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自分は土でもいじってますね。  作者: かつじん
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プロローグⅡ

「よくいらっしゃいました、異世界の民よ。そして、ようこそ。貴方がきっと私の世界に招く、最後の存在となることでしょう」


目の前の美女はそう自分に告げてきた。その言葉を聞いた時、生前自分が好んで読んでいたライトノベルのジャンルの一つである、"異世界転生もの"を思い出していた。ただ、それよりも彼女が言った内容が気になった。

「最後の存在・・・ですか?」

「はい。今まで多くの存在を転生者として私の世界へと招いてきました。しかし、貴方たちが言う所の500年前程の話ですが。そして、私の世界に転生者として迎えるのは貴方で最後になるでしょう。」

「それは、また・・・何故でしょうか?」

「簡単な話です。以前に大量の転生者を世界に招いた事で、世界に過干渉してしまった煽りで、誰かを転生させるにあたって、ある程度時間が必要になったのです。」

貴方の次が居たとしても、900年後位になるでしょうが。と、彼女は付け加える。

「それに・・・・・」

「それに?」

「きっと、その900年の間に私の世界は滅びてしまいますから」

彼女は少し寂しそうな笑顔を浮かべて、そう言うのだった。


聞いてみると、話はこういうことだった。

彼女の世界は、RPGの舞台として御馴染みのファンタジー感溢れる物だった。

ドラゴンを代表とした魔物や魔族が存在し、人間やエルフ、ドワーフ、獣人といった亜人の人族に加え精霊なども存在している。世界には魔素(マナ)が満ちていて知能の高い生命体はやがて自身の体内に魔力を宿し、魔法が生み出され、科学ではなく魔法を主体として文化を発展させてきた。ちなみに、魔族とは魔物が進化した結果として、人間や亜人の様に高度な知能と思考能力を得た者の事を言うらしい。魔族は元々魔物だった為、人間や亜人達とは文化的な違いや、諸々の価値観の違いからよく衝突していた。魔族側にドラゴンといった上位存在が加わらなかったこともあり、魔族と人族の争いは膠着状態を保ち続けていた。しかし、繁殖のスピードが早い魔族は彼らの優れた身体能力も相まって、人族を追い込み始めた。そんな中、今から500年ほど前、ある人間の魔導師が人族全体に向けてある考えを発表した。


自分達の手で、どんな魔族をも滅ぼす存在を召喚し、我々人族に栄光をもたらそう。


当時の人族は、自分達が滅びるかも知れないという不安から、その考えを全面的に支持することになった。人間、エルフ、ドワーフ、獣人と種を問わず良質な魔導師達が集まった。日々、術式を吟味し、改良し、寝る間も惜しんで彼らは術の開発に取り掛かった。そして、その術は完成してしまう。いや、正しくは不完全なまま、完成品として認識されてしまったのだ。


 その術は当時、人族最大の都市で発動された。その場所には、この世紀の瞬間を目に焼き付けようと、各地から研究に携わって居なかった魔導師達や、精霊と会話出来る巫女といった多くの才あるもの達が集っていた。

そんな中、発動されたその術は発動した魔導師たちの魔力を、次にその生命を一瞬のうちに食い尽くした。しかし、それでは飽き足らず、周りにいた魔力的な素養の高い人々が次々と食い尽くされた。そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中、生れ落ちた一つの存在が"魔神"である。

 "魔神"とは人族が勝手にそう読んだだけであって、正しくは神様でもなんでもない。形をもって、質量をもって暴れまわる魔力の塊である。

数日も経ずに、"魔神"によってその都市は滅ぼされた。ここで、人族が柔軟に行動できたことは褒めるべきだろう。人族は魔族と手を組むことに決めたのだ。魔族側も突如現れた"魔神"によって既に無視できないほどの損害を受けていたのだ。彼らからすれば、"魔神"も人族もどちらも敵であるが危険度の違いから人族と"魔神"の対処が終わるまで手を組む事には異論がなかったのだ。そして、今回ばかりはドラゴンといった上位存在も参加することになった。


そうして、"魔神"とそれ以外の種族という構図の戦いが始まった。

その戦いは熾烈を極めた。召喚の際に優秀な人材を根こそぎ持っていかれた人族はともかく、強靭な身体能力を誇る魔族でさえも"魔神"の進攻を食い止める事は難しかった。

そんな中、人族のなかに強大な力を持った存在が何人も現れてきた。彼らこそ転生者である。

彼らは転生の際に与えられた力を用いて"魔神"と戦った。その戦いの影響で世界の地形は大きく変わってしまったらしい。そんな戦いが40年近く続き、ようやく"魔神"を倒すことが出来た。

しかし、その爪痕はあまりに深く、後世に多大な影響を及ぼした。

中でも一番痛手だったのが精霊の数が激減してしまったことだ。精霊とは世界に満ちる魔素(マナ)を調整し彼らの属性に見合った加護を与えたり、自身の気に入ったものに祝福を施したりする存在だ。

その加護は極めて強力だった。なので、"魔神"との戦いにおいて、精霊を味方につける力をもった一部の転生者達のによって各地から精霊たちが戦いのために動員されたのだ。一つ、また一つと力を使い果たした精霊たちは眠っていった。これにより、精霊たちの祝福を失った大地や河川、森が激増した。

結果、土地は痩せて、河川や湖、池は干上がり、生命を育む土台が崩れつつあるのだ。

また、魔素のバランスもおかしくなり、魔物は凶暴化し、魔族や人族にも過剰な魔素による悪影響が出始めたらしい。再生しようにも精霊を再び眠りから起こす方法を唯一知りえた巫女達は食い尽くされてしまって、その方法も失われつつあった。その上、転生者を頼ろうにも、彼らは既に息を引き取ってしまっていた。

さらに、"魔神"の撒き散らした高濃度の魔素による汚染も環境の衰退に拍車をかけた。



――つまり、彼女の世界はゆっくりと滅びに向かっているのだ。


「――、と言うことなのです。」

「そ、そうなのですか・・・・・・」

普通、希望あふれる異世界転生において、まさかそんな重い事を言われるとは思わず、かなり動揺してしまう。それよりも、滅びを回避できない世界にどうして自分を転生させるのだろうか。そう思い、彼女に聞いてみた。

「あの、どうしても聞いておきたいことがあるんですが・・・・」

「?? なんでしょうか?」

「そんな世界にどうして転生させられるのでしょうか?世界を救えって事なのですか?」

「いえ。その・・・・・。そうですね、正直に話してしまったほうが貴方の為ですものね・・・。ええと、

貴方には世界の行く末を見届けて欲しいのです」

また偉い事を頼まれた。思わず、そんなことを考えてしまう。

「貴方の世界なのですから、貴方は世界の行く末を見届けられるのでは?それよりも、貴方ならば世界を救えるのでは?」

「そうですが・・・・。大雑把にしか分からないのです。私の世界の民がどの様に生きていくのかを知る為には、私の祝福を受けた転生者が世界に存在することが必要条件なのです。たとえそれが醜くても、私は私の世界の民がどう考え、どう生きていくのか、その最後まで見届けてあげたいのです。それに、世界を救って上げたくても私にはそんな大それた力はありません。見守り、貴方のような存在を導いて上げる事ぐらいしか私には出来ないのです。」

「そうなのですか・・・・。え、でも。世界が滅ぶのは900年程後なのですよね?行く末なんて見届けられるかどうか・・・・」

「大丈夫です。私の世界にはエルフといったほとんど寿命といった概念が無い存在も居ます。貴方の向こうでの体は私が特別に作って用意しますので、寿命は気にしなくても大丈夫ですよ」


(いや、気にするなと言われましても。)

改めて考えてみると、転生した所で自分は死ぬ為に生まれ変わるようなものではないか。と、思うと同時に、もしこの話を断った場合死んだ身である自分はどうなってしまうのだろうと考えてしまう。もし、天国や地獄といったものが存在せず、自身がこのまま消えてゆくのみの存在だとしたら、それはごめんだ。それならば、900年という長い長い余剰の時間を選んだほうがましだ。


「分かりました。どうこうできるとは思いませんので、せめて貴方の世界で精一杯生きさせてもらおうと思います」

「!・・・・、そうですか。そういってもらえて安心しました。正直、こんな役目は誰も引き受けたくないだろうと思っていましたから。」

「いえ。どうせ死んだ身ですし。新しい生を受けることが出来るのならばそれでいいかと思いまして」

正直な話、このまま消えてゆくのが怖いだけである。

「ただ・・・・・、自分はあまり積極的に人と関わっていくタイプの人間ではなかったので向こうの世界で大勢と関わっていけるかどうか・・・・」

「そこまで気負って頂かなくて結構ですよ。貴方が私の世界で生きてくれているだけで、私は世界を細かく見ることができますので・・・」

そんな事をしなければ自分の世界を細かく覗けない私は女神としてあれなのですが・・・と付け加えた。


(薄々感づいてはいたけどやっぱり女神なんですね。まぁ、納得ですが。)


「あと、先程言った貴方の体について前もって説明しておきますね」

彼女から、先程言われた"特別な体"について説明を受けた。

まとめるとこうだ。


1、自分の体はかなり頑丈に出来ている。エルフと同じく寿命という概念がほとんどない。

2、魔力の量がかなり多い。

3、人々の"死"について鈍化している。


3については女神曰く、「近しい人を作れば、死んでしまった時に貴方が苦しんでしまう」とのことだった。いくら頑丈な体を用意してもらった所で、そこに宿るのは平凡な日本人であった自分の精神なのだからこう言った制限は仕方が無いように思えた。


「――では、最後に貴方に《スキル》を授けますね」

そういうと彼女は水をすくい上げるような手の形をつくる。すると、彼女の手のひらから5つの光の塊が現れた。

「《スキル》ですか・・・?」

「はい。かつて"魔神"の討伐のために招いた転生者達にも授けた、いわば奇跡の力とでも言うべきでしょうか・・・。本来ならば一人にたいして一つか二つしか授けられないのですが・・・・。貴方はどうも器としては最上級の物をもっているらしく、5つまで授ける事ができるようです」


(それは良い。なんだ。自分もまだ捨てたものじゃありませんね。)

かつて"魔神"を打ち破った転生者でも1つか2つしか持っていなかった《スキル》を倍以上も手に入れられるとは。死んだ自分に言うのはあれだが、幸先が良い。


「これは、最後まで私の手元に残った《スキル》達で・・・・・。ええと、《肥沃化》《環境管理》《工作》《品種改良》《土いじり》の5つです。・・・・・・有力なスキルはたくさんあったのですが・・・かつての転生者に授けてしまっていたので、その、・・・・ごめんなさい」

見れば、彼女はとても申し訳なさそうな顔をしていた。

恐らく、自分はかなりがっかりした顔をしているのだろう。正直、今言われた《スキル》達にあまり魅力を感じなかった。だが、それは彼女が気負う事ではないだろう。強力な《スキル》をかつての転生者達に授けたからこそ、世界は辛うじて滅びずに済んだのだから。だから彼女を励ますように口を開く。


「大丈夫ですよ。さっきも言いましたが、二度目の人生を得られるだけでも自分は幸せ者でしょうから。それに――」

「それに?」


「自分の読んでいた物語なんかでは、そういった地味な力で世界を救ってしまうなんて、よくあることですから」


「・・・・。ふふっ。だとしたらとても喜ばしいです。――こんな我が侭な私の頼みを聞いてくれてありがとうございます。最後に私の世界に招く人が、貴方で・・・本当に良かった」

「900年は長いですが、精一杯楽しんで生きてみようと思いますよ」

「分かりました。繰り返すようですが、本当にありがとうございます。これから、貴方を転生させますが、最後に何か言っておきたいことはありませんか」


その問いかけに対し、間髪入れずにこう答えた。


「転生後の自分がパンツ一丁でないことだけ、どうか、お願いします」


正直、今までかなり恥ずかしかった。






かなり、gdgdなプロローグになってしまいました。

やはり、実際に文字にするのは難しいものですね。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました。

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