5日目
今日は、水を汲みに行くときに面白い噂を聞いた。
なんと、近くの街にサーカスの一団が来ているらしい。昨日来ていた行商のおじちゃんの情報だ。
しかも、次の街に行くために、この近くを通るらしい。それとなくおじちゃんがこの村のことを宣伝しといてくれたらしい。全くもって商売上手だ。今度、何か余計に買ってあげよう。
そんなことを水汲みに来ていたアンちゃんのお母さんに話したら、複雑そうな顔で「クレオちゃんは賢いけど、もうちょっと素直になっていいんだよ?」と言われた。よく意味が分からず首を傾げたら、今度は諦めたような、それでいて優しい顔をして頭を撫でられた。
お母さんって、こんな感じなのだろうか。
その後、ちょっとむくれたアンちゃんが「私もお話しするー!」と入り込んできたので、ずっとサーカスにはどんな人たちがいるのだろうという話をした。
私の予想は全身毛だらけの大男、アンちゃんの予想は身分を隠して旅をする道化師。
「え?道化師の人が身分を隠しているの?」
「うん!実は道化師の人は王子様で、事情があってサーカス団の一員として旅をしているの!」
「へぇ…事情って?」
「え?えっと…お嫁さん探しとか!」
時々、アンちゃんの考えには驚かされる。私には無い発想だった。でも、私が毛だらけの大男と言った時にはアンちゃんが目を丸くしていたので、きっと向こうも同じように思っているだろう。
「ふむ、クレオはアレだな。夢がないな。いや、夢が男の子らしいのか。」
帰って井戸でのことを話したら、こんなことを言われた。
「…そうだな、明日は良いところに連れて行ってやろう。準備があるから、今日の修行は中止だ。」
と言い残して、師匠はどこかへ出かけてしまった。
急に空いてしまったのですることがなく、仕方ないので本を読んで過ごした。
あんまり、非常識なことを思いついてないといいなー。