プロローグ
《・・・殺してはいけない・・・》
何処からか聞こえてくるその問いかけを無視し、剣を振り続ける。
「ギャアァァァ」
「やめてくれ」
「たすけてぇ」
周りは炎に包まれ火の海の中からそんな声が聞こえるが男は構わずに剣を振るい続ける。
その男の側に大きな狼が近づいていく。
「奴を見つけた。」
狼は男にそう言うと「こっちだ」と言い、男の前を歩いていく。
「・・・これでやっと終わるのか・・・」
男は誰に言うでも無く呟く。
狼は振り返り、「呼んだか?」と問いかけるが男は「何でもない」と短く答え歩いていく。
案内された先には狼に周りを囲まれた金髪の男が青い顔で立っていた。
金髪の男の手には誰が見ても明らかな鑑賞用の剣が握られているが、その切っ先は震えている。
「お前が最後の【勇者】か?」
男の問いかけに金髪の男は何ども頷く。
「こ、降伏するから命だけは助けてくれ、か、金ならあるんだ。もう二度とアンタの前には姿を見せないからた、頼む助けてくれ。」
【勇者】は剣を手放し男に願い出た。
男は一瞬だけ顔を歪め、顔を横に振り息をはいた。
「・・【勇者】を見逃す事は出来ない・・・望む望まない関わらず【勇者】は人を煽動するからな。そして・・お前で最後だ。」
その言葉を聞いた【勇者】は更に顔を青くし震えていた。
「せめてもの情けだ、痛みを感じず殺してやる。」
男は剣を振り上げた瞬間、【勇者】は足元の剣を拾い男に切り掛るが男はひらりとかわし剣を振り下ろした。
【勇者】の首がゴロリと地面に転がり、切り口の首から大量の血が辺りを染めていく。
男は剣を振り血を落とし鞘に収めつつ仲間たちの下に戻ろうと顔を上げた時、その瞳に見えた物は白い光に包まれていく世界であった。
男もその仲間達もその光に包まれ消えて行った・・・
そして【世界】は終わった。