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姫とゲームスタート

目を覚ますと、目の前にシウの顔がドアップで現れる。


「なっ・・・」

「きゃっ・・・・」


動揺した声に反応したシウは両手でがっちり固定していた僕の首を思いっきり捻ってくる。

対応も出来ないままグキッと音がし、首筋に痛みが走る。


「ぬはっ」

「はっ。ごめんなさい」


自分のやったことに気づいたシウは僕の頭を離し全力で後ずさった。

僕の頭は支えを無くし、重力に従って落ちて行く事になり最終的には地面にゴンとぶつかり頭に痛みが走る。

痛みに涙が少し出る、情けない話だがお陰で冷静になることが出来た。

動揺しているだけで受身が取れないあたり僕もまだまだ未熟だな。


さて僕を放り投げてくれたシウはと言うと少しはなれたところでうずくまっている。

どうやら、足がしびれていて痛いようだ。

彼女のお仕置きひとまず置いておいて、それよりも現状の確認をしなければ。

起き上がり少しまだ痛む首に手を当てあたりを見渡す。

木製の部屋には少しの収納家具はあるが、かまどなどの調理場所は無いためおそらく避難所のような所と予想を立てる。


危険もなさそうだ。

幸い僕とシウ以外他の人は居ない様だしそろそろ彼女にお仕置きしないとな。

立ち上がりシウのほうへと歩みを進める。


「な、何ですか」


どうやらシウも異変に気づいたようで警戒している。

だけど、逃がしはしないよ。


「いやいや。足が辛そうだからマッサージでもしてあげようかと」

「い、いえ。遠慮しときます」


シウは顔を青くして四つんばいで逃げようとしているが、そんなの僕の前では無力なわけですぐに捕まえる事ができた。


「ご、ごめんなさい。もうしないので許してください」

「いやいやただ単にマッサージするだけだよ。酷い事なんでするわけ無いじゃないか」

「嘘。その顔は絶対、嘘ついています」

「酷いなぁ。傷つくじゃないかっと」


強めに片手でシウの足をつかみもう片方の親指でシウの足の裏を強めに押す。


「にぉああああああああああ」


シウはビクッと体を痙攣させ、悲鳴が上げる。

だが、これぐらいで辞めてやらない。

それから一定リズムで足の裏を刺激し続けてやる。

そのたびシウは悲鳴と痙攣を繰り返している。


それからどれだけの時間が経った解らないが、ここらで勘弁してやることにした。

現在のシウはあまり人様にお見せできないほど酷い状況になっている。

やりすぎたかと僕自身が若干引くぐらいだ。


「鬼、悪魔、変態」


シウは力なくポツリと言った。


「どっちが、変態だ。気を失っていた僕にシウは何をしようとしていたのかな」

「それは・・・その・・・・」


問いかけに対しシウは答えらず顔を真っ赤にしてしまう。

その反応を見てため息を付く。


「あのな。何を気にしてるのか知らないが、何処か焦ってないか」

「それは・・・・そうかもしれません」

「別にどうこうしろとは言わない。事情の知らない奴に言われてもムカつくだろうし、だけど僕にも気持ちが有るんだ。だから、そういう事は一方的にされても困る」

「そうですよね。ごめんなさい」


自分で言ってて恥ずかしくなってくる。

シウはシウでシュンと落ち込んでいる。


「説教はここまでだ。で、ここは何処なんだ」

「えっ・・・えっと・・・」


落ち込んでいたシウは僕に急に話を振られた成果どぎまぎしている。


「別に僕はシウを注意しただけで攻めた訳じゃないんだから、そう落ち込む必要は無いよ。次から気を付けてくれるだけでいい」

「えっ、はい」


そうは言った所ですぐ気持ちを切り替える事が出来ないらしくシウの表情はまだ険しい。

こうなったら仕方ない最終手段だ。

シウに近づき彼女の頭を撫でる。

ついでに彼女のフワフワのウサ耳も丹念に撫でる。


「な・・な・・・な・・・」


撫でているとシウの顔はみるみる真っ赤になり、険しい表情も緩和された。


「少しは元気でたか」

「はひぃ」


シウは両手を頬にあて緩くなった表情を浮かべる。

喜ばせようとやって見たものの、やりすぎたようだ。


それからシウが冷静になるまでにかなり時間がかかった。


「で、改めて聞くがここは何処だ」

「ここは、始まりの森にある小屋ですね。初めてこちらに来る人は、まずここに転移させられます」

「そうなのか。その割には誰も居ないが」

「それは、この空間その物が個別に区切られているためですね。原理は不明ですがそうなっているそうです」

「こちらに来たペアごとに家が一軒ずつ割り振られているというイメージで良いのか」

「ちょっと違いますが。概ねそんな感じですね」

「ならここで色々な話が出来るな」


特に、この世界については色々聞きたい事があるんだよな。


「それは、無理ですね」

「どうしてだ」

「この空間にとどまり続けるのは無理なのです。一定時間が過ぎると強制的にここから追い出されます」

「じゃあ追い出されるまで話せばいいか」

「それも無理ですね。そろそろ追い出されます」


馬鹿やっている内に大事な時間を潰してしまったのか。

せっかく落ち着いて色々と聞けるチャンスと思ったのに。


「そう言うことならさっさと町に行ったほうが良いのか」

「はい。安全な町で話したほうがいいと思います」

「ここから、町は近いのか」

「そうですね。そんなに距離が離れているわけではないのですぐ付くと思いますよ」

「ならさっさと町に行ったほうがいいな」


ここに居ても仕方ないので僕達は、この小屋から外に出た。


小屋の外は鬱蒼とした森だった。

肌に付く湿った空気に、草木の青々とした特有の匂い、所々から零れ落ちている木漏れ日。

それは、まるで現実世界と大差ない光景だった。

ここまでの物とは僕自身思ってなかったぞ。


『【ドS】の称号を手に入れました。褒賞スキル:ドSの精神』

『【変人】の称号を手に入れました。褒賞アイテム:変人のバインダー』


周りの光景に感動していた僕をあざ笑うかのように、無機質な女性の声が頭の中に響く。

なんなんだよ【ドS】と【変人】って不名誉極まりないじゃないか。

そもそも、称号って何だよ。そんな情報は説明書には書かれてなかったぞ。


「もしかして、レイさんも称号を手に入れましたか」

「解るのか」

「突然もの凄く嫌そうな顔をしていたのでもしかしてと思いまして」

「そもそも、称号があるなんて知らなかったぞ。事前情報にも無かったし」

「そうですね。なら歩きながら簡単にお話しましょうか」

「あぁたのむ」


シウの提案に頷き、僕たちはその場を後にした。


「それではお話させていただきます。と言っても基礎知識ぐらいしか教えられませんが」

「それでもいい。教えてくれ」


こうして道中のシウ先生による称号講座が始まった。


「まずは何故レイさんの事前情報に無かったかですが、これは推測ですがこの称号と言うものがごく最近になって出来たからだと思います」

「つまり、少し前まではそんなものはなかったと言う事か」

「その通りです。恐らくレイさんが得た事前情報はそれ以前の物と考えられます」

「そうなるのか」


なんと言うべきか・・・。

とりあえず運営仕事しろ。


「次に称号についてなのですが、ある特定の行動を起こしたときにもらえる物らしいです」

「だろうな。そこに関してはだいたい予想は付いてた」


ドラゴンを倒せば称号でドラゴンキラーが貰えると言った感じだろう。

普通、称号と聞くとそう言うものを想像するだろう。


「称号には褒賞があり、大きく分けて【褒賞アイテム】【褒賞スキル】【褒賞システム】この三つに分類されます」

「褒賞システムって何だ。他の奴は名前から解るが」

「すいません。そこまでは解ってません」

「そうか」


最近出来ただけあって、まだ内容が詰め切られておらず未定なのか。

だが、枠組みに有ると言う事は何かしらの物は用意されているのかも知れなし・・・。

調べられるなら調べてみたほうが良いかもしれない。


「なぁ。その、褒賞システムについて調べる方法はあるのか」

「そうですね。恐らくですが図書館にならあるかと思います」

「図書館は今向かっている町にもあるのか」

「はい。簡易的なものですが存在しています」

「なら、一度行って見た方が良いかもしれないな」

「そのほうがいいかと思われます。私も称号についてこれ以上のことは知りませんし」

「そうなのか」

「はい。お役に立てなくてすいません」


シュンと落ち込むシウ。

そこまで落ち込まれてもこまるんだが。

それよりもそれぐらいの情報しか与えてられてないと言う方に驚いた。

その場のノリで作られたものじゃないよな。もしそうなら変なバグとか出そうで怖くて使えない。

これは、確実に調べたほうがよさそうだ。

だが今はそれは置いておこう、それよりも背後にいる人物のほうが問題だ。


「なぁ気がついているか」

「はい。後をつけられてますね」


どうやら良くないものを呼び込んだらしい。


「人数は現時点で三人か」

「そうですね。ですが仲間を呼ばれる可能性も有りますね」

「十中八九、PKだよな」

「そうですね。恐らくはそうだと思います」


さてと、じゃあどうにかして迎撃しますか。

ここで奴等を撒く事も出来るのだが、そうすると他の奴が狙われる可能性がある。

それだけは避けたい。


「シウ、少し走るぞ」

「町まで逃げますか」

「いや迎撃する。奴等を正確に確認出来るポイントまで行こうと思う」

「解りました」


僕とシウが走り出すと尾行していた奴等も無言で追いかけてくる。

やはり、PKで間違いないようだ。

シウに指示を出し本来のルートを反れ獣道へと逃げ込むと、深い茂みに身を隠した。

PKの奴等も同じく獣道へと入ってきた。

しかし、身を隠した僕等を見つける事が出来ないのだろう。辺りをキョロキョロと見渡し探している。


「奴等がどこに言ったかわかるか」


戦士が盗賊に声をかけるが盗賊は首をふる。


「仕方ない。こうなったら、手分けして何処に隠れたか探すぞ」


戦士が二人に指示を出し、二人はそれに従っている。

見当違いな場所ばかり探しているけどな。


「奴等が諦めて何処かに行こうとした時には、わざと音出し奴等をこっちに呼び寄せるからな。それまで待機だ」

「解りました」


逃がすつもりは毛頭無い。

では、勝つための情報分析をはじめますか。


まず、職業の目星からだ。

片手剣でプレートアーマーを着た男が【戦士系】、杖にローブを着た男が【魔法使い系】、短剣に布の服を着た男が【盗賊系】だろう。

まぁこれは見たままで解りやすい。


次に奴等のスペックだが運動能力はあまり高かくなく、おつむもあまりよろしくない。

運動能力は動きを、おつむは僕等の行動に対する奴等の対処をそれぞれ見ればすぐにわかる。


「いい加減。でてこいや。卑怯者」


戦士が叫んだ。

どうやら頭に血が上りやすいようだ。


実戦経験も全く無いのだろう。

お粗末な尾行の上に、奴等には致命的な欠点がある。

まず、戦士だが事チームのリーダと思われる彼は血が上りやすく周りの状況把握が出来ていない。

次に、盗賊は感知能力が高そうなのに僕等を見つけれない上に辺りの警戒も杜撰だ。

最後に、魔法使いは遠距離主体な筈なのに僕等の攻撃範囲に普通に入ってきている。

この戦いはイレギュラーが無い限り普通に勝てるだろう。


シウに今まで分析した結果を話すとコクンと頷いた。

「私もそう思います。ただ気がかりなのは彼等のバックに誰かが居る可能性があります」

「如何してそう思った」

「彼等の装備、アレはここら辺ではランクの高い部類にあたります」

「奴等が持っているのが不思議と言うわけか」

「はい」


装備かそこまでは気が回らなかった。


「まぁいずれにしても、潰すしかないだろう」

「ですね」

「さし当たって、役割分担をしよう。僕が戦士と魔法使いを受け持つからシウは盗賊を頼む」

「解りました」

「万が一、僕たちが勝てそうに無いなら一旦逃げ隠れ奇襲で倒す」

「はい」

「じゃあ行動を開始だ」


身を隠したいた草むらから僕達は姿を出す。


「僕達に何か用ですか」

「あぁ、やっと姿を現したな」


奴等はニヤニヤと下種な笑みを浮かべこちらを見た。


「で、僕等の後を付回して何の用だって聞いてんだ」

「あっ、口の聞き方には気をつけろよ。まぁいい。有り金を全部よこせ」

「断る。なんでお前等なんかにやらないといけないんだ」

「あっ、テメェ調子に乗ってんじゃねーぞ。おい、お前等やっちまおうぜ」


戦士が片手剣を抜刀、それを合図に僕を除く皆が戦闘態勢へと入った。


「どうした、抜かないのか」

「お前なんか素手で十分だ」

「いちいちムカつく野郎だ。死に晒せ」


戦士が僕に向かって片手剣を何度も振ってくる。

だが、そんなもの簡単に避けられるので全て避けてやった。

それにしても、太刀筋だけは素人だとは思えない。

これが、スキルによる補正だろうか。


戦士の単調な攻撃を避けつつ盗賊と交戦しているシウの様子を伺うと攻撃を簡単に避けカウンターを入れている。

これなら大丈夫そうだ。


「よそ見してるんじゃねぇぞ」


戦士は怒鳴るが、よそ見してても避けられる攻撃をしてくるこいつが悪い。

避ければ避けるほど攻撃が単調になっていく。

冷静を欠いている証拠だな。


「このやろぉ!!!」


戦士の渾身の攻撃は樹に刺さり遮られ、おまけに変に力が入っていたせいかパキンと言う音共に相手の武器が折れる結果になった。

まぁそうなるように移動したんだけどね。


「なっ」


動揺する戦士の腹に思いっきり蹴りを入れ後方へと吹き飛ばす。

それと同時に、魔法使いに向け走る。

どうやらシウの方も決着が付いたみたいで、彼女も魔法使いに向けて走り出した。


魔法使いはと言うと、どうすればいいか迷っているのだろう何も出来ずに固まっている。

勝ち目が無いんだから逃げだせば良いのに。

魔法使いが攻撃をしようとした時にはすでに遅い。

僕は彼の持っている武器をシウは魔法使い自身をそれぞれ殴りつけた。


「ぐっ」


蛙がつぶれたような悲鳴をあげ吹き飛ぶ魔法使い。

彼の持っている杖は残念ながら折れなかった。

しかし、まぁいい。目標は果たした。

シウに殴られた魔法使いはどうやらHPが0になったのだろう吹き飛びながら光の粒子になって消えていった。


これで残すは、あの戦士だけだ。

刀を鞘から抜き吹き飛び気を失っている戦士へと向かう。

そして、気を失っている戦士に軽く蹴りを入れ起こす。


「う、うーん。ここは・・・どうなったんだ」


戦士は状況を把握しようとあたりを見渡し僕等に気づいた。


「お前達よくも―――」


それ以上は言葉が続かなかった。

まぁそれも仕方ない。なんせ首に刀身を当てつけてるからな。


「残るはお前だけだ。どうする」

「お、おまえら俺に手出しをしたらドラグンさんが黙ってないぞ」

「そうか。ならドラグンとやらには気をつけるよ」

「なっ」


間抜け面を見せている戦士の首元に当てている刀身をためらい無く引き、切り裂く。

それだけで戦士は光の粒子となって消えていった。


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