第一話 憧れ
「また魔族が村を襲ったらしいわよ。最近になって頻度が増えてきたわね。うちも襲われないか心配だわ。」
母は新聞を見ながら言った。
「大丈夫だよ、母さん!魔物なんて僕にかかればあっという間だよ!」
僕の名前はマロウェル・クリプトメリア、15歳。小さな頃に母さんに何回も読み聞かせしてもらった「勇者伝説」。魔王を追い詰め、世界に平和をもたらしたかっこいい勇者のお話だ。僕はそんな勇者に憧れ、今も剣術の練習を続けている。いつか勇者になれる日が来るとそう信じてーー。
そんなある日、王都からとある告知が町に来た。
「勇者一行募集!各地より勇者、戦士、僧侶、魔法使い志望者の者を募集した後に王城で選抜試験を行う!王都へ行くための費用はこちらが負担する!遠慮なく応募しろ!」
やっとだ。やっと、やっと憧れの勇者になれる時が来た!早く母さんと父さんに言わなければ。そう思った時には、既に走り出していた。
家の扉を走ってきた勢いでタックルして開ける。
「ちょっと!そんな勢いで扉を開けないで!壊れちゃうでしょ!」
「ごめん!母さん!そんなことより、父さん、母さん!王都で勇者の募集が始まったんだって!やっと勇者になれるチャンスが来たんだ!行ってもいいよね!ね!?」
父さんは顔をしかめ、母さんの顔は急に曇った。
「本当に、行きたいのか?」
「勇者なんて危ないわよ。それに行ったとしても勇者になれる保証なんてないし、あなたより大きな大人も参加するのよ。わかってるの?」
二人とも否定的みたいだ。でも僕は、僕はこの時のために剣術を頑張って、一人で磨き続けたんだ。
「分かってるよ、父さん、母さん。確かになれる確率は低いし、大きな大人も参加すると思う。みんな、勇者伝説を聞いて育ったから。それでも、なれる確率が少しでも、ほんの少しでもあるなら、僕は行きたい。お願い、父さん、母さん。」
マロウェルは真剣な眼差しで二人を見つめる。二人は顔を見合わせた。そして、父はため息をつき、言った。
「分かった。行ってこい。」
「ちょっと、あなた!」
「いいだろう、行かせてやろう。母さんも知ってるだろ?マロウェルが今までどれだけ頑張ったか。マロウェルなら普通の大人にも勝てるだろう。それに、別に不合格でも死にはしないんだから。」
「……そうね、分かったわ。行ってきなさい!でも!行くからには絶対に勇者になって帰ってきなさいよ!」
マロウェルの顔が明るくなる。
「父さん、母さん!ありがとう!絶対勇者になって帰ってくるから!」
そう言ってマロウェルは家を飛び出した。
マロウェル達の物語が今、始まろうとしている。
次回、勇者選抜試験、開始!




