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姫とスキル

目の前に現れた物はおなじみになった半透明のウィンドウだった。

そこにはたくさんのスキル名と思われる一覧が書かれている。


「最後はスキル選びよ。この中から12個スキルを選んでね」

「あぁ。わかった」


大量にあるスキル一覧を確認しているのだが、どうも僕のスキル選びをシウが気になるらしく先程からちらちらと仕切りにこちらを見てくる。

そんな様子を見て居ると流石に『気になるなら見ればいいのに』とは思うが、口には出さない。

口に出してしまうえば最後、異性と接触する事に抵抗が無いシウは僕に引っ付いて来るだろう。

それだけは精神的に避けたかった。

と言う訳で、シウの事はあえて放置しスキルを選んでいく事にした。

ゲームを始める前に有る程度考えておいたので、あとはそれにそって選んでいくだけの単純作業となる。

とは言え、これだけのスキルの中から探していくのは時間が少しかかってしまった。


「よし。選び終わったぞ」

「意外に早かったわね。どれどれ」


ドロシーはもう一つ半透明なウィンドウを作り出すとそれを確認し、さらにドロシーの背後からガンツとシウがそのウィンドウを盗み見ている。


ウィンドウを見た後の三人の反応はバラバラだった。

ドロシーはニマニマと笑みを浮かべ、ガンツは頭を抱え、シウは苦笑いを浮かべる。


「そんなにまずいかコレ」

「いやぁ。まずくは無いが、これはなぁやりすぎだろう」


ガンツは困ったように言ってくる。

僕が選んだスキルのラインナップはこうだ。


【幻術】【魔力操作】【付与】【裁縫】【鍛冶】【家事】【錬金】【調合】【工作】【大工】【農業】【鑑定】


12個のうち【幻術】【魔力操作】【鑑定】を覗く9個が生産スキルつまり、ものづくりに関するスキルになる。

【家事】が生産スキルになる理由は料理が生産に当たるらしい。


「どうしてこんなラインナップになってるんだ」


ガンツの疑問も最もだが、僕も考え無しでこんなスキル構成にしたわけではない。

と言うのもこのゲームにおけるスキルの立ち位置が問題だった。


よくあるゲームでは対応するスキルを持ってなければ武器を振る事も適わないと言うこともザラにあるみたいだが、このゲームは違う。

対応するスキルを持って無くても武器を振る事も、魔法を撃つ事でさえ出来てしまうのだ。

じゃあこのスキルとはどんな役割を持つのか説明書の文中を僕なりに解釈した結果、自転車の補助輪に似た物という結論に行き着いた。


そうと解ると選択できないものが出てきてしまう。

【剣術】【弓術】など武術に関するスキル、【武術スキル】。

【HP増加】や【速度上昇】などの基礎能力を底上げするスキル、【基礎スキル】。

この二種類は取らないほうが判断した。

理由は単純明解、僕には武術の基礎があるから下手に補助が入ると返って邪魔になる可能性があるからだ。


そうして残ったのが三種類。


【毒耐性】や【麻痺耐性】などの耐性を着けるスキル、【耐性スキル】。

【火魔法】や【幻術】などの魔法を使うスキル、【魔法スキル】。

【裁縫】や【鍛冶】などの生産を扱うスキル、【生産スキル】。


この中から選んで行く訳なのだが【耐性スキル】と【魔法スキル】は戦闘で便利すぎるためあまり取る気が起きなかった。

変わりに戦闘とは直接関わらない【生産スキル】の方に興味を引かれ、見事に偏ってしまったのだ。


この話をガンツにすると、なんとも言えない表情を浮かべてた。

一方シウはニコニコとドロシーはニタニタとそれぞれ笑みを浮かべている。

何故、二人はそんな表情をしているのだろう。


「あんたさぁ。頻繁にきませんみたいな事を言って置いたわりには割とガチでスキル選んでたわよね」


ドロシーの言葉で二人がなぜそんな表情をしていたのか理解できた。

『僕はあんまりやらないから』と言宣言した癖に行動が言葉とは逆だっためそんな視線を受けたのだろう。

要するに男版ツンデレみたいな感じに認識されてしまったのだろう。


「楽しみにはしているが、そこまででは無いぞ」

「またまたぁ」


三人の生暖かい視線がコチラを刺す。

すごくやっかいな事になっている。素直に発言した所で相手が勝手に違う意味で解釈しているのだからやりづらい。


「僕のことはもういいだろう。それよりシウのスキル構成を教えてくれないか」

「私のスキル構成ですか」


話題を変えるための苦し紛れの発言にシウは若干顔を引き攣らせる。

何か拙い事でもあるんだろうか。


「無理にとは言わないが」

「いえ、大丈夫です。お教えします」


シウが覚悟を決めたように言い、一つの半透明ウィンドウを出す。

そしてそのウィンドウを渡してきた。

そこには彼女が取得しているスキルが書かれていた。


【忍術】【風魔法】【裁縫】【家事】【鍛冶】【調合】【採取】【工作】【鑑定】【速度上昇】【運上昇】【毒耐性】


この12個のスキルを見て、何故シウが隠そうとするのか予測する事ができた。

シウの戦闘スタイルは恐らくアサシンと言われるものだろう。

アサシンと言うのは奇襲や暗殺など、相手を搦め手から攻めるのが得意な対人戦特化なスタイルの事を言う。

こう言うスタイルは好みが大きく分かれ、良い感情を持たれない可能性もあるのだ。

恐らくシウはそれを危惧したのだろう。


「ありがとう。参考になった」

「いえ。貴方のお役にたてなら嬉しいです。どうしますか、このまま私の全てを見てみます」

「・・・全てって、何」

「ステータス・・・それとスリーサイズですかね」

「っ・・・やめておくよ」

「冗談ですょ・・・」

「あのな・・・言ってて恥ずかしいなら言うなよ」

「確かに恥ずかしいですが、貴方になら・・・見られても良いのですよ」


シウは少し頬赤らめてモジモジ微笑みかけてくる。

この子はどうして偶に思い出したように積極的になるのだろうか。


「はいはい。気は済んだわよね。まったく人前でイチャイチャばっかりしちゃって」

「確かに今、そんな空気になっていたが、それは、そうなるように誘導されてだな」

「ご迷惑でしたか」


上目使いでこちらを見てくるシウに一瞬言葉が詰まる。


「いや、全然。全然そんな事ないぞ。」

「ほら見なさいよ。まったくもう爆発すればいいのに」


凶器にも等しいシウの視線に突っぱねる事も出来ず、なし崩し的にシウのフォローに回るしかなかった。

そして、その反応にドロシーはもっと不機嫌になる。

シウはシウで僕の答えに満更でもないご様子で体を軽くくねらせ妄想の世界へとトリップしてしまった。


「もう見てられないからさっさと、旅立ってくれないかな」

「散々この場をかき回してたお前が言うな」

「何とでも言うと良いわ。恋人が居ない私に対して当てつけの様に目の前でイチャつかれる私の身にもなってみなさい」

「だから・・・それは・・・。ガンツからも何か言ってくれないか」

「あー。まぁお前等が幸せなら良いんだが。人の目は少しは気にしような」


気まずそうに言うガンツ。

どうやら完全にアウェーらしい。

正直、拙い如何にかしてこの状況を打開しなければ。


「そんなに恋人が欲しいならドロシーもガンツと付き合えばいいだろう」

「ガンツとナイナイ。それは無いわ」


笑いながら言うドロシーに若干落ち込むガンツ。

おや。まさかこれはそう言うことなのか。

だが、ドロシーではあるまいし踏み込むこむなんて馬鹿な事はしない。

踏み込んでガンツまでも非協力的になられたら恐らく色々と詰む。


「そ、それより次に行こう次へ」

「これで終わりよ。さっき最後だって言ったじゃない」

「そ、そうだったな」


気を使い話を逸らそうとして失敗、そのせいでで若干気まずい。


「あっそうだレイ。これを持って行け今度はちゃんとした刀だ。長さも重さも変わってないから大丈夫だと思うぞ」


ガンツはその場の空気を変えようと努力してくれたのか刀を投げ渡してきた。

その刀を受け取り腰へと挿し帯刀する。


「大事に使わせて貰う」

「ほら、あんたも何時までトリップしてるのよ」


ドロシーはシウの肩を軽く揺らし現実世界に引き戻してくる。


「私は、何をしてたのでしょうか」

「知らないわよ」

「すいません。それで現状はどんな状態なのですか」

「後は、あんた達を送り出すだけね」

「うえっ。もうですか」


どうやらシウは流れをあまり理解していなかったらしく本気で驚いている。


「まったく、あんたはちゃんと出来るんでしょうね」

「出来るってそんなぁ」


呆れた感じで言うドロシーの言葉に対し何を想像したのか顔を仄かに赤く染めモジモジとしている。

シウが何を考えていたかなんて想像したくない。


「まったく、あんたは。レイ、こんな子だけどよろしくね」

「あぁ解った・・・」


場の空気が変わった気がして戸惑った。


「えへへ。ごめんなさい。でもレイさんに幸せにして貰います」

「あぁ。幸せになれよ」


シウもガンツも何時の間にかこの空気に馴染んでいる気がする。

いや、もしかしたらこれが本来なのかもしれない。

どうしよう。この空気についていける気がしない。


「えっと・・・シウを幸せにできるようにがんばります」


僕がそう言うとシウは嬉しそうに『えへへ』と笑みを浮かべ僕の左腕にしがみついてくる。


「なっ・・・」

「はいはい。じゃあ送るわよ」


動揺する僕を他所にドロシーは僕達を送り出す為に手を叩く。

すると僕達の体は光の膜に包まれる。

またこのパターンか。

眩しくて目を開けられず思わず目を瞑る。

それとほぼ同時に体が浮くような浮遊感を感じながらゆっくりと気を失った。


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