自由落下
掲載日:2026/04/20
ハァ…ハァ…
恐怖からだろうか、それともこのうるさい心臓の鼓動が身体ごと震わせているのだろうか。
高い。目が眩む。
「俺ぁフリーフォール乗ったことねえんだよなあ。」
文字通りの自由落下。少し足がすくむ。
「事故物件…昔ゴーストライターなんて小説を書いたっけ。」
震える胸を抑え込もうにも柵から手を離せない。
瞳孔をかっぴらいて世界を見渡す。
風が吹き荒れる。
この荒い呼吸も心臓も普通の人間の域を超えていた。
まるで、この先の人生でする分を先取りしているような。
大きく動く心臓は俺を前に押し出そうとしてるようにも感じた。
もう限界だ。
口から漏れた息と建物の側面を這う風が耳を横切った。




