表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

6日目


「師匠はいったい、何者なんだろうか?」


 実は、これはわが村の最大の謎であるとされている。

 腕っぷしが強くて、魔法に造詣が深い。他の知識にも精通しており、師匠のアドバイスで畑が元気になった、肩の痛みが取れた、などの声はしょっちゅう聞こえる。しかし、時々ではあるが一般常識に疎く、とんでもないことをやらかしたりする。

 どこぞの貴族ではないか?しかし、それにしてはあまりに野性味が強い。ではどこかの騎士か?いいや、騎士ならあそこまで魔法に詳しくないだろう。じゃあ魔法使いか?でも喋る言葉が正統語(※1)である。ならば司祭様?いやいや―――っと、憶測が憶測を呼んでいる状態である。


 ところで、なぜこんなことを書いているかというと、師匠の謎がさらに深まったからである。


 そう、確かに師匠は昨日、「明日は良いところに連れて行ってやろう。」と言っていた。

 そして今朝、まだ日が昇りきっていないうちに、旅衣装に着替えた師匠に連れられて来たのは、いつも修行で使う山の頂上。


「確か…ここをこうして…。」


 着いてすぐ、何もないところで何かを探すような手つきを始める師匠。よくわからないのでその様子を眺めていると。


「…最後に………こう!」


 いきなり扉が現れた(・・・・・・・・・)


「…へぁ?」


 目の前で起きたことがよくわからず、思わず変な声が出てしまったのは、ご愛敬だろう。


「さあ、行くぞ。」

「ま…待ってください師匠!なんですかコレ!?というか、どこに繋がっているんですか!?」

「うん?そういえば言っていなかったな。妖精郷(※2)だ。」




 こうして私は今、おとぎ話に出てくる妖精郷に来ている。

 私自身、何を書いているのかわからない。けど、確かにここは妖精郷なのだ!

 今も、私の肩に二人、この日記帳の上に五人ばかり乗って、興味深そうに見られている。(ところで、妖精も一人、二人といった数え方でいいのだろうか?)


「数え方、合ってるよ!」


 だそうだ。




 ダメだ、自分で書いていて頭が痛くなってきた。急展開が過ぎる。これが小説なら、読者がついていけずに、口が開きっぱなしになってしまっているだろう。


 でも、私は確かに妖精郷の女王陛下に挨拶もしたし、妖精たちのご飯もいただいたのだ。

 ご飯は花の蜜や果実ばっかりで、ほっぺたが落ちそうなほど甘くて美味しかった。どうやら、妖精はお肉を食べないらしい。聞いてみたら、「あんな塩辛いもの食べないよ!」と笑われてしまった。

 人間的には、甘すぎるのもどうなのかと疑問である。今日は初めてだったからいいけど、毎日あの食事だと飽きそう。


 さて、今日はここまでにしてもう寝よう…と思っているけど、一緒にいるフェアリーたちの目が輝いている。たぶん、寝るのは遅くなってしまうだろう。


※1 教会で好まれる喋り方。神々の言葉であり、この世界でもっとも美しい言葉とされている。魔法使いは、魔力が乗りにくいとかであまりこの言葉を使いたがらない。


※2 妖精の生まれ故郷にして隠れ里。普通の人間に入れる場所ではない。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ