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夢と執事と

☆は物語に重要な場面になる予定です。

 彼女が興奮から収まるのを待って俺は契約をした。彼女の首には隷属の首輪が付けられており、俺はその首輪に3つの命令を加えた。逃げるな、生きろ、俺の命令には従え。そういった内容だ。


 「まさか本当に買っちまうとはな・・・。本音を言えば、お前のこの世界に対する認識を改めてもらおうと思って行ったんだが。まあ、結果的にはいい結果なのかもな?」


 奴隷商から屋敷まで送ってもらう際にコルネがもらした。


 「ああ、心配してくれてありがとう。この世界にも綺麗なところだけじゃなく、汚い部分もあるってことをコルネは教えてくれようとしたんだろ?」


 俺が面と向かってそういうと頬をかきながら、わかってるならいいんだよと言っていた。本当にいいやつだなアンタ。

 チラリと俺は後ろを見る。彼女の名はイルザ。LVは20でスキルは弓術、料理の二つ。彼女はエルフなのに魔法が使えないらしく、その点も金貨20枚で売ってくれた理由らしい。彼女は、黒いローブを羽織り顔を半分隠して俺達についてきている。その眼には先ほど見せた激昂の色はなく、再び生気のない眼に戻っていた。だが、一応の受け答えはしてくれるので助かっている、あまり命令をしたくないしね。

 コルネと喋りながら歩いていると屋敷に着いた。俺はその屋敷を見て、ああ前住んでた人は日本人だったんだなとわかった。だって完全に昔の日本家屋だったからだ。

 周りは西洋風の建物しかない中に、和風の建物が一軒、目立ってしょうがない。


 「じゃあ、俺は帰るぜ。あんまり無茶はすんなよ。」


 まだ聴きたいことはあるがかなり遅い時間の為、仕方なく俺はコルネに別れを告げる。その背中を見届けた後に、入り口の鍵を開け中に入る。手入れされていただけあって畳の匂いが懐かしい気持ちを起こさせる。


 (まだ一日経ってないのに・・・。もしかして寂しがってんのか俺。)


 感傷に浸っていたいが肝心なことに気付く。明かりはどうやってつけるんだ?俺はキョロキョロ見回しスイッチを探すが見当たらない。もしかして、


 「暗きを照らせ、ライト。」


 だったかなと思いながら姫様が唱えたとおりに唱えると、屋敷の証明が一斉に灯った。点いたのはいいが今度は消し方がわからない。まあとりあえず中に入ろう。俺は玄関で靴を脱ぎ中に入っていくが、イルザは玄関でたったままだ。俺はふとイルザの足元を見る。そういえば道具屋も閉まり靴は買えなかったな。このまま上がれば汚すから気を使っているのかな?


 「ちょっと、待ってて。」


 俺は制服のポケットに入っていたハンカチを濡らせる場所がないか探す。中に入っていくと中央にキッチンがあり蛇口と桶もあった。元いた世界の祖母の家を思い出し少し心がなごむ。俺は桶に水をため玄関に戻る、イルザはその場に立ったままだ。俺は入り口にイルザを腰掛けさせ、イルザの足を桶につけハンカチで拭く、他者が見ればどちらが奴隷かわからないだろう。ふとイルザが気になり上を見る。今まで感情を出したのはあの店だけだったが、こちらを見て目を丸くしてた。


 「どうかした?」


 俺は気になりイルザに尋ねる。


 「なぜだ?君は私を買ったのだろう?なぜ何も命令しない?なぜ自らが跪き奴隷の足を拭く?このままここで立たせておけばいいだろう?」


 「・・・確かに俺は君を買った。隷属の首輪もした。だからこんなこと言っても信じてもらえないかもしれないけど。俺は君を奴隷として扱う気はないよ。」


 「・・・変わったやつだ。」


 「はは、よく言われるよ。さあ上がって今日はもう遅いしこのまま寝よう。好きな部屋を使ってくれていいから。」


 「・・・奴隷に部屋をあてがうのか?本当に変わった奴だ。」


 イルザはそういいながら奥にある部屋に向かう。俺は一番手前にある部屋に入り畳の上で横になる。


 「・・・はあ。明日買い物行かないとな。下着とか服とか。布団ってあるのかな・・・」


そんな事を考えているうちに俺は深い眠りについていた。



 俺はその日夢を見た。黒い髪の男と白い髪の男が、それぞれの髪の色とは違う色の剣を持ち戦っている。

男達は互いに傷だらけだが、その表情は苦痛に満ちた顔ではなく笑顔を浮かべていた。屈託のないまるで幼子のような・・・。

 だがどうしてだろうか俺には二人の心がさめざめと泣いているようにしか見えなかった。


 【第一の封印が解けました。スキル、鑑定眼と身体強化を取得しました】



 誰かが俺の体を揺さぶる。起きなければ。頭では理解できるが体が反応しない。数分間してようやく体が動き出した。目を開ける。目の前にいたのは俺を覗き込むイルザの顔だった。


 「大丈夫か?うなされていたみたいだが?それに・・・泣いていたのか?」


 イルザの言葉を聞き俺は頬に手を持っていく。濡れてる、あの夢をみたから?泣いたのなんていつ以来だ?あれは初恋の相手に告白してこっぴどく振られたとき・・・いかん、泣きそうだ。

 俺は頭を振りながら上半身を起こし、スッと差し出されたイルザの手を取り立ち上がる。


 「あ、ありがとう・・・」


 思ったよりも柔らかい手にドギマギしながら礼を言う。その時玄関をノックする音が聞こえた。こんな朝早くに誰だ?俺は不思議に思いながらも玄関へ行き扉を開ける。そこには執事服を着た男の人が立っていた。


 「おはようございます、マサト様。私は陛下の命により、今日からマサト様の身の回りの世話をさせていただきますジルと申します。何なりとお申し付けください。」


 ジルさんは言い終わると綺麗なお辞儀をしてきた。俺は対応に困りイルザを見るが、イルザは興味なさそうな顔で見ていた。


 「ご心配なく。私はこの家に住んでいた50年前の勇者殿にも仕えておりましたので、我が家も同然です。」


 「失礼ですがおいくつですか?」


 「65でございます。では早速荷物を運ばせてもらいますね。」


いや、まだ許可してないんですけど・・・って言う前にすでに荷解きが終わってる!?何この速さ!?イルザもびっくりしてるよ!?


 「朝食はまだでございましょう?今から用意しますのでお待ちください。さあ、そちらのエルフの方も、お座りになってお待ちください。」


俺とイルザはジルさんに勧められるまま、いつの間にか俺が寝ていた部屋にテーブルと座布団が置かれていてそこに座らせられた。呆気にとられ何も言葉が出てこない。数分後、ジルさんがパンとスープと目玉焼きを持って戻ってくる。


 「すみませんマサト様、急な話でしたので米と味噌はまだ用意ができなくて・・・。朝食はこちらで我慢してくださいませ。」


「あ、いや・・・有難うございます・・・。」


 うう、俺のヘタレ・・・。だがせっかくだから甘えておこう。


 「ジルさん。買い物を頼みたいのですが?」


 俺が買い物に行ってもいいが、流石にイルザの下着などを買う勇気はない。この際だジルさんに任せよう。


 「はい!お任せください!」


 ジルさんの快諾を聞き俺は、買うものを制服の胸ポケットに入っていたメモ帳に、同じく制服のポケットに入っていたボールペンで書いて渡す。


 「ほう。便利なものがあるのですな?わかりました。ここに書いている物ですと・・・金貨1枚程で全て買えるでしょう。」


 俺はジルさんに金貨1枚を渡す。


「では行ってまいります。」


 ジルさんは言うが早いかあっという間にいなくなってしまった。・・・何者だあの人は?

 

お読みくださり有難うございます。

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