるのだった。


 飼育分隊の仕事は非常に簡単だった。


 1日2回の餌を欠かさない事。

 餌の在庫を切らさない事。

 生息個体数を極度に減らさない事。

 水を毎日定期便に輸送する事。

 魚を定期的に収穫して輸送する事。

 地底湖には許可された人物以外は入れない事。


 この6つだけであとは割り当てられたトーチカ兼居住区にいればよかった。


 他の守備隊のように要塞を拡張するための土木作業などは免除されており、他の小隊の隊員からは羨ましがられた。


 今日もいつもの様にスケッチ軍曹は部下を連れて定期便の陸戦艇へと、手押し車で水樽を運んでいく。


 地底湖の水は毎日運んでいくのだが全く減る様子は無い。

 しかしあまりに減らすと、元の水位に戻るまで時間が掛かる事が分っているので、毎日運ぶ量は20樽と決められていた。


 港で部下に水樽を輸送艇に詰め込ませてる間に、スケッチ軍曹は輸送艇の下士官と立ち話を始める。


 これも毎日に日課である。


「そういえばスケッチ、本土でなんか不穏な雰囲気になっるらしいぜ」


「不穏って、またラッセニアと戦闘か?」


「ああ、たぶんそうだろうと思うよ。たぶん明日の定期便では臨時食糧確保命令が出ると思うぜ」


「そうか、仕事が増えるな。ま、ラッセニアと戦争になってもここは関係ないからな。それはいつもの事だ」


「あ、隊長が呼んでる。じゃ、また明日な」


「ああ、じゃあな」


 積み込みが終わりスケッチは部下を集めると、地底湖の入口があるところまで戻って行く。


 彼らの兵舎はその近くにあり、交代で地底湖の入口を警備している。


 一応兵舎に隣り合わせてトーチカが作られており、その銃眼には37㎜速射砲が据えられている。

 第一線で通用しなくなった武器だ。


 それでも中型の魔物位なら十分威力を発揮できる。


 スケッチ軍曹は戻るとトーチカに顔を出し部下に声かける。


「おい、今日抜き打ち検査があるって噂だ、しっかり37砲の整備しておけよ」


 それを聞いた伍長らしいゴブリンが慌てて立ち上がって部下に指示をだす。


「まじっすか、やべえ。おい、そこの弾薬箱片付けておけ」


 それを笑いながら見た後、スケッチは1人地底湖へと向かう。


 地底湖に到着するとそこはスケッチにとっては見慣れた光景が広がっている。


 魔石灯によって照らされた地底湖は、幻想的な雰囲気を醸かもし出していた。


 水面は静寂そのもの。


 薄暗がりの中、魔石灯が水面に鏡の様に反射されている。


 スケッチはその景色を満足げにしばらく見つめた後、近くにあった樽の中から何かを取り出した。


 それは何かの肉で作られた団子状の物だ。


 それを持って水面に近づくと、今まで静かだった水面が揺れ動く。


 スケッチが近づけば近づくほどに水面の揺れの激しさが増していく。


 波打ち際まで来るとスケッチが声を発した。


「ほーら、お前たち、餌の時間だぞ~」


 その声に反応するかのように、水面でバシャバシャと何かの生き物が跳ね出した。


 スケッチがその中へと団子を投げ入れた。


 するとそれを取り合うかの様に『魚』達がバシャバシャと水しぶきを上げる。


「これでどうだ」


 スケッチが一度に5個ほどの団子を放り投げる。


 すると水中から体長5mはありそうな巨大な『魚』が飛び出して、その投げ込んだ5つの団子を水に入る前に全部丸飲みしてしまった。


「やっぱり“あるじ”、お前が出てきたか~」


 スケッチは非常にうれしそうな表情で話しかけている。


 そこへ1人のゴブリン兵が階段を下りてくる。


「スケッチ分隊長、また1人で餌やりやってましたね」


「ああ、いやすまんな。待ちきれなくてな」


「ダメですよ、1人じゃ危険ですから。一応魔物ですからね。過去には咬みつかれて重傷を負った兵士もいるんですから」


「なあに、こいつらはそんな悪さなんかしないよ」


「またぁ、いつもそう言うんですよね。そのうちこいつ等に喰われちまっても知りませんよ」


「ははは、それで死ぬなら俺は本望だよ。戦争で死ぬよりよっぽどいい」


「本当にスケッチ分隊長って変わってますよね~」


「ははは、よく言われるよ。ま、そのおかげで兵士なのにこの仕事に付けたんだがな」


「話は違うんですが、さっき港で不穏な雰囲気って話してましたよね」


「ああ、本土での噂でな、また戦争が起こりそうって話な」


「実は俺、司令部で小耳にはさんだんですけどね、噂でなく実際に戦闘が起こってるらしいんですよ」


「本当か……」



 そんな話をしている次の日の定期便では、いつもよりも多くの調達物資が届けられ、いつもよりも多くの水が運ばれていった。

 そしていつもより多くの『魚』が運ばれていった。


 戦場はガンビア付近になり、本格的な戦争になるという噂が島内で飛び交っていた。


 その翌日にはすでに定期便が来なくなった。


 そしてその次の日も。


 司令部では伝書魔鳩を放つも本土からの連絡が全くなく、ついに最後の魔鳩もいなくなる。


 そうなると島の司令部では止む追えず、連絡艇を使って偵察を出すことになった。


 そのあたりから兵士への食糧が配給制となり、配給される量も徐々に減らされていくことになる。


 2日で戻るはずの偵察艇が戻ってこない。


 3日目にして残る一艇の連絡艇をも使って偵察を出した。


 しかしこれも帰還することはなかった。


 これでこの島は完全に孤立してしまった事になる。


 そうなると食糧事情が悪化する。


 水に関しては樽置きしておけば徐々に魔力は抜けていくので、飲み水に関しては問題なかった。


 しかし食糧に関してはどうか。


 周りは砂海で囲まれた世界。


 狩に出ようにもすでに陸戦艇は残っていない。


 そうなると狙われるのは『魚』だった。




「また襲われた。なんとか追っ払ったがな。今日から警備の人数を増やすように司令部から命令があった。司令部からも応援が来るそうだ。入口に許可なく近づく者への発砲許可も下りてる」


 神妙な面持ちで命令を伝えるのはスケッチ分隊長だ。


 この頃になると『魚』も徐々に兵士達の配給の品になるのだが、島内の全兵士にまでの分となるとあっという間に『魚』はいなくなってしまう。


 つまりその最後の『魚』も小出しにしなければならない。


 特にスケッチにはどうしても譲れない事があった。


 それは“あるじ”と呼んでいた巨大な『魚』の魔物である。


 スケッチは長い間、この個体だけは生きながらえさせてきた。


 なぜかその個体だけは自分に懐いていると思えたからだ。

 しかしその話を誰にしても一切信じてくれる仲間はいなかった。


 そしていつしかその話は誰にもしなくなり、分隊の連中しか知らなくなっていった。


 スケッチにしたらその“あるじ”と呼ぶ『魚』は友人であり、唯一この島で本音をいえる相手であった。


 彼は本気でそう思っていた。


 彼は部下によく『油断しているガブリと食いつかれますよ』とか言われるのだが、その都度に『友人にそんなことするわけないだろ』といつも笑いながら返していた。


 そんな彼は本気で仲間の兵士にも銃口を向ける覚悟であった。


 しかし、そんな状況は一変する。


「スケッチ分隊長、緊急戦闘配備命令です!」


 彼の部下の伍長が地底湖入口警備中のスケッチのところへ駆け込んできたのだ。


「どしたってんだ?」


「船影を確認したそうです!」


「味方じゃないのか?」


「いえ、それが人間製の陸戦艇らしいんです」


「っていうことは敵がここまで来たってことか! 入口に鍵をかけてトーチカへ行くぞ」


 トーチカに戻ると他の飼育分隊の兵士はすでに戦闘準備をしていて、いつでも37㎜砲が射撃できるようになっていた。


 スケッチはトーチカの銃眼から砂海を覗く。


「あれか、確かにゴブリン製の陸戦艇とは違うな」


「やっぱり敵ですよね。まさかここが戦場になるとは思ってみませんでしたよ」


「ああ、俺もそうだ。ずっと飼育兵でいたかったよ」


「あ、それから攻撃の合図は司令部の15㎝榴弾砲の射撃だそうです」


「そうか、分った」


「あ、分隊長、敵艇が接近してきます」


 その大きな陸戦艇は徐々に島へと近づいてくる。


「大きさからいってライトクルーザーみたいだな。だけど1隻だけなんだな」


「見てください、識別旗が人間のですよ」


「ああ、あれはロックランドっていう新しい人間の街の旗だな」


「聞いたことないですね、そんな街」


「確か“轟雷のなんとか”とかいう2つ名の人間が立ち上げた街って聞いたぞ。元グリーンスキンがあった島だって話だ」


「へえ~、そうなんですね。このまま通り過ぎないですかね」


「ばれなきゃそれも十分に可能性はあるな」


「分隊長、あれ見てください。偵察ですかね」


「ああ、あれは装甲艇だな。まずいな接近してくるな」


 その時突如、島の一部のトーチカから機関銃の射撃が始まった。


「あ、どこかのバカが緊張感に耐えられずに撃ちやがった!」


 その機関銃の射撃を皮切りに、島内から一斉に射撃が始まってしまう。


 そうなるともう止める事はできない。


「まて、射撃の合図はでてないぞ、司令部の15㎝榴弾砲も撃ってない。俺は司令部に様子を見てくる。伍長、あとは任せたぞ!」


「はい、お気を付けて!」


 スケッチはトーチカを出ると司令部へと早足で進む。


 しばらく行ったところで自分のいたトーチカの37㎜砲が発射されたことに気が付く。


 振り返ってみると、発射された37㎜砲弾は敵の装甲艇の砲塔上部を滑るようにかすめ、金属の火花を激しく散らせるにとどまった。


「伍長め、命令を無視しやがって」


 慌ててスケッチが踵きびすを返してトーチカへと戻ろうとする。


 そこへ敵ライトクルーザーからの砲撃が飼育分隊のトーチカに直撃する。


 スケッチは物凄い爆風を全身に浴びて飛ばされ、激しく地面に体を打ち付けられて意識を手放した。


 しばらくして気が付いてみるとすでに砲撃は止んでおり、我に返ったスケッチは自分のいたトーチカを見る。


 するとそこは跡形もなく消し飛んでいた。


 そこはもはや元自分がいた37㎜砲のトーチカとは思えない状態であった。


 そこに残されているのはいくつかの砲の部品と、さきほどまで一緒にいた戦友の体の一部であった。


 スケッチは歩こうとして初めて自分が足を負傷している事に気が付く。

 それでもなんとか足を引きづりながらも司令部までたどり着くことができた。


 しかし司令部も半壊状態であり、誰もいない。


 そこには無傷の15㎝榴弾砲が鎮座していた。


「これ……故障なのか」


 そう、司令部の15㎝砲は最初の1発目で故障してしまい砲弾が飛ばせなかったのだ。

 ここにあった15㎝砲でさえ、一線から退いた旧式な武器だったのだ。


 司令部のその周りのトーチカもすべて破壊されまくっていて、それを見たスケッチは急に地底湖の“あるじ”が心配になり、なおも足を引きづりながら地底湖入り口へと向かう。


 そしてその途中で上陸した敵兵士に遭遇してしまう。


 何の武器も持っていないスケッチは投降するほかなかった。


 捕虜の身となったスケッチだったが、それは想像したものとは全く違った。


 なんと捕虜である自分に治癒のポーションを与えてくれたのだ。


 ガンビアでは決してそんなことはありえなかった。


 ポーションを使えるのは将校だけであり、しかも戦時ではそれも制限されるからだ。


 スケッチのような下士官がまず使えることはない。


 ましてや敵の捕虜に対して使う事など考えられない。


 ただ、生き残った味方兵士で5人だけがなぜか待遇が違う兵士がいた。


 その5人は長い棒に縛られており、それはまるで屋台で撃っている串焼き肉のようであった。

 その5人に関しては全員が股間に重傷の傷を追っているらしく、ポーションでさえも効かなかったようだ。


 スケッチはそのゴブリンの捕虜の1人と目が合うのだが、自分でも理由はわからないが、すぐに視線をそらしてしまった。


 ただ、ただ、その哀しそうな表情だけが脳裏に焼き付いた。


 その5人を管理しているのがエルフらしい双子の姉妹なのだが、なぜか他の捕虜はその2人とは目を合わせない様にしているらしく、スケッチもそれに従った。


 しばらくすると尋問を行う運びとなる。


 捕虜の中で一番階級が上だったのが他でもないスケッチだったため、尋問には彼が選ばれた。


 スケッチは狭い部屋に通される。


 そこで先ほど見たエルフの姉妹がすでに部屋の中で待機していたのだが、その恰好が見たこともないマスクを付けた格好だった。


 服装な体にぴったりと張り付くような黒い革製の服を着ている。


 それを見た時にスケッチは、これから始まる尋問という内容を想像して恐怖した。


 椅子に縛られると口に大量の布の様な物を詰められる。


 そうなると一切声も出なくなった。


 スケッチの脳裏には『拷問』という思いが浮かぶ。


 しかしスケッチを連れてきた人間が声を掛けると、口に詰められた布のようなものは取り出され始めた。


 少しほっとしたスケッチだったのだが、エルフのもう一人がスケッチのズボンを下ろし始める。


 まだ口には布のようなものが残っている状態だったので、それに対して声も出さない状態だった。


 ただ足をばたつかせて抵抗しようとしたのだが、股間にひんやりとしたナイフをこっそり当てられ、そんな抵抗さえもできなかった。


 その時の悪魔の様なエルフの表情は、一生忘れないだろうとスケッチは思った。


 そして先ほど見た、股間に重傷を負った串焼き肉のようなゴブリン兵士を思い出す。


 もがれるのか! 


 スケッチは今まで生きてきた中で、最大の恐怖を感じた瞬間だった。


 しかしそれも人間の男が間に入ってくれて九死に一生を得た。


 スケッチは何度もお礼を言う。


 その後わかったことだが、スケッチが尋問時に口に詰められたのは人間女性の下着だったらしい。

 それを知ったスケッチはエルフの考えは一生理解できないと思った。


 そのあとすぐにスケッチは色々と人間の男に質問されるのだが、至って親切であったと感じていた。


 そしてどういう訳か地底湖へと案内されることとなる。


 その時点でスケッチは完全に人間を信用していた。

 エルフはに関してはその逆だったのだが。



 スケッチは人間達を地底湖へと案内した。


 人間達と一緒に別のゴブリンの兵士もいたのは、スケッチにしたら驚きだったようだ。


 そんな中『魚』を見たいらしく、餌をやってくれと人間に言われる。


 そこでスケッチは捕虜になって以来餌をやっていないことを思い出す。


 ただでさえ餌の量を制限していたのだ。


 きっと『魚』達はお腹を空かしているだろうと思い、餌を与えらられることに逆に感謝の気持ちさえ持った。


 スケッチは心良く引き受けると、餌を水に投げ込んだ。


 すると2mほどの『魚』がそれに跳び付いた。


 様子から見るに、相当お腹を空かしているようだ。

 しかし警戒しているのか、その時は1匹しか出てこなかった。


 続いて人間に今度はもっとたくさん投げ込んでくれと言われる。


 珍しい生き物だけに、人間はもっと『魚』が見たいのだろう。


 スケッチは『はい、分りました』と答えると両手に餌を抱えて水に近づく。


 そうすると先ほどよりも水面が慌ただしくなる。


 スケッチは『これは“あるじ”が姿を現すかな』と内心期待を持つ。


 そこでスケッチは期待を込めて、水中に潜む“あるじ”に向かって声を掛けた。


「お~い、餌を持ってきたぞ~」


 スケッチの心の中には『ひもじい思いをさせて悪かったね』という“あるじ”に対しての謝罪の気持ちで一杯だった。


 その声を掛けた瞬間の出来事だった。


 水面から突如5mはあろうかという巨大魚が躍り出た。


 それはまさしくスケッチが待ち望む“あるじ”そのものである。


 しかし無情にもその巨大魚の“あるじ”はスケッチの頭からガブリと喰らい付くと、膝から上を食い千切り水中へと消えていく。


 地底湖の水際にはスケッチの膝から下だけが立ち尽くしていた。


 しかしそれもしばらくすると他の『魚』の餌となり、水中へと消えていくのだった。


 その後、人間達は彼の死よりも『魚』という珍しい物の飼育方法が分らなくなったという事に嘆きながら、地上へと戻って行った。


 彼ら人間にしたらスケッチの命などほんの日常の一コマに過ぎない。



 なぜなら、常に戦争が隣合わせの世界だから。



 そしてこの世界での「命」は軽い。






 こうしてスケッチの飼育兵としての生涯は閉じるのだった。




読んで頂きありがとうございました。



本編をまだ読んでいない方がいらしたら是非、本編もよろしくお願いします。



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