瘡蓋
古い僕が剥がれると、新しい僕が姿を表す。
古い僕が新しい僕に押し出されて、
ぺりぺりと剥がれる。
だから、どんなに傷ついても大丈夫。
時間が経てばその傷もまた剥がれ、
やがて新しい僕と入れ代わる。
今までだってそうだった。
傷ついて古くなると、
僕は新しい僕を待った。
そうして出てきた新しい僕を、
僕は外界へと送り出す。
新しい僕が傷ついて帰ってくると、
また僕は次の新しい僕を待つ。
その繰り返し。
そう、たとえどんなに痛くても、
ほんの少しの辛抱なのだ。
すぐに新しい僕と交換できる。
ああ、でもやっぱり、
かゆくてかゆくてたまらない。
気になって気になってしかたがない。
一刻もはやく剥がれてほしい。
こんな僕、僕は見ていたくはない。
我慢ができなくなって、
僕はとうとう、
僕を剥がしてしまった。
しかしそこには新しい僕はいなかった。
膿んでぐじゅぐじゅになった生々しい傷口。
ひりひりとして、
触れることすら躊躇われるような。
古くなることも、
新しくなることもできていない僕。
今まさに傷ついて血を流している僕。
未完成の僕がそこにはいた。
どんなに傷ついても大丈夫なんてことはない。
傷ついて古くなって、
ぼろぼろになった僕も、僕だった。
精一杯闘って帰ってきた僕を、
僕は丁寧に包帯で包んだ。